委員長のお見舞いの話
12月の休日、委員長から唐突にメールが1通届いた。その内容は並盛中央病院に来いという命令文。なんで病院なのかはわからない。そしてこの人は人の休日をなんだと思っているのだろう。しかし彼の命令は絶対。私はすぐに出かける準備をして並盛中央病院に向かった。
病院の前まで着いたが委員長の姿はない。どこにいるんですか?とメールをすると病室の番号が返信された。
『委員長が入院してるの…?』
ついに誰かに返り討ちにあったのか。いやそれはない。交通事故とか?その可能性はなくはないだろう。少し心配になって急いで面会受付で面会の手続きをした。委員長の名前を出したら受付の人の顔が真っ青になってすぐに病室へと通される。看護師は私を病室の前まで連れてくるとそそくさと逃げていった。
『失礼します。』
そっと病室のドアを開けると、委員長がベッドで本を読んでいた。本当に委員長が入院していたのか。
「やあ、思ったより早かったじゃないか。」
『こんにちは。どうしたんですか?怪我ですか…?』
「風邪をこじらせてね。」
『風邪…!?委員長も風邪引くんですね!?』
「君、僕をなんだと思ってるの?」
正直風邪菌が負けると思っていた。そもそも風邪で入院って普通しないんですよ委員長。そんなことは口が裂けても言えないけれど。私はベッドの側の椅子に座った。
『すみませんまさか入院してると思わなくてお見舞いを持ってきてないです。』
「別にいいよ。暇だったから君を呼び出しただけだから。」
『委員長こそ私をなんだと思ってます?』
相当暇だと思われているのかそれともどこにいても私が来ると思っているのかどちらだろう。私の人権がないことは確かだ。
「さっきまで相部屋だった奴がいてね。ちょっとしたゲームをしてたんだよ。」
『一応聞きますけどどんなゲームですか?』
「簡単なゲームだよ。僕が寝ている間に音を立てたら負け。」
『委員長葉っぱが落ちる音でも目覚めるんじゃなかったでしたっけ?』
「そうだよ。だから皆弱くてね。」
『いや皆が弱いんじゃなくて委員長が強すぎるんですよ!』
相部屋になった人達が気の毒すぎる。葉っぱが落ちる音でも目覚める委員長に誰が勝てるというのだろう。勝てるとしたら屍くらいだ。
「君もする?」
『嫌ですよ。咬み殺されたくないですし。風邪をこじらせたら大人しく寝ててください。』
「暇なんだよ。何か話して。」
まるで駄々をこねる子どものようだ。しかしこうなった以上私は委員長の暇つぶしに付き合うしかない。私は他愛もない話を委員長にした。特に面白みもない話だ。それでも彼は頷いたり、たまに質問を返したり、ちゃんと聞いてくれた。だんだん委員長の目がしょぼしょぼとしてきて眠そうな様子を見せた。
『眠いですか?』
「うん、」
『じゃあ私そろそろ帰りますね。私がいたら委員長眠れないでしょうし。』
「僕が眠るまでここにいて。」
『え…、私音立てないとか無理ですよ。絶対音立てちゃいます。』
「いいよ、別に咬み殺さないから。」
『そう…ですか。それなら委員長が眠るまではここにいます。眠ったら帰りますよ。』
「ん………。」
眠たそうにしていた瞼は固く閉じられた。委員長の寝顔なんて初めて見た。少しあどけなさが残ってるその寝顔は、私でもどきりとするくらい綺麗で魅入ってしまう。しばらくすると寝息が聞こえてきたので極力音を立てないように病室を出た。
お大事に、委員長。
そう心の中で呟いて、私は病院を後にした。いつも通り横暴な委員長だったけど、やっぱり病院は似合わないから早く治るといいな。
そんな委員長のお見舞いの話。
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