ごろごろ。ごろごろ。冬ちゃんのふわふわした柔らかなふとももで膝枕をしてもらいながら、慈しむように頭を撫でられてしまうと、胸の奥深くに閉じ込めていたはずの幼いおれが出てきてしまう。
おれを大切にしてくれる人にひたすら甘えたい。頭を何度も撫でて欲しい。ぎゅう、って優しく抱きしめて欲しい。いつまでも手を繋いでいて欲しい。どんなわがままも聞いて、何を言っても許して欲しい。
「えへへ……」
「……よしよし、いい子、善」
こう言う時の冬ちゃんはさ、まるで母親みたいだなって思うんだよ。目元をほんのり緩めて、泣きたくなるような優しい音をおれに向けてくれる愛しい人。まあおれには母親なんていなかったから、想像でしかないんだけどね。
「……もっと、頭撫でて?」
「……うん」
そう言うと、幾度も金糸を梳くように撫ぜてくれるんだよ。そうするとさおれの満たされることがなかった虚ろな心が、少しずつだけど埋まっていく感覚がするんだ。
ああ、ずっと、この子のそばにいたいなあ。誰もみだりに踏み入ることはできない、それこそ夢のような世界でさ、永遠に目蓋を閉じて微睡んでいたい。
「……冬ちゃん」
「……なに、善?」
きみの名前を呼ぶと、きみが応えてくれる。こんなに幸せなことってこの世にある?少なくともおれは知らなかった。きみに出逢うまではこんな世界があることすら、想像もしたことなかったよ。
ここには誰にも入って来て欲しくない。赤の他人はもちろん。たとえ心を許した仲間であったとしても、おれがこんな姿を晒していることを少しでも知られたくないし、まじまじと見られたくもなかった。……いつも公衆の面前で恥を晒してるだろうって?それはそれ、これはこれってやつだよねえ、それはさ。
「……んふふ、冬ちゃんのお腹ふにゃふにゃしてる……」
「……鍛錬が足りてないのかな」
「ううん。みっちり鍛えてあるのはわかるよ。でもさ、なだらかっていうか、しっとりしてるっていうか。……顔を埋めると落ち着くんだよねえ」
膝枕をしてもらいながらふかふかするお腹に顔を埋めると、胃がきゅるきゅるって鳴いてる音がする。あ、冬ちゃん今日はあんまりご飯食べられなかったんだな。あとでおれと一緒にうどんでも食べに行かないか、それとなく誘ってみよう。
それにさ、こんなに甘やかしてくれる冬ちゃんの姿も見せたくないんだ。きっと、母親みたいにとろとろ甘やかしてくれる冬ちゃんを知ったら、誰もがこぞって寄って来たくなるような引力みたいなものがある気がするしさ。
「ん〜、……起きたいけど、起きられないなあ」
「……いいよ。今日は何も無いし、好きなだけここにいたらいい」
「……そういうこと言っちゃう?そんなこと言うとさ、おれ一日中こうやってる自信あるよ?」
「……お休みの日くらい、一日中のんびりしてたっていいんじゃないかな」
ほら、またそうやっておれをどろどろに猫可愛がりしちゃうんだから。まあそのお言葉に甘えちゃおうかなと思う、甘ったれたおれもいるわけでして。次こそは冬ちゃんをこれでもかってくらい甘やかして、きみの傷付いた心がふやけるくらいに愛を伝えてやりたくもなるんだよ。
大きな心でおれの何もかもを受け入れてくれる冬ちゃんといる世界が、ずうっと、ずうっと、続けばいいな。
昼下がり、愛おしいきみと縁側で日向ぼっこをしながら、刻一刻と時間は流れていった。
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フォスチア