蝶と蛾

 

Verbenaにおける主人公のデフォルトネームに関する小話
内容の都合で名前変換は無しになっています
デフォルトネームの登場が苦手な方は閲覧注意!

名前変換の意味が全く無いネタですが、太宰さんとの関係が最も分かりやすい話なので載せる事にしました


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「…相変わらず釣れないねぇ、お蝶は」

一夜を共にした女性が手早く身支度を済ませる姿を見て、太宰はベッドに寝そべったまま呟いた。

「もうちょっとムードを大切にしてくれてもいいんじゃないかな!」
「はぁ…貴方がそんなモノを期待している様には見えないのだけれど?」

女は冷ややかな目で返し、櫛で軽く髪を梳く。

「……?」

しかし、櫛をポーチに片付けた所である異変に気付く。
ほんの一瞬前まで手元にあったはずの愛用のリボンが無いのだ。

「………」

手癖の悪い男は枕の上に肘をついてニヤニヤと意地悪く笑っている。


「太宰くん。貴方、年々あの人の嫌な所に似てくるわね…」
「えー、心外だよぉ」

狡猾に冷酷な本心を隠し、朗らかに笑う、女が最も嫌う男。
そして──…

「……君の本当の名前を知るあの人にかい?」

女の全てを知る、森鴎外という男に。


「本当も何も、偽名なんて使ってないわ。貴方が勝手に呼んでるだけじゃないの」

女と太宰との付き合いは長い。
出会った頃から名を捨てて生きていた女を、いつしか太宰は「お蝶」と呼ぶ様になった。
やがて、太宰と関わりのある人間の間にその呼び名は広まり、今では鴎外以外が皆、女を「お蝶」と呼ぶ。

「そういえば…何故、"お蝶"なの?」

ふと、今まで忘れていた疑問が蘇る。

「ん?嗚呼、それはね」


男が包帯で巻かれた自身の掌を握り、パッと開くと魔法の様に現れたピンク色の布がベッドの上に舞い降りた。


「君の頭のコレが、後ろから見てたら蝶に見えたからだよ」


「…蛾では無くて?」

探していた物をようやく取り返し、女は再び疑問を投げかける。

意外だったからだ。
とことん捻くれているこの男が、そんな綺麗な表現をするとは思えない。
蝶ではなく蛾だと言いそうなものを…

すると、男は女の問いを笑い飛ばした。

「アハハ、馬鹿言っちゃいけない。君が"蛾"だって?」
「…!」

腕を引かれ、ベッドに引きずりこまれる。


「蛾は、光を求めて飛ぶ生き物だろう?」


真逆の君には勿体無いよ、と男は耳元で囁くのだった。

 
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