鎖に愛ごと繋がれた


どうしてこうなってしまったのかわからない。私は彼を支えたかっただけなのだ。他意はない。どんなことがあってもボスとして前に進み続けようとする貴方がいつか壊れてしまうのではないかと不安だった。もう遅かったのだ。

『っ、外れないか…、』

ジャラリと重い音を立てて地面を叩いたその鎖は私の首と壁を繋いでいた。この豪華絢爛な部屋とは不釣り合いな重々しい鉄の鎖。何度引っ張ろうともビクともしない。

私をここから逃してはくれないこの鎖に憤りを感じていると、煌びやかな扉が開く音がした。その音に反射的に体が反応してしまう。扉から入ってきたのは、キャッバローネファミリーボスであり、私の友人だったディーノさんだった。

「また外そうとしたのか?」

呆れた表情を見せる彼だが、そもそもこんな風に私を繋いだのは彼だ。私は彼に背を向け、壁に繋がれている鎖を再び引っ張った。するとその直後、後ろからあの男に抱き締められる。ジタバタと暴れるが私の体はすっぽりと彼に覆われており、何も意味を成さなかった。

「なあ、なまえ。そろそろ諦めてくれよ。」

『嫌です!これを外して…っ!』

声を荒げると、抱き締める力がどんどん強くなった。ギリギリと締め付けられる体が悲鳴を上げている。

『っ、』

「俺から逃げるつもりか?誰のところに行くんだよ。ツナか?それとも恭弥か?」

『っく、ぅ…!!』

みしみしと軋む体に、声が漏れてしまう。痛いし苦しい。本当にこのまま圧迫されて死ぬのではないかと思うくらいだ。

『や、め…っ!!』

「こんなに小さくて細いんだな。力を入れれば簡単に壊れそうだ…。」

『!?』

「なーんてな。そんなことはしないさ。お前が俺の傍にいる限りは。」

パッと抱き締められる力が無くなり、私はその場に倒れこんだ。私を見下ろすように立つディーノさんをギッと睨みつけた。

「お前はもう誰の目にも映させない。お前の目にももう俺以外の奴は映さなくていい。」

『どうしてそんなこと…!!』

彼は私の目の前でしゃがみこみ、狂気を孕んだ瞳を細めた。普段の彼からは想像もつかないその表情に背中が凍りつく。

「当たり前だろ?お前は俺のものなんだから。頭のてっぺんからつま先まで、髪の毛一本すら他の奴には渡さない。」

『私は貴方のものじゃない!!お願いディーノさん、元の貴方に戻って…っ、』

「なまえ。」

『っ、』

首に繋がれた鎖を無理矢理引かれ、息が詰まった。金色の瞳が鋭く光り、私を捉える。

「聞き分けの悪い子は躾が必要か?」

低く唸るような威圧的な言葉に驚いた。なにが彼をこうしてしまったんだ。私は何を間違えた。どうしたら彼は元に戻るのだろうか。きっとこれから答えが分かることのない疑問が頭の中をぐるぐると渦巻いていく。

『ごめん…なさい…。』

「いい子だなまえ。愛してるよ。お前は永遠に俺のものだ。」

呪いのような愛の言葉に、私の瞳からは涙がこぼれた。



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