※特殊設定(Dom/Subユニバース)です。
本番はありませんが、それに近いR15程の未成年の姦淫行為があります。


前振りを飛ばしたいという方は こちら からどうぞ。





私には、所謂"前世の記憶"というものがある。

其れは私が物心つく頃からなんとなく思考の片隅にあり、ゆるゆると流れる時間の経過と共に徐々に此の躯と精神に染み着いていったのだった。

私は私で、そして生まれる前の"彼女"もまた私。
時折今の私には共感出来ない行動と動機などに心が解離することもあったけれど、それでも私は生まれる前の私の記憶と経験にかなり扶けられて今を生きているのである。

私が生まれ直した世界は、前世の世界と似て非なるものだった。

先ずは"異能"という超能力の存在だ。
極めて稀に発症、もしくは発現するとされる此の普通ではない能力は、都市伝説のように囁かれつつも此の世界に本当に存在している。

巷では通常──否、"正当方法"では成し得ないであろう現象による強盗やら殺人やらの解明不能の犯罪が跋扈しており、噂によると其れ、、専門の政府対策組織なんてものまであるらしい。
まあ、でないと異能力者による証明不能の完全犯罪は更に横行してしまうに決まっているので、ないと困るのだけれど。

そして此の異能力とやら。
其の能力は漫画のように水や風を操るものから自身の肉体の変質や他者への精神介入など多岐に渡り、ぶっちゃけ少年少女が好きそうなRPGみたいだなぁとしか思えなかったりする。
私には其の異能力とやらは発現しなかったから、更に他人事のような、どこかお伽噺のように思えてしまうのかもしれない。

そうして──もう一つの、"此の世界の常識"。
其れこそが、所謂前世と呼ばれる全く別の記憶を所持している私の脳味噌を此れでもかと苦しめたのである。

それが、"Dom"と"Sub"。
男女という肉体の括りとはまた違う、ダイナミクスとか呼ばれる力量関係からなる人間の第二性の別称だ。

簡潔に説明すれば、DomはSMの"S"でSubはSMの"M"。
"誰かを支配したい、守ってあげたい"欲求を持つDomと"誰かに支配されたい、守って欲しい"欲求を持つSubという、本能的なSM思考が此の世界の人間には生まれながらに備わっていたのである。
マジでえっちなギャルゲーみたいな世界観である。

この設定もとい、この性別に、前世の私の記憶はそりゃもう拒否反応を起こした。
なんたって、このDomSub本能はあまりにぶっ飛び過ぎていたからだ。

SM的な関係であるDomとSubは、基本的に番とも呼ばれる"パートナー"を見つけ、契約を結んでいる。
其の証拠がSubの首に付けられている"首輪"であり、Domから送られた首輪を手ずからSubの首に嵌める事により、契約という精神的な絆を結び"行為"に及ぶのだ。

そう、其の行為。
S属性であるDomはSubを支配したり命令したりしないと精神的に鬱になったり体調面を崩し、同じく対となるM属性のSubもDomに支配されて命令して貰えないとDomと同じように鬱になったり体調を崩してしまうのである。
其れ故に、パートナー関係にあるDomとSubは言葉と身体を使ってSM行為を働くのだ。
そうしないと精神的に病むから。
嘘みたいな本当の話である。

マジで最初からラリってんじゃないのかと思ってしまうワードの数々。
SMしないと病むってなんだよわけわかんないよ。
それもう屹度最初から病んでたんだよ。
どういう過程で進化していたらそんな意味わからない進化してったんだ人類。
神様もビックリな精神構築である。
マジで勘弁してくれ。

そうしてこのDomSub性。
発症と云うか性別の確定は基本思春期頃が多いのだが、時折幼い頃から性別が確定してる、所謂"本能が強い"個体が現れるのである。

──勘のいい人なら察したかもしれないが、私が其の"本能の強い"タイプの人間だ。
5歳の頃の健康診断でDomだと診断された私は、そりゃもう周囲の"期待"を集める祝福されし"S"だったのである。
なんたって生理も来ていない、肉体が完成していない年齢なのに検査で解ってしまう程の強いDomの素養を持っていたらしく。
お医者さんも吃驚な、結構強い個体らしかったのである。

