骸君に口説かれる
『お邪魔しますー。』
「おや、花莉ですか。どうかしましたか?」
『クロームちゃんに用があったんだけど、出掛けてる?』
「ええ、犬と千種とフランと出掛けてます。」
クロームちゃんに用事があって黒曜に来たが骸君しかいなかった。他の人達は出掛けているらしい。残念だ、今日渡したいものがあったのに。
「何か渡しておきますか?」
『うーん、直接渡したいからまた出直すよ。ありがとう。』
またね、と言ってそそくさ帰ろうとすると後ろからぎゅっと抱き込まれた。ううん、こうやって厄介なことになるから早く帰ろうと思ったのに。
「そんなに早く帰らないでください。」
『じゃあ、抱き締めるのはやめて。』
「嫌です。」
骸君の体にすっぽり覆われた私の逃げ道はなかった。逃げようとするとさらにぎゅうぎゅうと締め付けられるので、ジッとしていた。
「はぁ、僕のものになればいいんですよ。」
『ため息つかれても。』
「つきたくもなります。あの雲雀恭弥に横取りされるとは。」
『横取り。』
「乗り換えましょう。今なら朝昼晩3食とクローム付きです。」
『何か始まった。』
「なんと本日限り、犬と千種もつけます。」
『うんうん。』
「さらにさらに、フランもつけてこの価格。696円です。」
『やっす。』
黒曜メンバーがこんなについているのに696円。破格すぎる。骸君は復讐者<ヴィンディチェ>の牢獄を出てから、羽を伸ばして生きることが出来るようになった。黒曜の皆とわちゃわちゃしている姿を見ているのは本当に楽しいし、嬉しかった。だけど、私に想いを伝える回数もすごく増えた。委員長を好きな私はその気持ちに応えることは出来ないと伝えたけれど、骸君は諦めなかった。むしろ略奪は燃えるとメラメラしていた。
『安すぎるよ骸君。』
「このぐらいの安さなら貴女にでも買えるでしょう。」
『うん?ディスってる?』
「何故雲雀恭弥なのですか。夢で繋がった僕の方がよっぽど運命的でしょう。」
『理屈じゃないよ。』
私は骸君の方に顔を向けた。彼は納得いかないという表情で、眉間にしわを寄せている。その顔がなんとも可愛らしくて思わず笑ってしまった。
「では69円でどうですか。」
値段の違いじゃないと教えてあげるべきなのだろうか。
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