やがていつかの未来まで

コツコツと暗い廊下に足音がする。焦る気持ちを抑え落ち着こうとするがなんとか目的の場所に着く。部屋の前で呼吸を整え、入室した。
部屋には、見知った顔があった。その顔を一回り見て真ん中に眠る顔を覗く。
息が止まった。

目の前には、身体中に痣を作りそっと目を閉じて眠る彼女がいた。
彼女とは、警察学校が同じで誰よりも優秀で公安に勤めることになった、仲間だった。

頬に触れると、冷たくもう、目を覚ますことはないということを分からせるかのようだった。
「なんで、」
小さく声が漏れた。その声に反応するかのように萩原が降谷を見つめた。
「ある組織に潜入し、仲間に裏切られ殺された。俺らが何とか聞き出せたのはそれまでだ。」
「ある組織、、、」
そんな時乱暴に扉が開かれ大きな音を立てて伊達が入ってきた。その顔は、とても怖い顔をしていた。
「#名前#は、家に帰してもらえないそうだ。このまま火葬し、遺骨のみが遺族の元に行くそうだ。」
「そんなのってありなのかよっ!」
松田は、壁を蹴り、自身の前髪を掴む。
「#名前#は、この国のために働いたのに、それなのにこいつは、自分の家族の元にも帰してもらえないのかよ。」

皆松田の言葉に頷き黙ってしまった。

俺は、随分と前のことだったが#名前#と会った時のことを思い出した。

「なあ、何で#名前#は、警察官になろうと思ったんだ?」
俺がふと聞くと、#名前#は、苦笑いして言った。
「絶対に笑わないって、約束してくれる?」
もちろん、と俺がうなづくと、とても照れ臭そうに笑って、
「ヒーローになりたかったの。」
そうまっすぐ俺を見て言った。
その時の顔に驚いて誤魔化すように笑うと、あいつは、怒った。そんなこともあったが、最近あった時のあいつは、あの時の輝きなんてなくて、いつも恐れているようだった。

「大丈夫か?」
その言葉に当たり前のように頷くあいつは見ていられなかったし、そんな言葉しかかけられなかった自分を心の底から恨んだ。
「降谷君。もしね、この捜査が終わったらね、私保育園の先生になろうと思ってるの。毎日未来ある子どもたちのきらきらした笑顔を見ることができるそんな素敵な仕事してみたいの。」
そう言ったあいつの顔は、警察学校の時と同じ笑顔だった。
今思えばあれが#名前#と会った最後の時だった。

瞼に焼きついた笑顔に俺は泣いてすがりそうになる。

「よく、頑張ったな。」

男なのにかっこ悪いが涙が出た。

そんな俺の肩に萩原や伊達が手をポンとのせ、

「おかえり。」
「お疲れさん。」

優しく声をかけてやっていた。松田は、#名前#の体に抱きついて、

「よくやったな。」

そう優しく声をかけてやっていた。
ひとしきり大の大人の男たちが涙を流し、落ち着いた頃に俺は言葉を吐く。

「#名前#が言ってたんだ。この捜査が終わったら保育園の先生になりたいって。未来ある子どもたちの笑顔をそばで見ていたいって。そう言ってた。」

「あいつなら会ってるだろうな。」
伊達が優しく笑って言うと、
「警察官にならなきゃこんなことにならなかったのにな。」
萩原の言葉に松田は、
「そしたら俺らは#名前#と会えなかったじゃねーか。それじゃだめじゃねえかよ。」
顔を伏せて言った。

「だから、俺らは、#名前#の分まで生きるんだよ。あいつが繋げてくれた未来を俺たちが繋げるんだ。」

降谷の言葉に他の三人は頷いた。
たとえ、これからこの仲間たちがいなくなってしまっても、俺は、その意思を繋ぐと#名前#に誓う。


だって、今だって俺は、あの日のお前の笑顔が瞼から離れないんだ。