5歳にして"此の子は将来有望なスーパードS様です"って祝福される人間の気持ちが判るだろうか。
普通に大変ショックでショッキングな心境である。
未だに鮮明に覚えてるよ、あの瞬間。

──まあでもそれも仕方がなく。
この世界に置いて、男尊女卑以上に横行しているのが、Sub差別だ。
Subというだけで"従う者"のレッテルを貼られ、基本的にDomの所有物としてしか扱われない人権無視な事案が此の世界では多く発生しているのである。

権力もなにもかも、掴むのに相応しいのはDomだけだと誰もが思い、Subの社会進出をSub自身も妨害する。
特に私の性別が発覚した頃なんかは其の"差別"が最も過激化していた時だったらしく、父Subである母は私が"支配する側"の人間である事にそれはもう咽び泣いては歓んでいた。
それだけ、SubはSubというだけで差別されてしまうのだ。

前世の私は、普通の世界に生まれた普通の女だった。
世界各国の中でも未だ男尊女卑は強かったものの、今のこの世界よりかは幾分かマシな世界で私は生まれ、成長し、結婚をし──死んだのだ。

多分、年齢は30代半ば位だったはずだ。
8年付き合った彼氏と漸く結婚できた矢先に、銀行強盗に巻き込まれて呆気なく死んでしまったのである。

死に間際の事は精神が拒否しているのか、あんまり覚えていない。
覚えてないから、其の辺りの事はあふんまり考えないようにしていた。

取り敢えず、前世の私は自分でいうのもなんだけど温厚な女だった。
誰かに引っ張ってもらいたいタイプの、誰かを支配するとか命令するとか考えたこともないタイプの、普通の女だったのだ。

そんな私が生まれ変わってみれば、与えられた第二性はSのDomで。
本能的に兼ね備えているらしい"ドSの本能"と生来的に持っていた"前世の記憶"は、そりゃもう激しく齟齬を起こした。
詰まりは、互いが互いに拒絶したのだ。

誰かを支配したい、虐めたい、泣かせたい、誉めてあげたい、満たしてあげたい、屈服させたい──そんな暴力的な迄の"本能"に、私の理性を乗っ取った"記憶"はいつだって否定的だった。

記憶の中の彼女もは私が欲求に苛まれる度に、其れは、、、人間的ではないと怒り、人は物ではないと嘆き、誰かを支配するだなんて傲慢だと悲しんだ。
前世の私は、少々潔癖のきらいがあったから、取り分けこのDom性が耐えがたかったのだろう。
もしくは、Subだったら此処までの拒否反応は出ずに受け入れたのかもしれない。
それ程に迄に、彼女は誰かを支配する事に対して否定的だった。

然し、そんな前世の記憶を黙らせる転機が訪れた。
──父が、死んだのだ。

異能という摩訶不思議でかつ危険な力を所有する人間が、私が住んでいるヨコハマには取り分け多く生息していたらしく。
というかなんなら、異能力者が多く在籍している非合法組織──詰まる処マフィアを筆頭とする犯罪集団がまるで闇鍋のように此の街には密集していて、ある時それらが戦争とも呼べる大規模な抗争を引き起こしたのである。

そしてそれに巻き込まれて父は死に、母は負傷し重体の末に植物状態となってしまった。
当日未だ9歳であった私は突然の天涯孤独に、それはそれは途方に呉れたのである。

父も母も互いに一人っ子で、更にどちらも親戚や両親と仲が悪く疎遠というよりは絶縁状態で。
一応遺産はあったものの、そんなものは植物状態の母の延命措置によって三年も持たずに底をついてしまうのは目に見えていた。

