明石国行と歴史の話 歴史を変えたいと思ったことは、ないんですか。 微睡んでいた思考を叩き起こすような、主はんの不意の質問。 あの海に蛍が沈む運命を、変えられるとしたら。 少し前――というか、顕現されたばかりの自分なら、躊躇なく歴史をねじ曲げた。 けどこうして人の身体を得て、 戦以外のいろんなことして、 自分で考えられるようになって、心を得て。 人の考えは、あっさりと変わることを知って。 今ここにおる蛍を、なるだけ大事にできたら、 それでええ、それがええ、と思てます。 そう主はんに言ってみれば、意外そうな声が上がった。 なんや、自分に向こう側についてほしかったんですか。 意地悪に問うと、慌てた否定の声が降ってくる。 歴史を変えれば蛍は助けられても、 主はんの所で、蛍や国俊や他の刀、 それから主はんと過ごしてきた時間も、 これから過ごす時間も、 きっとなかったことになるんやろう。 不思議とそれを、寂しいと感じる自分がおるんです。 刀やった頃には知らんかった、 陽射しやら人の体温やらのぬくさも、 いまさら手放すのは惜しいし。 まあでも、少しも思うところがないって言うたら嘘になります。 さっき言うたように、人の考えは変わるもんですから。 自分が心変わりせんように、せいぜい繋ぎ止めといてください。 主はんの、ぬくい手で。 |