声は途切れて その一太刀を受けた瞬間、終わった、と思った。 あの日の"俺"と同じように、手にした刀が砕ける。 刀剣破壊という言葉は、主から聞いて知っていた。 要するに、人間で言うところの"死"らしい。 今までこの本丸で破壊された奴は、ただの一振もいない。 俺が、最初。 刀が折られるとすぐに消えるものかと思っていたけれど、それは見込み違いだったようで、まだ俺の心臓は動いてる。 敵は既に、前田が倒した。 だったら、俺のやることはひとつだ。 「…す、さ」 潰された喉で、相棒を呼ぶ。 「っ、」 「……わかってる」 安定も満身創痍ながら、俺の腕をとって自分の肩にかける。 半分欠けた視界では横顔が見えなくて、今こいつがどんな表情をしてるのかはわからなかった。 「帰ろう、主の所へ」 わずかに震えた声で、安定が言う。 なにお前、泣いてるの? 首をひねって顔をのぞきこんでやりたいけど、動かない。 「行くぞ」 既に部隊の誰かが繋いだ転移門を、くぐり抜ける。 転移した庭先にはもう、主が待っていた。 顔色が、紙みたいに真っ白だ。 女の子に見せるには、傷が酷すぎたかな。 主が俺達に1歩近づくと同時に、安定の膝が崩れた。 すかさず鳴狐が支えたけど、俺までは支えきれなかったようで、ただでさえ片足を無くして揺らいでいた体が、傾く。 それを止めたのは、主だった。 正面から抱きつくように腰に回された腕は、 重さに耐えきれずに震えていて、細い脚は立つことさえもできず砂利の上にへたりこむ。 真っ白い服に、俺が触れている場所から血が染み込んでいく。 頭を撫でたくても、右腕は動かない、左腕は飛ばされた。 しばらく何も言わずに、荒い息を吐いていた唇が、俺の名前の形に動く。 「清光、お帰り」 その言葉だけを聞きたくて、帰ってきた。 もう、返事はできないけれど。 主が、ひとつしゃくりあげて、俺の目を見る。 しっかり映るように、潰されていないほうの目を。 「よく頑張ったね、ほんとうに、頑張ったね」 主の泣き顔なんて、いつ以来だろう。 そうだ、俺が初陣で酷い目に遭ったあの日。 主が、真っ直ぐに俺を選んでくれたあの日から。 仲間が増えても、主が他の刀を捜そうとしていても。 俺の一番は、ずっと主だった。 主、あなたの一番は、誰だったのかな。 「きよみつ、大好きだよ」 絞り出すように、主が言う。 「大好き、愛してるよ、ねぇ、愛してるから、」 その先には、何を言おうとしたのか。 主が下唇を噛んで黙ってしまったから、わからない。 俺も、大好き、愛してる。 口の中には鉄の味が広がるばかりで、やっぱり言葉は紡げない。 こうやって全身埋め尽くされて、俺は鉄に還るのかな、なんて。 場合でもないのに、笑いが込み上げてきた。 苦しさが、消えていく。 主の腕の感触も、消えていく。 最期に残るのは、名前を呼び続けて、愛してると言い続ける声。 それも、次第に聞き取れなくなっていく。 でも、不思議と平気だ。この上なく、幸せにすら思える。 だって俺、最期まで愛されてた。 ────── タイトルは診断メーカーより。 |