私は途方に呉れた。
其の頃にはヨコハマ全土を揺るがし恐怖に陥れた抗争は終結を迎えていたけれど、否だからこそ、親をなくした子供なんてものはゴロゴロ転がっていて、例え私が貴重なDomであろうと確実に暮らしていける手立てなんてものも扶けもなかったのだ。

私は、死にたくなかった。
なんとしてでも生き残り、母を生かしたかった。
そして"記憶"は、ぬるま湯の平穏に浸かっていた女は、そんな私の事を憐れんだ。
だからその日から、"記憶"は此の"性別"を受け入れるしかなかったのである。

記憶の中の女は、途方に呉れる9歳の少女にこう言ったのだ。
"母を生かしたくば、大人しく、身を売りなさい"──と。

この世に当然のように存在する第二性。
然し其れで本当に人を区分け、、、するのは不可能であり、絶対にSub性を隠しながら生活しているSubが居る筈だと。
其れならば、其の"Sub専用の娼館"が、絶対に此の街の何処かにあるはずだと。

そうして、其の思考は正しいものであった。

ヨコハマの中央街の更に奥──所謂、高級住宅街との境の場所に、其の娼館は存在していた。
Sub専用であり、"疑似パートナー"を組み"行為"を行う高級娼館。
其の門を、9歳の少女であった私は自ら叩き、私は其の世界に歓迎されたのだ。

オーナーであり私の"教育者"である彼はこう云っていた。
"此の世界には、SubでありながらDomであると性を偽り生活している人間が一定数存在している"と。
そうして、"それらの人間は日々正体を知られる恐怖とDomに支配して貰えないストレスに身を苛まれており、殊更立場があればあるほど金を惜しまずDomを買いたがる"のだと。

Subよりも優れているとされるDomに対して世間は優しく、雇用も優先して安定しているのは矢張り等しくDomだ。
政府官僚もDomしかおらず、医者、パイロットや社長職と呼ばれるエリート職についている人間も全てDom。
然しオーナー曰は、其の中の数%は"マニフェスト"を装ったSubであり、彼らは渇望し乍らも自分を騙し生き抜いているのだという。
そうしてDomからの支配を欲する彼らが得られる唯一の安息地帯が、此の娼館なのだ。

そうしてオーナーから直々に"教育"を施された私は、今では15歳にして此の娼館筆頭の稼ぎ頭になる程すくすくと成長したのである。

もうこの頃には"記憶"はすっかりと成りを潜めていて、今では朧気に映像なんかを思い出す程度。
此の一見只の高級ホテルを装う構造建築物の最上階で、私は今日も今日とて仕事の為に甘いレースの白いベビードールにガーターベルト、そしてTバックと役満過ぎる格好の儘、仕事に励むのである。

私の年齢は15歳。
前世の世界ならば、確実にしょっ引かれるお年頃である。




──中原中也には、秘密がある。

其れは此の世界に生まれた人間ならば誰もが持っている属性で。
いくら普通、、ではない生まれである中也だとて、其の法則には逆らえず。
他と等しく同じように、二分化された其の"属性"を有して中也は此の世に生まれ目覚めたのだ。

詰まる処──中原中也は、Subなのである。

"Sub"。
従う者にして、支配されるべき存在。
本能的に誰かに従事する事を求め、渇望し、命令を受けて初めて魂が満たされる性。

当初こそ其の本質を理解していなかったものの、其れ、、が余りに──否寧ろ自身には不都合なもの、、であると認識していた中也は、其れこそ"羊"にいた頃から其の性を、自身の属性をひた隠しにしてきた。

Subという本質を知らなくても、本能が解っていたのだ。
"此れは、己にとんでもない負荷を掛けるものである"と。

事実、徐々に理解していった"世界"の中で、中也は己の直感が間違っていなかった事を悟ったのだ。
己は、Subは、此の世界に置いて間違いなく"弱者"であるのだと。

Subというだけで虐げられ、正当な評価を受けられない。
Domでなければ一人のヒトとして認められない、一人で生きることすら赦されない、此処はそんな世界なのであると。
そう理解した中也は、故に自身の性別の事を隠し通してきた。

