体の内に、怪物を飼っている。
それは断じて________、個性などではない。
〆
画面の人工的な蛍光とリズミカルにキーを打つ音が響く薄暗い室内に、カーテンの隙間から光が漏れた。それは徐々に広がり柔らかく室内を染めはじめる。
足元で猫が鳴いた。
かりかりとやわく立てた爪で足を引っ掻いてくる。
どうやら主人である俺に餌をねだっているらしい。数時間縛り付けられていた椅子から立ち上がって軽く首を回す。バキバキと音が鳴った。 伸びをすると、また鳴った。
カーテンの隙間から零れる薄明るい光に目を細めて思う。
またどうやら意図せず徹夜したらしい。
これだから万年寝不足なんだ。
猫にキャットフードをやってシャワーを浴びる。それでもまだ十分朝方と言ってもいいほど早い時間だった。ランニングウエアを来て、外へ出た。
にくいほどの快晴だった。
高層階のマンションを降りて、宛もなく走る。徐々にスピードを上げ少しの疲労感を感じながら、無心で走った。
途中で走る俺の横をパトカーが追い越していった。
なんとなしに見つめていると、パトカーが向かうであろう先が黒煙をあげて爆破を起こした。響く爆音に顔を顰めつつ、またかと呟く。
_____どうせ、
暫くしたらあれを目印にヒーローが集まってくる。それは厄介だ。大いに困る。
仕方がない。走るルートを変更しよう。この街に引っ越してきて日も浅く道もろくに覚えていないが、今は文明の力スマートフォンがあるんだ。イザとなればGPSでも使えばいい。
……そうだ。どうせなら海でも見よう。
そうすればこの陰鬱な気分も晴れる気がした。
いや、晴れるわけがない。
海浜公園まで走ってきたが、そこに居たのはゴミの山の山頂で奇声をあげる変人。あれだ、コイツは絶対やばいやつだ。そして、それを見て感動する見覚えがあるような気がする金髪のガリガリのやつもグルでやばいやつだ。
いくら顔が冴えないからって、ソレはない。目立ちたいからって、コレはない。そしてそれを褒めるな骸骨。
「Shit!」
盛大に舌打ちをしてやった。糞野郎。最悪な一日の始まりだ。いや、元からこの日は災厄であると決まっていたのだから、これは全て
踵を返す。走り込みは諦めて今日はもう帰ろう。帰ってもう一度シャワーを浴びなければ。
今日はあの雄英高校の入学試験日だ。
いくらヒーロなんかに興味がないといえども受けて落ちたのならまだしも、遅刻でもして受験を受けられず落ちたのなら流石に
俺の過去の失態や、パソコンの奥深くに保存されている秘蔵の画像が、世界中にアップロードされるなど……。
考えるだけで震えてくる。
それは避けねばならない。
帰り道。迷子になったことは言うまでもあるまい。
〆
クッソ。
無駄に広い割にそれ以上に人が多い。そんなにみんな大好きなのか雄英。
結局迷子になった俺は、不本意ながら路地裏にいるヴィランのなり損ないの不良共に道を聞くことになった。脳みそ空っぽのヤツらが素直に教えてくれるはずもないがそこは想定内だ。
いつも通り拳にものを言わせ、俺が知っている道までの最短ルートを聞き出し、ついでに財布の中の紙も頂いた。
道も聞けて小遣い稼ぎにもできるなんて一石二鳥じゃないか。
オマケにあいつらは路地裏を漁ればいくらでもいる。ヴィランにもなりきれなく、社会に適応することもできない、哀れな生き物たちだ。
少し膨らんだ財布に満足しつつ、改めてあたりを見渡す。
此処は某高校の入試の実技会場。
筆記試験はとくに何事もなく終わった。
いや、当たり前だ。何かあってたまるか。
そもそもの所、俺にとってペーパーテストなんかは個性でカンニングしほうだいなのでテストでありながらテストの役目を果たさない。いや、そこら辺のクズどもの回答を真似たところで俺の成績が下がるだけだが……。
どうやら実技は1度ドームに人を集め、これけら組み分けを発表するらしい。まぁ、当然といえば当然だ。これだけの人数を公平に審査できるはずもない。
プラス同中学どうしをバラケさせるためだろう。
1人だけハイなテンションで意気揚々とルールを語るプレゼントマイクの声を右から左へと流しながら、欠伸をした。
________あぁ、ねみぃ。