沢田家の住人に会う日の話


『あ、あのリボーン君?お家はこっちで大丈夫なの?』

「ああ、こっちだ。」

放課後、町の見回りをしていると1人の赤ちゃんに遭遇した。赤ちゃんと言ってももう1人でスタスタと歩いているし、何よりハキハキと話すスーパー赤ちゃんだ。この子の名はリボーン君と言うらしい。迷子だから家までついてきてほしいと言われたがまるで迷子には見えない。しかし1人にするわけにもいかないので彼について行っている。

「ここだぞ。」

『沢田………、』

リボーン君の家には沢田という表札がかけられている。まさか彼のことではないよね。私はリボーン君に上がっていくように言われ、渋々沢田さんの家に入った。彼をお母さんに預けたらすぐ出て行こう。

「おいリボーン!帰ってきたのか!?」

『!!沢田君。』

「星影先輩!?どうしてここに…!?まさかリボーンが!?」

「迷子だからついてきてもらったんだぞ。ツナ、お前花莉をもてなせ。」

「はあーーーー!?何言ってんだよ迷惑だろ!?」

沢田君とリボーン君は兄弟なのだろうか。それにしては歳が離れているな。リボーン君と沢田君のやりとりを見ていると遠くの方で何かがどさりと落ちた音がした。

「あ………あ、」

「フゥ太?どうした?」

「会いたかったよーーーー!!」

『ええ!?』

私の腰に小学生くらいの男の子が抱きついてくる。危うく後ろに倒れそうになったが、なんとか耐えた。

「星影先輩、フゥ太と知り合いなんですか?」

『記憶にないよ。初めて会ったと思う。』

「ねえ、名前はなんて言うの?」

『星影花莉です…。』

「花莉姉!!花莉姉って呼んでもいい?」

『い、いいけど…私、どこかで貴方と会ったかな?』

「ううん、でも花莉姉は僕と似てるから…!」

ぎゅっとしがみつくフゥ太君と言う男の子をどうしようかと迷っていた。まだ見回りの途中だし長居はしていられない。

「フゥ太!星影先輩困ってるだろ?」

「ねぇお願い、少しだけここにいて…?」

『ぐっ、』

まるで子犬のようなその瞳に勝てるはずがない。私は諦めて沢田君の家にお邪魔することになった。沢田君の家には沢山居候がいるらしく、リボーン君もその1人らしい。

『ええと、フゥ太君、ランボ君、イーピンちゃん、ビアンキさん。』

「ガハハ!正解だもんね!褒美に俺っちと遊ばせてやるもんね!!」

「○□△〜!!」

「さすがね花莉。覚えが早いわ。」

「ねえランボ花莉姉にくっつき過ぎだよー!!」

なんていうか賑やかだ。赤ちゃんが1人と幼児が2人と小学生が1人とお姉さんが1人。全員が居候と言うから驚きだ。

「花莉はツナとどういう関係なのかしら。」

『うちの委員長によくボコボコにされてて、手当てしてる関係です。』

「そこまで正直に言わないでくださいよ星影先輩!」

恥ずかしそうにする沢田君に笑いそうになってしまった。ランボ君は私に遊べ遊べとくっついてきて、フゥ太君はランボ君を引き剥がそうとしている。この空間が新鮮で、私も兄弟がいたらこんな感じだったのかなと思った。

『沢田君毎日賑やかで楽しそうだね。』

「賑やかと言うかうるさいと言うか…。俺はもう少し静かに過ごしたいですよ…。」

『ふふ、でもちゃんと面倒も見てるんでしょ?偉いね。』

「ま…まぁ…、」

「おいツナ。鼻の下伸ばしてんじゃねーぞ。」

「のっ伸ばしてないよ!」

リボーン君はボルサリーノを深くかぶり直して、私の膝の上に乗った。

「花莉、お前今幸せか?」

『え…、』

まさかリボーン君からそんなことを聞かれると思っていなくて、言葉に詰まってしまった。沢田君はなんだかハラハラした表情でこちらを見ている。

『今は、幸せだよ。』

「!…………そうか。変なこと聞いて悪かったな。」

『ううん、大丈夫だよ。私まだ見回りがあるからそろそろお暇するね。』

「あっ、星影先輩!色々すみませんでした!!」

『気にしないで。賑やかで楽しかった。また遊びに来てもいい?』

「!はいっ!」

私にしがみつく子ども達の頭を撫でて、私は沢田家を後にした。沢田家はとても温かかったため、外がより一層寒く感じられた。リボーン君の質問を思い出し、空を見上げた。

『今は……、幸せだよ。この色を誰かに見られることがないから………。』

ああ、あたりが暗くなってしまう。もう日が出ている時間も短い。星空になる前に帰れるといいな。いや、もし空に星が浮かんでも、見上げなければいいんだ。

そんな沢田家の住人に会う日の話。



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