好都合なことに、此の世界にはDomでありながら"Subにも正当な人権を"と訴える、フェミニストと呼ばれるSubに対する人権拡張論者が存在していて。
彼らは其の訴えの為に自らの首にSubと同じように"首輪color"を着けていた。

Subにとって、首輪は重要な"主張"なのだ。
首輪さえつけていれば、"何処かのDomのもの"として他のDomからちょっかいを掛けられることもなければ狙われることもない。
そしてそれが例え自分自身で着けたものであっても、"Domから貰った首輪"だと自分に思い込ませる事で、完全ではないもののメンタルを崩さないことも出来る。

そうして中也は第二性を抜きにしても優秀な"人間"であったから、今の今まで"パートナー"を作ることなく一人で此の息苦しい世界を生き抜いてきたのだ。
──然し、それにはどうしたって、ストレスが溜まってしまう。
だから時折"発散"する為に、中也は己の欲求を堪える事が難しくなったら、密かに"Sub御用達"の高級娼館へと通っていたのである。

見た目は只の高級ホテルのような其の娼館。
けれど其の実態はSubの為の"Domを取り扱った"日本の中でも──否世界中でも珍しい娼館で。
更には"擬態"の為に、一部ではきちんと、、、、Subの事も取り扱っているから、万が一に此処に通い詰めている事がバレても言い訳が出来るという至れり尽くせり。

一から十までSubの事を考えて運営されている此の娼館を、中也は心の底から信頼していた。
だからこの日も、彼は思う存分其れ、、を漫喫していたのである。

柔らかく、まろやかな白い太ももに顔を埋め乍ら、うっとりと目を瞑る。
そんな中也を労わる様に、これまた白く柔らかな指先が髪を梳いていくから、脳髄から蕩けるような"恍惚感"の中で中也は微睡み、日々の疲れを消化していくのだ。

「──いい子。今日もお仕事頑張って、偉いね中也」
「……ん、」
「ちゃあんと私の処まで帰ってこれたね。『よくできました』」
「ン、ぅん……」

──あたまの奥から、思考が蕩けていく。
まるで躰が浮いているかの様な多幸感。
所謂──"Subspace"と呼ばれる領域に、今中也はどっぷりと浸かっているのだ。

少女の名前は咲。
まだ15、6と幼い見た目に反して、此の高級娼館を率いる人気1の娼婦であり、"Dom"だ。

なんでも幼い頃すでに第二性が確定していた彼女は、他のDomよりも能力値が高いらしく。
其の生来からの矜持の為か掛かり難い、、、、、中也に対しても、初対面の一発目で"命令"に成功し、更には一度も"Subspace"に入った事のなかった中也を快楽の坩堝に叩き落とした実績を持つ実力派だ。

他のどのDomでも成功しなかった"Subspace"の成功。
其の"味"を覚えてしまった中也は、以来この少女のみを買う為だけに金を注ぎ込んでは足繁く通っているのである。

"Subspace"は、命令を繰り返すことにより引き起こされるトランス状態だ。

Subにとって、心を赦したDomからの"命令"と"ご褒美"は躯が蕩けてしまうんじゃないかと思う程"気持ちいい"もので。
"Subspace"とは其の命令とご褒美を何度も何度も繰り返し行なう事で、Subの精神をトリップ状態に陥らせるのだ。
その感覚は、溢れかえる多幸感に包まれて、まるで楽園にでもいる様なもので。
"Subspace"に陥ったSubは最早自分では何も考えられない、Domの完全な支配下の脳内とろとろの状態になってしまうのである。

今日だって、『目を見ろ』『手を握れ』『抱きしめろ』なんていう命令を繰り返し行って、あっという間に此の躯は"Subspace"へと入ってしまった。

ふわふわと異能を使っても居ないのに無重力の中に居る様な感覚に、中也は再度恍惚とした溜息を吐く。
日々積み重なる重責やストレスから解放される、中也にとって此処は、至極の極楽なのだ。

