委員長と喧嘩する


『もう委員長なんて知りません!!出ていかせてもらいます!』

「僕の家だし。どうぞ。」

『〜〜〜っ!委員長のばかー!』

私は暴言を吐いて家を飛び出した。酷い、酷すぎる。いくらなんでもあんまりじゃないか。もう絶対戻ってやらないんだから!!

「で、こっちの屋敷に来たのか。」

「あはは、お二人も喧嘩するんですね。」

『うっ、うぅ、ディーノさん綱吉君聞いてくださいよ…っ!委員長ったら酷いんですよおおお。』

私はボンゴレファミリーが普段仕事をしている屋敷へと訪れていた。群れることが嫌いな委員長は滅多にここを訪れないため、慰めにもらいにきた。

「何が原因なんですか?」

『ぐすっ、実はね…、』

正式に星空の娘としての役割を担ってから、様々なマフィアと関わることが多くなった。もちろんボンゴレの守護の元であることが条件だ。そこで多いのが社交パーティーだった。何度も何度も行くのは正直面倒だし、知らない人もわりといるので行きたくないときもある。しかし、マフィアの友達も何人か出来てきてやっと楽しさを知ることができた頃だったのだ。その最中、事件は起こった。最近はぱったりと招待状が届かなくなった。そういうシーズンかと思って気に留めらことはなかったが、先日クロームちゃんに最近いないので寂しいです、と言われたのだ。これは一体どういうことだ、と委員長に問い詰めたら、どうやら彼はある頃から、招待状を全て燃やしていたらしい。理由を聞いたら、行く必要がないから、と言った。

『それで怒って出てきました…。』

「どうりで最近花莉がいねーんだな。恭弥のやつまだまだ餓鬼だなぁ。」

『なんで委員長に社交パーティーの出欠席まで管理されなきゃならないんだって話ですよ!!保護者か!!』

「花莉先輩のこと心配なんですね。ヒバリさん群れるのが嫌いだから社交パーティーは滅多に出席しないですから。」

『でも…ボンゴレの皆がそばにいてくれるし…。』

「それも嫌なんだろうな、あいつ。でも男に護衛させないとお前に変な虫が寄ってくるから仕方なく任せてるんだぜ。」

『ええ!?じゃあクロームちゃんがあんまり護衛任されない理由って…、』

「可愛い女の子が2人もいたら俺でもそっちに行くな。」

はははっ、と爽やかに笑うディーノさん。そんな真意があったとは知らなかった。委員長は委員長なりに考えてくれていたのか。

「ヒバリさんのやり方もちょっと強引かもしれないけど、気持ちはわかります。大事な人が変な人に捕まるのは嫌だし、大切だからこそ傍にいてほしいんだと思いますよ。」

『綱吉君も…?』

「えぇ!?お、俺は、そのっ、」

『はは、顔真っ赤。…ちょっと怒りすぎちゃったかな…。』

「大丈夫だろ。恭弥はなんだかんだお前に甘いからな。」

『えええ?そんなことないですよ。』

なんて談笑していると、けたたましい音を立てて、部屋の扉が開いた。扉の近くにいたのは、怒りMAXの委員長だった。その手にはトンファーを持っており、今にも誰かを殺しそうな勢いだ。

『本当に大丈夫だと思います?』

「は、はは、大丈夫、だろ…。」

「何、群れてんの。」

『なっ、第一声がそれですか!?委員長が謝るまで帰りませんから!』

あああ、全然こんなこと言うつもりなかったのに委員長を目の前にしたら意地でも許したくなくなってしまった。

「ふうん。」

『ひっ、』

ゆっくりと私に近づいてくる委員長。ディーノさんか綱吉君を盾にしようとしたら2人ともそそくさと離れた。裏切り者!私も負けじと委員長を見上げて睨む。すると彼は私を軽々と担ぎ上げた。

『下ろしてください!』

「うるさい。」

『ディーノさん綱吉君助けて!』

「「…。」」

『裏切り者おおお!!』

私を担ぎ上げた委員長はそのまま部屋を出た。彼は黙ったままずんずんと廊下を歩いていく。

『今日は他で泊まりますから下ろしてください。』

「嫌だ。」

結局、私は担がれたまま委員長の家に戻されてしまう。寝室に入ると布団の上に私を捨てるように放り投げた。

『雑すぎる…!』

「で、何か言うことある?」

『なんでそっちが偉そうなんです!?』

彼の堂々たる姿勢に、あれ私が悪いんだっけ、と錯覚しそうになったが、今回は確実に委員長が悪い。

『せめて一言言ってほしかったです。』

「言ったら君行くだろ。」

『行きますよ!やっとお友達が出来てきたのに!何のための社交の場だと思ってるんですか!?』

私がそう言うと、彼は私に覆いかぶさるように上に乗った。グッと綺麗な顔が近づき、思わず息を飲む。

「君のことを品のない目で見る奴が多い。草食動物達だって、何考えてるかわからない。そんなところに行かせたくない。」

『私は…っ、そんなに信用がないですか…っ?貴方に信用されてないのが悲しいんですよ…!』

「…信用していないわけじゃないよ。でも、君が思ってる以上に奴らの目を惹いている。君が警戒してもどうにもならない時があるかもしれないでしょ。」

『…、』

「本当はずっとここに閉じ込めておきたいくらいなんだ。でも君はそれを望まない。だからせめて社交場は減らそうと思ったんだよ。」

彼がこんなに正直に話すなんて思わなかった。すごく不本意って言うのが顔に出てるけれど。こんなの、許すしかないじゃないか。

『1ヶ月に1回にします…。』

「半年に1回にして。」

『2ヶ月に1回。』

「4ヶ月に1回。」

『はぁ、わかりました。4ヶ月に1回にします。でも招待状は燃やさないでください。欠席の返事は書かないと失礼ですから。』

「わかった。」

目を細めて笑う彼を見たら、きゅうんと胸が締め付けられた。可愛すぎる。彼は私の横にどさりと寝転がる。

『スーツ、しわになりますよ。』

「哲にクリーニング持って行かせる。」

『もう、草壁君を使うのもほどほどにしてください。』

「哲の味方するの?」

『何子どもみたいなこと言ってるんですか。』

私は中学の頃よりも短くなった委員長の髪にそっと触れた。きっと彼とはまた、くだらないことで喧嘩をするのだろう。それでもこうやって仲直りして、ずっと一緒にいたい。

『恭弥さん、好きですよ。』

「知ってるよ。」

こうして私達は何度も愛を囁き合うのだ。



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