1 「会長、明日はポッキーの日です!! ポッキーゲームしましょう!!」 「……それは、早食いとかそういう類のゲームかな?」 会長がポッキーゲームを知らない、という可能性を考えていなかった私。 思わず背景が宇宙になりそうなのを堪えて、ペンを取る。 ささっとラフ画に近いけど、ポッキーゲームを図説して見せてみた。 もちろん、イチから最後まで!! 「というわけで、キスまででワンセットのゲームなのです!!」 「……そうか、うん、わかった」 「照れてますか?」 「うるさい……!!」 ――――――――――――― 「ポッキーゲーム!! 会長!!」 「なまえ、前から思ってたけど部活動は!? 生徒会室に来すぎなんじゃないかい!?」 「我らが空座一高漫研は、締切に原稿さえ出せば幽霊も可の素敵な部活なのです!!」 「なんか今、生徒会長として聞き逃せない言葉が……」 「我が部の話より、ポッキーゲームです!!」 手には、準備済みのポッキー。 会長のご尊顔、間近で見させて頂きますよ!! 「断る」 「いつになく断言!!」 「ポッキーがもったいない」 「会長がチョコのほうから食べても良いですよ?」 「そうじゃない……というか、そこまで拘る必要あるのかい?」 「もちろん!!」 会長のご尊顔を間近で拝見、からのキス!! 以外に何があるのだ!! ……とはさすがに言えないので。 「顔、近くで見たいじゃないですか!!」 よし、嘘じゃないけど本音じゃない、ギリギリラインを攻めた。 「別に顔くらい自由に見れば良いのに。ポッキーの必要性がわからない」 そっちこそわかってないな会長!! ポッキーゲームのハラハラ感が大切なのに!! 「会長ーお願いしますよー」 「……仕方ないな」 お、折れた!! なんと会長が折れた……!! しかもポッキー自分からとってくれるとか、どんなサービスですか。 あれ、私幸せすぎて近々死ぬのかな? 「ありがとうございます会長!!」 みょうじなまえ、我が生涯に一片の悔いなし。 精一杯の感謝として、チョコは会長の方に。 「それ、では……」 静かな生徒会室に、ポッキーをかじる音だけが響く。 今さらながらの自覚だけど、二人きりだし、ほぼ密室だし、雰囲気がありすぎるんじゃないかな? 会長のレンズ越しの瞳が、私を窺ってくる。 これは、こっちからギブアップしたくなってきた。 あんまりにも、良い意味で心臓に悪い。 「……まだ?」 「ふぁい?」 無理だポッキー折ろう、と思った瞬間、会長からのまさかの御言葉。 「もう十分近いかと」 「キスまでセットなんだろう?ほら」 ……待ってください会長。なんかさっきまでとキャラ違いませんか。 「昨日なまえが親切に説明してくれただろう?有言実行」 「会、長―……?」 「なまえがしないなら、僕からしようか?」 幻聴でしょうか。 会長、貴方そんなにS寄りの方でしたか。 肩はがっちり押さえられて、ついでに頭の後ろも。 距離は限りなく、ゼロに近い。 「ほら」 会長の瞳がわずかに細まって、何ですかこれ、心拍数がおかしくなる。 萌え、とか叫ぶ余裕なし。これは。 「ギブアップです会長!!」 「嫌だ」 いたずらっぽい声がして、とうとう距離、ゼロ。 本格的に、明日あたり私死ぬ。 「まだあるよね」 ああ、そういえば、ポッキーを箱丸ごと持ってきてましたね、私ってば。 「会長!! あの、無理しなくて大丈夫ですよ!?」 「なまえこそ、あんなにしたがってたのに、1回だけで良いの?」 言い回し!! 言い回し!! 絶対無自覚なのでタチが悪い!! 思わずもにゃもにゃさせていた口に、含まされた2本目。 「顔、見せてね?」 漫研の皆様。 我らがアイドル会長様は、意外にSでした。 ポッキー与えるべからず。 与えたが最後、萌え殺されます。 |