「中也、『顔を上げて、躯を起こして』」
「ん……」
「よく出来ました。『おいで』」
「……」
「いい子ね」

ゆるりと笑う少女が、腕を広げて中也に"命令"してくる。
其れに中也もとろんとした思考の儘で、何も疑問に思うことなく少女の、咲の腕の中に自ら入っていくのだ。
絶妙なタイミングで被せられる"ご褒美"が、脳に沁みて心地よい。

力を込めたら簡単に縊り殺せてしまいそうな、細い首に小さな頭。
其れに腕を回せば、咲はほぼ肌の透けた生地しか身につけていない躰で擦り寄る様に中也へと躯を預けていく。

──甘い香りがする。
安物ではない、上等な石鹸の香水に混じった、少女特有の甘い匂い。
非常に此の少女に似合った、考え抜かれた、、、、、、香り付けだ。
匂いの分量も、系統、髪型、身に着ける衣装のなにもかもが、全て此の少女の為に計算され尽くしたものなのだろう。

そりゃそうだ。
彼女は商品であり、此の娼館きっての"高級品"。
誰に染まるでもなく、誰のパートナーでもない。
詰まりは、中也のDomには、なり得ない。

「ふふ、『私を抱き上げて、ベッドまで運んで』」

ぐりぐりと少女の首筋に顔を埋めて満喫していれば、また囁かれる甘い"命令"。
其れにひとつ頷いて華奢な躯を抱き上げれば、楽しそうな笑い声が耳に触れて堪らない気持ちになる。

薄い身体だ。
腹も腰もぺたんこなのに、胸と太ももだけがふんわりと肉づいていて、そのアンバランスさが不思議に感じる。

部屋の奥にある天蓋付きのベッドへと優しく降ろせば、咲はまた「いい子。よく出来ました」と笑ってシーツの中でごろりと寝転ぶ。
そうして誘う様に足を差し出すのだ。

「ね、『脱がせて』」

考えるよりも先に、"命令"に沈みきった躯は勝手に動いていく。
細い足首を掴んで、もう片方の手でするすると爪先から足の付け根まで手を滑らせていく。
そうして辿り着いた其の先で、中也はパチリとガーターベルトの留め具を外した。

──それは咲が中也に"躾けた"やり方だ。
外したレースのストッキングに軽く歯を立てて、破かない様に注意し乍ら丁寧に引き降ろしていく。
手を使っていいのは留め具を外す時と足を持つ時だけ。
それ以外は全て口を使えと、咲は回数を重ね乍ら中也に教え込んでいったのだ。

先まで引き抜いたストッキングから口を離せば、ぱさりと音を立てて白いシーツの上へと落ちていく。
すると咲はもう片方の足も差し出すから、中也はまた同じように口を使って幼さと色気が混在する躯を露にしていくのだ。

「んっふふ……次はこっち。がんばれがんばれ」

鈴の様に高く澄んだ声と共に頭を慣れられて、じわじわとした歓びに胸が包まれる。
中也はその歓びの儘に、咲の足を割ってその間に潜り込み乍ら、今度はへその直ぐ下にあるガーターベルトの結び目を解いていくのだ。

唇にシルクのリボンを挟み、其の儘引き抜いていく。
しゅるりと云う軽やかな音と共に、また一つ、少女の躯がさらけ出されていく。
そうして太ももを手で支えながら、腰の両サイドにあるTバックの紐を引き解いて。
薄い腹に口付け乍ら彼女の割れ目、、、に纏わりつくショーツに舌を潜り込ませ、生地だけに噛みつき乍ら邪魔な布を剥がしていく。

するすると肌の上をレースが滑る感覚が擽ったかったのだろう。
咲は小さく「んっ」と声を漏らしながら、まるで揶揄う様に中也の顔を其の太ももで軽く挟み込んできた。
だから其れに中也は"ご褒美"と受け取って、うち太ももに舌を這わせて吸い付き、"ついで"を装い乍ら彼女のつるりとした其処、、へ舌を潜り込ませていく。
ひだ、、を掻き分ける様に舌を動かし舐め吸えば、ぴくんと少女の軽い躯が跳ねた。

