「マルコォ〜お前程の男が…若造共に手を貸すとは白ひげの残党も迷走してるようだね‼︎」
ビッグマムの嘲るような挑発に白ひげ海賊団一番隊隊長不死鳥のマルコは余裕の笑みを浮かべた。
「残党の意味をはき違えちゃいねェか?ビッグマム‼︎」
四皇ビッグマムを前にしてこの毅然とした態度に側で控えるペロスペローも息を飲む。
「残されたおれ達は自由なんだよい‼︎」
「ああ…死人に口なし。好きにしなよ」
ビッグマムはマルコが敵側に回ろうがカイドウと組んだ同盟が敗北するわけがないという自信の表れがあった。さらにもう一つ、マルコを挑発する材料を持ち合わせていた。
「それとお前ェ知ってか知らずか、ここに妖狐がいるんだァ」
一瞬、マルコの眉が持ち上がる。これ見よがしにビッグマムは、ママママ、と笑い声を上げた。
「白ひげが残した唯一の宝なんだろォ」
ビックマムの煽りにマルコは笑った。
「"白ひげ"がじゃねェよい。"おれ達"の宝だよい‼︎」
そう口にしてマルコは不死鳥へと化した。
「カイドウに囚われた姫を救いにいく物語かい‼︎ママママ‼︎見ものだねェ‼︎」
ビッグマムの高らかな笑いがドクロドーム城外に響いた。
ライブフロア、ステージにてなまえはクイーンの首を囮にキングと対峙していた。
「おい‼︎キング‼︎こいつをどうにかしろ‼︎」
声を荒げるクイーンの首元で風渦がビュービュー、と激しい音を立てている。一瞬でも触れてしまえば、皮膚をえぐる威力を持つそれをなまえはクイーンに打ち込もうとしているのだ。
「クイーンを助けたいなら彼らの邪魔をしないで…‼︎」
「…出来ない相談だ」
「これは相談じゃない‼︎命令よ‼︎」
なまえは奥歯を噛み締めた。まともに相手して勝てるような二人ではないと分かっている。せめて時間を稼げればと攻防が続いていた。ふとキングが吐息を溢した。攻撃を仕掛けるかと緊張が走る。
しかし、キングが口にした言葉は一瞬、場を静寂にした——
「俺はお前のその姿が嫌いだ‼︎」
「…!何を今更‼︎」
キングはなまえの顔から少し視線を下にずらした。着物の合わせ部分がはだけ、肩から胸まで露わになったそれは飛び六胞ブラックマリアを彷彿とさせる。ブラックマリアならまだしも、普段正装しているなまえがその様な着崩しをするとキングは少しばかり気を逸らす努力が必要だった。
「ちゃんと服を着ろ‼︎」
とキングは背中の炎を一層燃え上がらせた。
「んなこと今言ってる場合じゃねェだろーが‼︎キング‼︎」
今まさに命の危機に晒されているクイーンは怒号をもらす。
なまえは一層と奥歯を噛み締めた。風渦の玉を浮かせる手も震えていた。それに気づいているキングは、これ以上の攻防が無駄である、と悟った。なぜなら、なまえが自分たちを本気で打つことなど出来ないと察していたからだ。無論、その力はある。しかし、覚悟がない。
なまえ自身もキングにそれを悟られていることを理解している。
「いつしか、俺はお前に言ったな」
——いずれお前と俺は対峙することになる。その時、お前は自分の弱点を理解してるな?
なまえの両目から大粒の涙が溢れる。鬼ヶ島で過ごして二十年——血反吐を吐くような苦しい記憶もある。しかし、彼らは強さを求めるなまえに時に厳しく時に優しく、着実に才を引き出す助となっていた。
対峙するキングもまた、胸底で湧き上がる感情に笑った。握れば簡単に殺せる小童がこうして戦いを挑む姿に成長を遂げたことを。
「全力で来い」
キングの挑発に妖狐の咆哮が轟いた。
ドーム外港方面。
ヤマトはモモの助としのぶ、二人を担いで走っていた。
ササキとの遭遇からモモの助達を庇い、光月おでんの意志を宿したその誠意を見せたことにより、行動を共にすることになった経緯である。ただ、それだけではなく、二十年間、鬼ヶ島で共に育ったというヤマトとなまえの仲が最もモモの助を納得させた。
「モモの助君‼︎なまえが心配なんだろう…‼︎」
「え⁉︎」
唐突なヤマトの呟きにモモの助は心の内側を読まれた、と少しばかり焦った。
なまえが強いことは知っている。しかし、あれほどの荒れた戦さを目にした事がないモモの助はなまえが傷を負い、敵に屈する姿を想像すると彼女の命を第一に憂いた。
「そうでござる…」
自信のない声にヤマトは声を張り上げた。
「大丈夫…‼︎君が想像するより彼女は強い‼︎」
ゴゴゴゴゴッ———
突如、地鳴りが足元をおぼつかせた。ヤマトはこの揺れが何を意味するのか確かめる為に島の先端部へ駆けた。
目下に立ち込める煙、浮遊感、そして目を凝らしても捉えることのできない海。
「手遅れだった…‼︎もう海へは逃げられない‼︎この揺れはそういう事か‼︎」
「何が起きておるのだ‼︎?ヤマト‼︎」
来た道を戻るヤマトにモモの助は事態の詳細を求めた。
「龍は焔雲を発生させ空を飛ぶ‼︎つまり今カイドウが鬼ヶ島を飛ばしてるんだ‼︎」
「えぇ〜〜〜‼︎?」
モモの助の絶叫が曇天に響き渡った。