雷雨の部屋

天候を司る神、殺す。
喜助さんと午後からお出かけの予定だったんだよ、晴れるように昨夜祈ったでしょ、誰が最近はやりのゲリラ豪雨降らせろって言った!?


「こらこら、眉間に皺が寄ってますよなまえサン」


人差し指で、額をつつかれた。


「可愛いお顔が台無しっスよ」
「喜助さーーん……」
「よしよし、また別の日がありますって。今日は家で過ごしましょ」
「うん……」


喜助さんの腕の中で、ぼんやり窓の外を眺める。
といっても、雨がすごすぎてほぼ水滴しか見えないけど。


「お店は大丈夫だった?」
「ええ、物損はなし。今日はもう店じまいっスけどね」


私の頭に顎を乗せて、同じく外を眺める喜助さん。


「現世も最近変っスねぇ……異常気象っていうんでしたかこういうの」


物憂げな呟きが、雷鳴と共に耳に入った。
商店が少し揺れる程度の雷、無意識に喜助さんの羽織を掴む。


「……停電とかしなきゃいいんスけど」


頭を撫でる喜助さんの手が心地よくて、ついつい笑みがこぼれた。
どうせ家の中で誰も見てないし、今日くらいは思いっきり甘えようか。
くるりと半回転して、真正面から喜助さんに抱きついた。


「どうしたんスかなまえサン? そんなに雷が怖かったんで?」


茶化すように言いながら、喜助さんが私を抱きしめ返す。
開いた胸元が眼前にあって、少し気恥ずかしい。


「ホント言うと、アタシもデートが中止になったのは残念っスけど、こういうのも悪くないっスね」


前髪をそっとはらわれて、額にキスをひとつ落とされる。
瞼、頬、と下がって、最後は唇。


「外でこんなことしたら、なまえサン怒るでしょう?」


吊り上がる唇に、キスをお返し。
そうするとますますニヤニヤが深まって、潰れそうなくらいに抱き寄せられた。


「やっぱりカワイイっスねぇ……なまえサンってば」


間近に聞こえる心音に、こっちまで鼓動が速くなる。


「改めて好きだなって思うんスよね、こうしてくっついてると」
「き、喜助さんのバカ……」


顔の熱が、この距離じゃ隠せない。伝わってるに決まってる。
その事実でまた赤くなって、しばらく胸元に沈んだままでいた。

雷雨の部屋
ほんとに停電したら、見えなくなるかな。


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