「ッんぁっ、んっもう、だぁめ。未だこっち、、、が残ってるでしょ? 『待て』、其れは全部やってから」
「………、…」
「『返事は?』」
「……わかった」
「うん、いい子」

今直ぐにでも覆い被さって揺さぶり突きたい衝動をぐっと堪えて、中也はちゅ、ちゅ、と肌を吸いながら上へ上へと昇り詰めていく。
さらさらと質の善いレースのベビードールが頬を掠めるが、其れには全く意識を向けないで谷間で結ばれるリボンの端に歯を立てた。
其の儘顔を横に動かしていけば、歯に柔く挟まれたリボンがしゅるりと解けていく。
さあ──"ご褒美"だ。

そう色めき始める中也に対して。
けれど細い指先が、つん、と其の鼻先を小さく突いた。

「『待て』、其れ、、は貴方が脱いでから」

にこやかに微笑む顔が憎らしい。
また"お預け"かと、荒い手つきで中也は服を脱ぎ払っていく。

──中也は、Subではあるが気位が高い。
所謂"支配しにくい"タイプのSubであるのだ。
だから如何しても、どれだけ"Subspace"で頭が蕩けていようと、時折こうして凶暴な本能が牙を向く。

"Sub"には、様々な種類が居る。
被虐性の強いもの、献身の強いもの、そりゃもう星の数の如く色んな"性癖"のSubが、此の世界には溢れかえっているのだ。
そしてそれは勿論Domもだが──此処は、"Sub"の為の娼館。
其の中で此の仮初とも云える"パートナー行為"では、意図も容易く力のバランスは崩れ去る。

因みに中也の"Sub性"は、尽くすものだ。
そして其の尽くすには──色んな、、、意味が、、、含まれる、、、、

"Subspace"には、未だ入った儘だ。
けれど其処に"待て"が加わり、今中也は絶妙な興奮状態に陥っていた。

頭が軽くて、躯が軽くて。
気を抜いたら"男の性"が暴れ出してしまいそうな、危険な感覚。
気付けば息が荒くなっていて、うっかりすれば逆上せそうな程の高揚感の中で、只々組み敷く女の"言葉"のみを待っている。

息が熱い、躯が熱い。
逆上せそうだ、茹だりそうだ。
それでもただ只管に、今か今かと待ってはただ爛々と瞳を輝かせるのだ。
なんたって──"御馳走"はもう、此の腕の中にある。

両腕の檻に囲んだ女が、そんな中也の目の前でゆっくりと瞬いた。
そうして其の儘蠱惑的に微笑んで、艶りと色づく唇で、勿体付ける様に言葉を紡いでいく。


「よく出来ました。──さぁ、『おいで』」


瞬間、待っていましたと其の小さな唇に噛みつけば。
咲はくぐもった声を漏らしながらも、唇を、足を開いて中也に絡ませていく。

頭が熱い、躯が熱い。
今の今迄溜め込んできた欲望を、欲求を、やっと解放てる瞬間が来たのだ。
肌があることがもどかしい。躯があることがもどかしい。
嗚呼今すぐにでもひとつに融けてしまいたいと激情を其の胸に宿し乍ら、Subの皮を被った狼は幼い躯を貪り喰らうのだ。

未だ夜は、始まったばかり。




──きっっっつ。

今は何時か。
無駄に飾り付けられた天蓋の所為で、時計が確認できない。
躯が重くて酷く怠い。腰が痛い。喉が痛い。ああもう──また好き放題しやがった。

恐らく既に夜は明けていて、もう直この男も此処から退出する時間だ。
散らばった彼の衣服が皺になって居ないことを願い乍ら、自分の胸に顔を埋め乍ら幸せそうに眠る──いやこいつ、起きてるな。

