山本武と接触した日の話


『ん?』

各部活の部費についての書類を整理していると、何度確認しても、記載された部費の金額とこちらで確認した金額が合わないものがあった。書類には野球部と記載されている。

『委員長、確認していただきたいものがあるんですが…。』

「どれ?」

『これです。』

「…………、野球部の記載ミスだね。書き直させてきて。」

『わかりました。』

私は書類を持って部活に励む野球部の元へと向かった。カキーン、とバッドにボールが当たる音が心地よい。そういえばここまで来たが野球部の部長が誰なのか知らない。どうしたものか、と運動場の端でウロウロしていると、私の足元に野球ボールがコロリと転がってきた。

「すいません!」

『あ、はい。』

「あざっす!さっきからウロウロしてますけどどうしたんすか?」

『野球部の部長いるかな?提出してくれた部費の書類に不備があったから直してほしいんだけど。』

「了解っす!」

ニコニコして爽やかで感じのいい子だなぁ。男の子にも女の子にもモテそうだなぁ。なんて思っていると、野球部の部長が来た。なんだかとてもビクビクしている。

「す、すみません、」

『いやいや、そんな怯えないでくださいよ。委員長いないんで。』

「は、はいぃ。」

『ここがちょっとおかしかったのでもう一度確認して明日提出してもらってもいいですか?』

「すみませんすみません!!」

やめてええええ。私がいじめてるように見えちゃうじゃないか。部長は私から恐る恐る書類を受け取り、逃げるように去っていってしまった。こういうことはよくある。この風紀の腕章を見るだけで避ける人は少なくない。私の背後に委員長でも見えるのだろう。

「あの!」

『ん?あ、さっきの…、部長呼んでくれてありがとう。書類渡せました。』

「いえ!あの、名前教えてもらってもいいっすか?」

『名前?えと、2年の星影花莉です。』

「星影先輩…、ありがとうございます!失礼します!」

爽やか野球少年は名前を聞くだけ聞いて行ってしまった。お、もしかしてモテ期かな。なんて思ってニヤニヤしながら応接室に戻ったら顔が気持ち悪いって言われて普通に傷ついた。


そんな山本武と接触した日の話。



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