列車組の中でも非戦闘員の私が外へ出ることは殆どない。
他のみんなは自分の身を守る術は持っているし、仲間の危機でも助けになれるだろう。だけど私にはそのような力はない。列車に乗ることになったのは単にとある星で行き倒れていたからだ。記憶がないわけでもないけれど、理由があって帰れない私をこのままにしておけないからと列車に乗せてくれた。
だから私はいつも留守番だった。寂しくないと言えば嘘になるけれど、戦えない私ではみんなの足を引っ張ってしまうし、敵対する勢力がいたときに私という非戦闘員の存在がみんなの弱点になってしまうのは嫌だったから仕方ないことだと納得している。帰ってきたみんなが外の世界の話を聞かせてくれるし、これはこれで充実した日々を過ごせているとも思う。
そんなある日、列車に見知らぬ顔が増えた。
時折穹くんたちが外の世界で知り合ったという人がやってくることはあるけれど、どうやらそれとは違うらしい。私も拾われた身だし、何らかの事情で列車に身を寄せる人は偶にいる。今回もそういう事情なのだろうと理解するのに時間はかからなかった。
側頭部に天使のような羽の生えた美しい人。サンデー。それが彼の名前だった。
「穹くんとなのかちゃんから話は聞きました」
元々はオーク家の当主だった人で、ピノコニーで起こった……詳しいことは説明されても理解しきれていないけれど大きな事件の黒幕とされている人だと。
本来であれば全ての責任を負わされ、裁判を待つ身であった彼は自由を得てピノコニーを旅立つことになったのだという。逃亡犯、という立場ではあるらしいけれどそれは私も似たようなものだ。
「ナマエさん、でしたか」
「はい」
「ワタシのことを警戒しないのですね。正直、事情を知っているのならもっと警戒されるものと思っていました」
「ヨウおじちゃんが連れてきて穹くんたちがサンデーさんのことを受け入れたのなら、少なくとも私に警戒する理由はありません。ここに来るよりも前のサンデーさんのことを私は人伝にしか知りませんし」
ヨウおじちゃんの人を見る目は確かだと思うし、彼が「今のサンデーさんは此方を害するようなことはない」と判断したのだから私が警戒する理由はない。
もし私がピノコニーでの騒動を直接見ていたらまた違う感情も芽生えたのかもしれないけれど、サンデーさんと戦った穹くんたちが彼を許し受け入れているのに私が心を許さないのもおかしな話だ。
「星穹列車は訳ありの人も珍しくはないし……私も似たような境遇ですから」
「……似たような?」
「まあ、はい。別に悪いことしたわけではないんですけど……父と折り合いが悪くて、故郷を追放されたんですよね」
母は幼い頃に亡くなってしまったし、私の味方をしてくれる親戚はいなかった。父は故郷の権力者だったから彼の一存で私は呆気なく故郷の土を踏むことすら許されない立場になった。私の命があることすら許せなかったらしい父は追っ手を差し向けたこともあったけれど、何とか振り切って逃げている最中、力尽きて倒れていたところを星穹列車に拾われることになる。
罪を犯したわけではない。何らかの責任……はもしかしたら私が知らないだけであるのかもしれないけれど、少なくとも命を狙われるほどのことはしていない。それでも誰かから逃げる立場、というのはサンデーさんと同じだ。
「サンデーさんのこれからの旅路がよいものでありますように」
戦えない私に出来ることは、みんなの無事を祈ること。そして彼らの旅路が穏やかで暖かなものであるようにと願うことだけだった。