医療班というていでいる私だが、その実誰にでも異能を使ったりはしない。
基本は森様から叩き込まれた医療技術で治療したりするのが主である。

ちなみに一番得意なのは縫合でも銃弾摘出でもなく漢方配合だ。
地味に効果が善いと中々に組織内でもご好評いただいている。

私みたいに戦闘能力が低くて、且つ補助サポート向きの異能保有者は、なんだかんだこの組織内では"保護"対象となって、守ってもらえるのだ。
其の分自由は少ないけれど、悪戯に命を狙われることもない。
出世は見込めないけど、かといって処分される恐れもない。
或る意味、あんぱいなポジションなのである。

却説、そんな私の仕事部屋オフィスだが、場所は尾崎幹部の直ぐ隣の部屋を戴いている。
最初は同じ部屋を、とごり押されたのだが、仕事内容があまりにも違う上に私が異能を使うとなったら五月蝿く、、、、してしまうので、結局隣の部屋というので落ち着いた背景があったりもする。

そこで私は尾崎部隊の皆さん──割りと結構いる──の治療をしたり健康面に対する相談&助言をしたり、漢方を含むお薬を処方したりするのだが。
其れが"幹部候補"以上になると、もう少し上の対応をすることになるのである。

つまりは、まぁ判るだろうけどマッサージ。
時間を指定して、其の時間内に全力で懲りに懲りまくった役職者様方の躯を揉み解すと云うお役目を、私は得ているのである。

そして今も、そんな真っ最中で。

「……ン、っぁ、ッ、ふぁ、っぅ、うぁっ、」

──真っ最中で。

「ひっ、ぅんっ、ァ! あっ、ア゛、〜〜ッ、ンう゛っ」

───ま、真っ最中で。

「あ、あ〜〜ッ…! んっ、んぁっア」
「………………」

現在私は、と或る幹部候補様──つーか同じ尾崎部隊の中原中也様のお背中に跨がらせて頂き、体重を掛けながら其のゴリッゴリに固くこびりついている筋肉をべりべり剥がしてる真っ最中である。

人によってはどっちかって云うと痛かったりもするはずなんだけど。
だけど、此の人は此れがそりゃもう大好きらしく、躯が凝ってきたと思ったら速攻で「剥がしてくれ」とお願いしてくる分には、マッサージがお好きなのである。

そう、年の割に躯が善く凝る、マッサージがお好きな方なのだ。
ただ一寸、マッサージ中のお口がゆるゆるになってしまうだけで。

「ぁ、あ、あっ、はぁっ、んっ、んんっ」

──否、佳い。別にいい。
変に我慢して力入れられるよりは、こうやって全身を投げ出して全部をさらけ出して呉れる方が私も遣りやすい──んだけど。

「あっ、あひっ、ひっ、ぃいっ、あ゛〜〜ッ、そこっイいっ……!」

──私も、思春期に突入しているわけで。
其れなりに異性に一寸興味を抱いたりそわついたりする年頃な訳で。
否別に男の子みたいにAVみたりとかはしないけど、でも、こういうアングラな組織ってそういう話題尽きないし、なんなら私も基礎知識や一寸したものなら仕込まれたんで知ってるし。
し、知ってるんだけど。

「あ゛っ、やばっ、ん゛ぅ、ッぁあっ! あっ、あぅっ、ア! 〜〜ッ!」

──最近、私に対すると或る噂が、広まっているのてある。
"尾崎部隊の医療班、班長が、と或る幹部候補生とデキているらしい"。
"更に云うと年下の女の方が"上"らしい"。
"日中から部屋に連れ込んでおっぱじめてる"──とかなんとか。

────絶対これやん。

否もう、似非関西弁が出てしまうレベルで、此れじゃん。此れしかないじゃん。

中原様は、なんというかこう──善く喘ぐ。
否喘ぐって失礼に当たるかもしれないんだけど、ほんとマジでAVか?ってくらい善く喘ぐ。
めちゃくちゃえっちに色っぽく、"もうたまんないっ!"みたいな声を、AV並みにそりゃもう善く出すのだ。
ええそりゃもう、一度紅葉様と森様が誤解して別々に覗きにくるくらいには、中原様はいつも元気いっぱいにお喘ぎになられるのである。

マジでただの嬌声。
真実ほんとうに、こっちが居たたまれなくなるレベルで、中原様はいつも悶えて喘いでいらっしゃる。

「……えーっと、一寸下の方失礼しますね」
「ん、ッ、んんっ」
「はい、押しま〜す」
「ぁあンっ!」

──あんって云った……。
すげぇ此の人、あんって云った……。

因みに今は、地味に凝るお尻回りの筋肉を解させていただいている。
喘ぎ声もそうだけど、中原様のすげぇなと思うところは、其の躯の許しっぷりである。

他の人だったら一寸警戒されるようなとこまで、中原様は触らせてくれるのである。
例えば足の際どい付け根とか──と云うか、大体股間付近。
あそこら辺ってめちゃくちゃ懲りポイントだけど、場所が場所だけに"女の子に触られるのは……"と中々手出しさせて貰えない場所なのだ。

だけど中原様は其処も違った。
むしろ自分から、其所凝ってるから其所も解してと云ってくるタイプの御仁だった。

其れでこんなに喘ぐから、最初の頃は──否今もだけどなんか私がいかがわしい事を中原様にしてるような錯覚を覚えて。
なんか、なんかマジで居たたまれないのである。

因みに今、中原様はパンツ一丁である。
いやねほら、服着てると揉みにくいから……。
一寸お高い使用感がさらさら系のボディーオイルでお肌が艶々してる中原様は、割りとこう、其の手のものがお好みの方からすれば生唾ものだと思う。
詰まりとてもエロい。

「あ、ぁ、あ゛〜〜っあぁっ……!」

お尻の直ぐ下の、ぱんぱんになった太ももの筋肉を解しながら、降り注がんばかりの嬌声を聞く。
これがもう一寸野太い声だったらわんちゃんおっさんのお風呂中の声みたいになったんだけど、悲しいことに中原様ってハイトーンめの素敵なお声なもんだから、なんかもう"事案"っぽくなってしまうのである。

指定された時間はあと43分。
其までの辛抱だ私、とこれ以上噂が広まらないことを願いながらも、私は此の悩ましい懲りまくった躯を解しに掛かるのである。