m連勤目に二度目の邂逅

何連勤目だったっけなこれ。
この前の給与明細、残業代も超過勤務手当もなかったな。
そんな気はしていたけど。

また立っていられなくなって、この前と同じ脇道に座り込む。
そうしたら、聞き覚えのある金属音がした。

「何処の酔っ払いかと思ったら、またアンタか」

この前の、ガラの悪い人だ。
あの後、落ち着くまで私の様子を見ていてくれたから、
悪いのはガラだけだって知っている。

「おいおい、今日一段と顔色悪ィぞ」

頭が痛んでたまらなくて、上半身が前に傾く。
もたれかかってしまったのが申し訳ないのに、額に触れた革ジャケットの冷たさが心地よくて、離れるに離れられない。

帰らないと。
明日も仕事だし、少しでも体を休めないと。
今すぐ帰っても4時間くらいしか寝られないけど、寝ないよりマシ。
でも、脚に力が入らない。

「アンタ、ひとりで帰れねぇだろ」
「けど、かえらないと、」
「その返事の時点で駄目じゃねぇか」

呆れたような声と同時に、目の前の人がスマホを取り出す。

「救急車とタクシー、どっちがいい」
「……タクシー」
「本当かよ……」

瞼が重くなってくるのに、必死に抗う。
せめて住所は伝えてから気絶しないと、いやそもそもこの人に住所教えて大丈夫かな。
こんな道端で寝落ちしかけているほぼ不審者に、二回も声をかけてくれるんだから、たぶん信用していい人なんだけど。
10分くらいで近くにタクシーが来てくれるらしいことを聞きながら、思考がまとまらなくなっていく。

「寝てもいいが、先に住所教えろ。
勝手に荷物とか探られたくねぇだろ」
「え、と……」

怪しくなってきた呂律で伝えた住所が、無事復唱されるのを聞きながら、瞼を閉じる。

「あ、待て、一応聞くが家の鍵どこだ?」
「かばん、の、ぽけっと、」


*******************

「鞄のポケットってどれだよ……!!」

結局荷物を探る破目になって、目当ての物を見つけたと思ったら、どこか別の場所の鍵だったらしい。
このまま扉を開けられないのでは、送り届けてやった意味がまるで無い。
家主はと言えば、何度か声を掛けたのに、すっかり眠り込んだまま。
瞼が動く気配すら見せず、寝息を立てている姿を横目に、他のポケットの中を順に確認していく。
機能性が売りの鞄なのかなんなのか、やたらと数が多い。
六つ目でようやく出てきた鍵を鍵穴に差し込むと、開錠音が鳴る。

「おい起きろ、鍵も開けてやったから、」
「……んん、」

眉間の皺が深くなったのを見て、言葉を止める。
起こしてやるのも可哀想な気がして、仕方なく、ぐったりした体を抱え上げた。
……これ本当に、救急車じゃなくて良かったんだろうな?

狭い玄関で靴を脱がせてやって、部屋の中に踏み入る。
必要最低限の物が置かれた、生活感皆無の雰囲気。
この部屋は寝に帰るだけの場所になっているらしいことを、容易に推測できてしまう。

流石に服は脱がせる訳にも行かず、なるべく皺を作らないよう気をつけながら、抱えていた体を寝台ベッドに転がした。
季節と合わない厚さの掛け布団を一応掛けてやって、一旦息をつく。

さて、どうしてやったもんだろうか、これから。

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