XANXUSさんに奪われる


『XANXUSさん、もう離してくださいよーーー。』

「るせぇ。」

『何回目ですかこのやりとり。』

XANXUSさんと私は何故か同じはロングソファーに腰をかけている。そして何故か彼は私の腰を抱いている。何故だ、何故こうなった。

何かの任務でヴァリアーが日本へと訪れていたらしい。私はその事実は知らなかったのだが、休日にショッピングを楽しんでいたところ、急に路地裏に引き込まれて拉致された。拉致をしたのはベル様だった。混乱したまま、セレブ御用達のホテルに連れてこられ、そのままXANXUSさんの部屋に放り込まれたのだ。そして今に至る。

あまりにも暇なのでお腹まで回されている手を少しつまんでみたり、指をにぎにぎとマッサージしてみた。すると、彼は私のお腹を唐突につまんだ。

『ぎゃっ、』

「色気がねぇ。」

『突然つままれたらこんな声しか出ませんよ!ちょ、お腹、揉まないでっ、ください…!』

もにもにとお腹を揉まれ、くすぐったくて身をよじるが、がっちり掴まれていて逃げることを許されない。

『もっ、だめ、ですって…!怒りますよ…!』

そういうと、彼はぴたりとお腹を揉むのをやめて、私をジッと見る。やばい、殺されるかもしれない。

「殴るか。」

『なっ殴りません!命は大切にして生きてますから!』

「俺をひっぱたいた女がほざく言葉とは思えねえな。」

『もう忘れてくださいよ…。』

この話題を出されると本当に気まずい。思わず目を泳がせて彼と視線が合わないようにする。そんな私を見て、彼は鼻で笑った。そして私の額に唇を落とす。私はギョッとして彼から距離を取ろうとしたが手をがっちり掴まれてしまい、それは叶わなかった。額、瞼、鼻、頬に順番に唇を落とされる。唇を奪われるのは本当にまずいと思い、意地でも顔を晒した。すると彼は私の顎を掴み、顔を晒さないようにした。

『XANXUSさん…っ!私付き合ってる人がいるので…唇は嫌です…!』

「関係ねェ。」

『大ありです!ダメ!絶対!浮気!』

あいた片方の手で唇を奪われないよう口を押さえた。すると彼は眉間のしわを深くして、鋭い目でこちらを見た。

『そ、そんな目で見てもダメなものはダメですからね…!それに…、ざ、XANXUSさんのちゅーは、え、えっちだから、ダメです…!!』

「煽ってんのか?」

『なんでそうな…んぅっ、』

噛み付くように唇を奪われる。後頭部を押さえつけられて、逃げることができない。解放された両手で胸板を押すけれど、意味はなさなかった。

『ん…、ゃっ、』

唇を割って入るのはぬるりと熱い舌だった。荒々しいけど、どこか優しい口付けに頭の機能が低下している。脳が蕩けていってしまうような、甘い口付けだった。彼はゆっくりと唇を離した。私の唇の端からは溢れた唾液が伝う。唇はダメって言ったのに。じわじわと目頭が熱くなって、溢れるのをグッと堪えた。

「!!…………悪かった。」

『!!?』

あ、あのXANXUSさんが謝った、だと!!?明日は地球が滅亡するのではないかと思うくらい衝撃的だった。XANXUSさんにも申し訳ないと思うことがあるのか。

「早く俺に堕ちろ。」

『私はそんなお手軽じゃないんですよ。ちゃんと親密度あげてもらわないと。』

「めんどくせぇ。」

彼は自身の胸板に私の頭を引き寄せた。キスされるよりこっちの方がマシだ。そういえば私買い物の途中だったんだよな。お洋服欲しかったけどまた今度でいいや。



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