囚われたうさぎ


みょうじなまえは並盛中では有名だった。うさぎのように愛らしく、小さいその容姿から"並中のうさぎ"と呼ばれ、誰からも愛されていたのだ。しかし本人は不服だった。なまえはもっと成長したいし、できればカッコいい女の人になりたいという願望があったからだ。しかしなまえは中学2年生になっても中々背が伸びず、童顔のままだった。皆が愛すその容姿はなまえにとってコンプレックスでしかないのだ。

「うさぎちゃん!今日も可愛いね!」

「うさぎ〜!お前黒板届かないだろ?俺が代わりに消してやるよ。」

「うっさぎちゃん!今日放課後俺とデートしない?」

うさぎ、うさぎうさぎうさぎうさぎ。ゲシュタルト崩壊が起きそうだ。私の名前はうさぎじゃないのに。もう私を名前で呼ぶ人の方が少ない。はあ寂しいな。

「なまえちゃん大丈夫?」

『ありがとうツナ君。ツナ君は私のことを名前で呼んでくれる数少ない友達だよ。そのままでいてね。』

「あはは、なまえちゃんのこと"うさぎ"って呼ぶ人多いもんね。」

『私のどこがうさぎなの!もう!』

「うーん、でもうさぎっぽいよ。肌は白いし、小さいし、大きい目とか。」

『日サロ行く!牛乳のむ!整形する!』

「やめて!?」

うさぎと呼ばれる原因を一つずつ潰していけばうさぎと呼ばれることも少なくなるかもしれない。まずは牛乳だ!そう意気込んでツナ君と歩いていると、私達の前にある青年が立ち塞がった。

「ああ君か、沢田綱吉。」

「ひいっ!ヒバリさん!!」

なまえは危険を感じ、咄嗟に綱吉の後ろに隠れた。綱吉の後ろから自身にとって危険人物であろう雲雀恭弥に全身の血の気が引いていた。雲雀は綱吉の後ろに何かが隠れたのはわかっていた。

「何を匿ったんだい沢田綱吉。」

「匿ってないです!!」

「ねぇ、そこの君、出てこないと咬み殺すよ。」

ひええええ。どうしようどうしよう。ついに私も狩られる時が来てしまった。あのトンファーで殴られると痛いのかな。痛いのはやだな。

なまえは様子を伺いながら綱吉の後ろからおずおずと出てくる。雲雀はその姿を見て少なからず加虐心を煽られた。獲物を見つけた獣のようになまえを捉え、捕まえにいく。なまえはあまりの恐怖に目を瞑っていたが、雲雀に抱き抱えられた瞬間、その目を見開いた。

「ヒバリさん!?」

「これもらっていくよ。」

雲雀は小さななまえを抱き抱えて誰にも邪魔されない応接室へと向かった。いい獲物が手に入ったと内心喜びながら、その場を立ち去ったのだった。

『きゃうっ、』

雲雀は応接室に着くと、なまえをソファーにポイっと放り投げ、自身のネクタイで彼女の両腕を縛った。さらに身を震わせたなまえを見て雲雀は笑みを深くする。なんと虐め甲斐がありそうな小動物なのだろうか、と。

「みょうじなまえ、だったよね。」

『あ、あのっ、』

「うさぎって呼ばれてるんだって?見た目通りだね。」

『私はうさぎじゃありません!』

ムッとして口答えをするなまえの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。何も出来ず身を縮こませている姿がいじらしく、もっと泣かせてやりたいと雲雀は思った。

「僕に口答えするんだ。」

『ひっ、な、なに…っ!?』

雲雀はなまえに近づき、首筋に舌を這わせた。びくりと震えるなまえを見て、満足そうに笑う彼は、もう一度首筋に唇をあてがう。

『やだっ、やですっ、』

雲雀は嫌だと身をよじるなまえをソファに押し倒して跨る。なまえはゾッとして顔を青くするが、為すすべはなかった。

「うさぎは年中発情期なんだって。」

『…、』

「君もそうなの?」

私を見下ろすその獣は、楽しそうに笑っていた。私はうさぎじゃないのに!怖くて怖くてたまらないのに、何もできない。

雲雀はなまえのリボンを外し、ワイシャツの3個ほどボタンを外した。すると胸元が露わになり、なまえは恥ずかしさからポロポロと涙を流した。

『ふっ、ぅ…っ、やめてください…っ、嫌です…っ、』

「弱い奴はすぐに狩られる。君も弱いなりに賢くならないと生き残れないよ。」

『な、なんでもしますから…!』

「なんでも、ね。」

言質をとった、雲雀はそう判断する。なまえはなんでもすると言ったのだ。馬鹿で愚かな女だと雲雀は心底楽しそうに笑う。彼は怯えるなまえの手を解放したが、まだなまえの上に乗ったままだった。解放された手でなまえは胸元を隠し、大きな瞳で雲雀を見る。

『っ、んぅ、』

雲雀はなまえの頭の横に手をつき、噛みつくようなキスをした。それはだんだんと捕食をするような、品定めをするようなキスへと変わっていく。なまえは弱々しくも雲雀の胸板を押し返すがビクともせず、降りかかるキスにとろとろと溶かされていった。

『はっ、…んっ、』

溢れてしまった唾液がなまえの口の端から溢れてこぼれる。雲雀はゆっくりと唇を離すと、肩で息をし、顔を紅潮させるなまえの姿を見て気分を良くした。このまま食べてしまうのも悪くはないが、せっかく気に入った獲物だ、じわじわと追い詰めて、嬲って、最後に食べればいい。そう考えた雲雀はやっとなまえの上から退いた。なまえはやっとの思いで上半身を起こし、ソファーから立ち上がる。

「まだ食べるのはやめておいてあげる。もったいないからね。」

『私っ、』

「逃げてもいいよ。逃げ惑う獲物を追いかけるのは楽しいしね。」

『…っ、もう捕まりませんから!!』

精一杯の言葉を吐き捨ててなまえは逃げるように応接室を出て行った。その素早さに雲雀は思わず笑った。

「せいぜい必死に逃げてみなよみょうじなまえ。」

一方応接室から逃げ出したなまえは綱吉の元へ行き、泣きながら彼の頭にチョップを入れたのだった。



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