Brautkleid

君には、どんな色が似合うだろうか。
いつも身に付けている黒ももちろん悪くないけれど、他の色を。
例えば、赤はどうだろう? きっと、華やかに君を彩ってくれる。
青も、君の凛々しさを引き立ててくれそうだ。


「雨竜、何考えてるの?」
「君に贈る服の色だよ」


夕日に照らされる君の影が、僕の顔にも影を落とす。
そこだけ世界から切り取られたように、輪郭が逆光で淡く光っている。
そうだ、黄色や橙色なんかも良いかもしれない。
明るくて、眩しい君にはぴったりだ。

君を見ているだけで、次々にイメージが浮かびあがって、まったくアイデアがまとまらない。
いっそ、何着も作ってしまおうか?
いや、それではきっと、君の邪魔になるだけだ。


「ぼーっとしてるね」


眼前で、ひらひらと手が振られる。
黒の中で浮き立つ、細い腕。
そうだ、君に贈るなら、この色が一番じゃないか。


「雨竜……? 急になんか、パアッとした顔になった」
「ごめんね、ようやく考えがまとまったから、つい」
「そうなの?
楽しそうな雨竜を見てるのは好きだから、別にいいんだけど」


そう言って君は、少し困ったように笑ったっけ。

さて、どうして僕が突然高校時代のことを思い出しているかといえば、今目の前に、その色に包まれた君がいるからで。
シンプルながらも繊細な細工を施された服は、僕があげたワンピースになんとなく似ている、ような。


「あれ、もう仕度終わったの?」


振り返った勢いで、複雑に編み込まれた髪が揺れた。
薄いメイクが、元からの魅力をさらに引き出している。
薄紅色の頬も、爛々と輝く瞳も、僕をどこまでも魅了してやまない。
綺麗だ。君といられて、僕は本当に幸せ者だ。


「わ、格好いいね、雨竜」
「君、こそ」


胸がいっぱいで、言葉が繋がらない。
手袋をした手を取って、額に押し抱く。


「本当に、君には白がよく似合う」


君のすべてを作る色。
清廉で高潔な心を表した色。
すべての光の色を混ぜた色。
これから、どんな未来にも染まる色。


「花嫁衣装の白って、"あなた色に染まります"って意味があるんだって。
でも、白は雨竜の色でしょ?」


だからもう自分は僕のものなんだと、言外に含まれた意味に、思わず口元が緩む。
同じように緩んでいる君の唇を、今すぐ奪ってやりたくなるけれど、それはまた後だ。


「今日からもよろしくね───石田なまえさん」


Brautkleid
僕らの未来に染まる色を

[戻る] / [Top]