「名前さぁ、あんな不良と付き合ってて大丈夫?」
「え?」
売店でも屈指の人気を誇るクリームメロンパンを食べていたら突然投げかけられた質問に思わず呆けてしまった。とりあえず口に入っていたメロンパンを飲み込む。
「ど、どしたの突然」
「だって名前と山田って全然タイプ違うじゃん。あんたチキンだから無理矢理付き合わされてないか心配なの」
「え、待って急なデレやめて可愛い心臓に悪い」
「…なんか心配して損した気分だわ」
はぁと大きなため息をつく魂の友にてへぺろするとチョップされた。その痛さに全私が泣いた。
確か昨日先生にも同じような事聞かれたなー、「お前何で山田と付き合ってんだ? 脅されたのか?」皆山田君の事そういう目で見てるのか…いや私も前はそうだったけど!あと先生何で付き合ってるの知ってんだ怖って思った。
「私も最初は罰ゲームかなと思ってたけど、山田君凄く優しくて良い人だよ」
「そう言わされてるんじゃなくて?」
「何でそう捉えるの…! 違うよ、本心だよ!」
「…まぁあんたがそう言うなら良いけど…けど何かされたらすぐ言いなよ」
何かってなんだろう…あれかな、進展あったら話してって事かな? つまり私の恋バナを聞きたい、と…? マジかー恥ずかしいなー「いやそういう意味じゃないから」アッ違うのかー!
◇◇◇
山田君とお付き合いしてから数週間と時間が経った。付き合う前は不良恐いとしか思えなかったけど、毎日一緒に帰っているおかげで色んな一面を発見できている。
まず山田君はラノベやアニメを見てる、オタクである事。 私は漫画派なのでアニメとかはあまり見ないが、彼の場合ラノベ原作のアニメやコミカライズ全てを網羅している。どうやら尊敬しているお兄さんの影響らしく、そのお兄さんの事を話してる時の山田君の表情がとても生き生きとしてて可愛い。いやだってこの年頃の男子ってあんまり家族の事話さないじゃん?多分。でも山田君の場合、目をキラキラ輝かせてしかもほっぺもほんのり赤くしながら「俺の兄ちゃんすげぇんだ!」って語るんだぜ…? 可愛いの極みかよ。でも可愛いって言われるの嫌だと思うから絶対口に出さないようにしないと…!
次に山田君は実は結構優しいという事。一緒に歩道を歩く時さりげなく車道側にいてくれたり、ファミレスに行った時もソファー側に座らせてくれたり、そんな優しさを見せてくれる度にきゅんとしてたりする。 またギャップを見せられた…グイグイ引っ張る系かなと思ったけど全然そんな事なくて寧ろ此方の様子を伺ってきてくれるというね…。
最後に、山田君はとっても恥ずかしがり屋という事。 この前付き合ってるのだから名前で呼び合わないかと提案を受けたので勇気を持って「二郎君」「…名前」公園のベンチで名前を呼び合ったのだけど、
「っ…なんつーか、こう…ムズムズすんな…」
「そ、そう、だね…?」
名前呼んだだけだぞ!? 呼んだだけでそんな顔された私はどうしたらいいんだ!??
その様子を見ていた小学生のガキンチョ達からヒューヒューと冷やかしを受け、結局苗字呼びに戻した。そして山田君は真っ赤になりながらガキンチョ達を追いかけ回していた。この一件から山田君はとっても恥ずかしがり屋なんだなと認識した。
こうして一つ一つ山田君の事を知る内に、段々と好きという気持ちが芽生えてきて、家に帰ってからも気がつけば山田君の事を考えていた。
早く明日にならないかなと思っていて、今までは授業マジめんどい明日なんて来なきゃ良いのに爆発したりしないかなーとか言ってたけど、恋すると人って変わるもんなんだなぁ。 恋って本当に凄い。
「…苗字?」
「ひゃっ!? 何?!」
「いや、話しかけても何の反応もねーから…考え事か?」
本人目の前にして山田君の事考えてましたーって言える訳ない、流石に恥ずかし過ぎる。
「ご、ごめん、えと、あっ!あっちからカレーの良い匂いしてるから今日の晩御飯何かなって考えてたの! 」
匂いの発信元はインドカレー屋さんで、お店の前で外国人の店員さんがチラシを配っていた。遠い国から遥々日本に来てるの凄いなぁ…いや待てこれじゃ食い意地張ってるって思われるわ!今更な〜んちゃって!冗談冗談!とかお茶目アピールしたって絶対気持ち悪がられるし…きっと可愛い子がしたら可愛い!で終わるんだろうけど…くそぉ、己のモブ顔が恨めしい!
「言われてみたら確かに良い匂いだな、俺も腹減ってきた」
「エッあっ山田君も? お揃いだね!」
何だよお揃いって。折角山田君が気を遣ってくれたというのに切り返し下手すぎかよ自分。
「そうだな」
………危ない危ない、山田君の優しい笑顔に意識ぶっ飛びそうになった。言い方もめちゃくちゃ優しくて耳が幸せになったし山田君恐ろしい子だね君は…!
山田君って不良不良言われて怖がられてるけど実際はタレ目でおっとりしてそうな顔付きしてるよなぁ…。っていかんいかん、また意識が逸れるところだった。
こうやって違う事考えてしまう癖いい加減直した方がいいな、うん、次から気をつけへぶっ!??
今あった事を簡潔的に述べると、顔を俯かせて歩いていたので目の前の電柱に気づかずぶつかりました。何処かの漫画で見たワンシーンをまさかこの身で体験する事になるとは…。
「大丈夫か?!」
「へいき…全然大丈夫…」
「涙目になってんじゃかよ、冷やした方が、」
「だいじょぶだいじょぶ! 心配かけてごめんね」
だってこの涙は山田君の優しさに対してだからね。こんなに心配してくれる私は幸せもんだよ…。 すると山田君は私から少し顔を逸らして、手を差し出してきた。
「…お手?」
「ちげーよ!」
「ひええごめんなさい!」
山田君の手に拳を乗せた私の行動が気に食わなかったらしい。ごめんなさいちょっとふざけてみたかったんですすみませんと脳内で謝っていた私の手は突然温かいもので包まれた。 ……待ってこれもしかして山田君の…Hand? あっ動揺して英語で言っちゃった、ルー何とかさんみたいになっちゃった。
「山田君、この手…」
「こ、こうして繋いでたらぶつかる前に助けられるだろ。今日の苗字、いつもに増して様子可笑しいし…嫌だったら離すけど」
「ぜっ全然嫌じゃない! すっごく嬉しい!!」
私の返しに「お、おお…」と山田君は引き気味になってしまった。でもしっかりと私の手は握られているので本気で引いてる訳じゃないなと勝手に結論づけた。
まさか、山田君と手を繋ぐ日がくるなんて。
告白されたあの日の私が見たら驚き過ぎて現実逃避しちゃうんじゃないかなーと思う。
山田君の顔を盗み見ると、私の手を握っている方と反対の手を自分の顔に当てていた。それはきっと真っ赤になっているであろう顔を隠す為なんだろうけど、残念ながら耳も真っ赤になっているからバレバレだよ山田君。
ニヤける口元を彼に見られないように少しだけ顔を逸らした。
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