その頂をいつか越えて

 私の幼馴染はイッシュ地方のジムリーダーだった。
 サンヨウシティの三つ子のジムリーダー。旅立ったばかりの新人トレーナーがタイプ相性をきちんと理解出来ているか。サンヨウシティの先にはもっと強いトレーナーやポケモンがいるから最低限タイプ相性の知識は必須だ。その知識を確かめる為に三人でジムを任され、挑戦者が最初に選んだポケモンに合わせて戦う相手を変えていたらしい。
 とはいえ、既にジムは畳んでしまっている。少し前に三人組のプラズマ団と戦い敗れてしまったことがきっかけとなり三人で一人前のジムリーダーではなくそれぞれが強くなろうと決意したというのは後から聞いた話だ。
 私はあのとき旅に出ていて、久しぶりに故郷のサンヨウシティに戻ってきたらジム兼レストランだったその場所はジムではなくなっていたのだから随分と驚いた。

「ヒヤッキー!」
「避けてエモンガ!」

 私の指示に合わせて相棒のエモンガがひらりと宙を舞う。
 サンヨウシティを旅立つ前、私は幼馴染の一人であるコーンに一度も勝てたことがなかった。……デントにもポッドにも勝てていたわけではないのだけれど、コーンに勝てないことがとにかく悔しくて子供の頃は何度も泣いた。
 旅に出ることを決意したのもコーンに勝ちたかったから。幼い頃からずっと一緒だったエモンガを連れて旅に出て、昔よりは戦うことが得意になったような気がする。
 生憎、私はチャンピオンなどに興味はなかったしジム戦に挑戦することはなかった。強くなって帰ってきて、初めて挑むジムはやっぱりサンヨウジムが良いと決めていた。憧れでもあるジムはなくなってしまっていたけれど。

「少しは強くなったみたいですね、ナマエ」
「当然。私もエモンガもやられっぱなしじゃないんだから」
「ですが今日はひとまずここまでにしましょう」

 コーンがパートナーであるヒヤッキーをボールに戻し、ちらりと時計に視線を投げた。
 時計の短針は九の数字を指している。外は既に真っ暗で人の気配も疎だ。レストランの仕事はデントとポッドが引き受けてくれているとはいえ、彼らに仕事を任せきりなのも良くないだろう。
 コーンと戦いたい、と告げたのは昨日の夕方。既にジムリーダーではないからバッジは渡せないしレストランの仕事もあるから長時間の相手は難しいかもしれないがそれでも構わないならと引き受けてくれた。
 ——実力が互角で、決着がつかないとは思わなかったけれど彼を相手にここまで善戦したのは初めてだったので嬉しい。昔の自分であれば適切な指示を出すことすら出来ずに負けていただろう。

「コーン、付き合ってくれてありがとうね」
「ボクもヒヤッキーも強くなりたくて修行していますし、お互い様ですよ」
「ううん。私にとってはサンヨウジムに挑むのが憧れだったから。もちろんただ憧れるだけじゃなくて、勝つつもりだけどね」

 いつかこの場所で、幼馴染に勝ちたい。
 私はずっとコーンの強さに惹かれていて、その強さを越えていきたいと思っていた。