背中からお尻にかけてのくびれ、、、を撫でる厭らしい手つきに小さく息を詰め乍ら、咲はなるべく優しい声でこう言葉を掛けてあげるのだ。
なんたって、彼は咲にとっても"上客"なのだから。

「おはよう中也。もう直ぐおはようの時間だから、シャワー浴びなきゃでしょう?」
「ん〜……、未だいいだろ」
「ン、も、こら。だぁめ」

するすると滑り下り、挿し入れ、、、、ようと、、、する、、手を、軽く抓ってやる。
もう"夜"は明けてしまったので、不要、、な"命令"を掛けるわけにはいかないのだ。
下手をすると、Subである彼の躯に負担をかけてしまう場合がある。

「……はぁ。離れたくない」
「また会いに来て。此処で待ってるから」
「…………此処じゃなきゃ、駄目か?」

──それは、つまり。
如何しようかと悩みつつ、然し其の素振り、、、は一切見せないで、にこりと笑う。
彼が此の笑顔に弱いのは知っている。
なんたって、時間を掛けてそう躾けた、、、のだから。

──ほら、目論見通りに罰の悪い顔。
これで多分今回も乗り切れたな、といい子いい子と其の明るい髪の毛を可愛がってやる。
こうなれば、彼は只の小さな子供だ。

「……お前を買い取りたい」
「"うち"は人身売買は遣って居りません」
「俺だけの"Dom"にしたい」
「私は誰かの"Domもの"にはなれないの」
「………お前が、欲しい」

ぐり、と谷間に押し付けられる顔に。
今回は長く愚図る、、、なあと思い乍ら、形のいい頭を撫で続ける。
間違っても、此処で了承してはいけないのだ。

「私、外は怖いの。危ないことがいっぱい。此処は綺麗で安全。私の好きなもので満ちている。私は好きな場所で、好きな中也に逢いたいの。ね? どうかわかって?」
「……」

ズキズキと響く腰が痛い。
今が何時かは判らないが、恐らくそろそろコールが鳴る時間だ。
コールが鳴れば、彼ともお別れ。
だから其れ迄に、何とか持ち直させなければ。

「中也」

"命令"とまではいかない。
けれど、言葉に力を持たせて名前を呼んで遣る。
すると中也は不貞腐れた様な顔で私の事を見上げるから、その頬をするりと撫でてやる。
顔を覗き込んで、そのまま薄い目蓋に、ひとつだけキスを落とす。
ふるりと小さく、睫毛が震えた。

「ねえ中也『またおいで』」
「っ、……」

──ほんとはあんまり遣っちゃいけないんだけど。
でも、"命令"しなきゃ、絶対満足しないんだろうなあ、なんて思ったり。

すると予想通り、胸の中の彼は諦めた様な吐息を溢すから、諦めてくれてありがとう、という気持ちを込めて今度はおでこにキスしてあげる。
ずりぃ、だなんてぼやく声が聴こえたけど、それはもうスルーだ。
だってもう直ぐ、彼は此処から出なきゃいけないんだから。

「ほら、洗ってあげるから、一緒にお風呂に入りましょ。『私を抱き上げて、連れてって』」
「……ん」

いつも通り、湯船には確りお湯が張られてるはず。
だからその背中をぽんぽん、と優しく擦り乍ら、今度は直ぐに果たせる"命令"をしてあげる。
大丈夫、流石にもう一ラウンドは流石にヤらせない。

躯に麗しい腕が回されて、其の儘軽い動作で持ち上げられる。
一見華奢なのに、筋肉量が凄いんだよなあと思いながら、歩調と共に揺れる足になんだか楽しい気持ちになり乍ら筋張った首に腕を回して抱き着いた。

豪華絢爛の籠の中で。
私は今日も、誰かに揺られながら生きるのだ。

此処は私が見付けた、私の墓場。
別に自由なんて、欲しくはないの。

お皿の上ではよい子のふりを

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