「へぇ、そっちにもボクがいるんだ」
「ええ、はじめちゃんは斎藤さんに作ったような気さくさを混ぜた感じの胡散臭い人ですね」
「いや、はじめちゃんも斎藤さんもどっちも斎藤一でしょ」
ここ、小特異点の美術館に呼ばれてからボクに任された仕事は、聖杯の警護。
聖杯を守ってれば何かしらのバフがもらえる側にいるわけですが、、
「斎藤さんはシリアスな部分が多めです」
昼間にのこのこやってきたこの非戦闘員の魔術師っぽい女をどうしようか…。
とりあえず捕まえておけと指示があったから捕まえておいたけど、なーんでボクが子守りしなきゃなんないわけ?手とかさ、縛られてんのにやけに堂々としてるし。
「さいですか…じゃあ、真面目な話。仲間は?」
「多い方ですよ。仕事仲間ですが、楽しくやらせてもらってます。」
「あのねぇ、カウンセラーやってる訳じゃないの、ボク」
「斎藤さんはカウンセラーより詐欺師の方が…いや、胡散臭いからやっぱ向いてないですね」
これ、こんな調子でのらりくらりと質問をかわして話が進まないったらなんの…。
「あんたさ、自分の立場わかってんの?」
「首を落とされる立場ですね」
こいつ、わかっててこんな落ち着いてるとか、狂気Aくらいいってんじゃねぇの?表情も変わらない。つまらないカラクリみたいな女。
「あんたってさ、いつもそうなの?」
「いえ、斎藤さんがつまらなそうなので」
「はあ?ボクがつまらなくてなんであんたがそうなるの?」
「合わせ鏡ですから」
狂気EXだわ。会話も難しくなってきた。つか、なんでこんな会話に付き合ってんだ…。殺っちゃう?なんで、殺ってないんだ?
「はじめちゃん」
出会い頭にそう呼ばれたのが、頭に残ってる。表情だって今みたいなお面じゃなくて、あの表情は…。
「君さ、ボクの事が好きなの?」
「あなた…バーサーカーだったんですか?」
「あんたに言われたくないな…ボクじゃなくて、はじめちゃんの方」
向こうの仲間にボクがいるらしいし、あの表情はそういう顔だった。ボクがはじめちゃんって呼ばせてるくらいだし、そのくらいの仲にはなっててもおかしくない。
「好きですよ」
「……へぇ、じゃあ」
「恋愛感情はありませんが」
「…あっそ」
あーくそ…なんで言葉が詰まってんだよ。
「はじめちゃんと同じ顔のボクに殺される気分ってどんなもん?…いや、あんたが好きなのははじめちゃんだから嫌いな奴に殺されても…」
「嫌いじゃないです」
「は?」
「私は斎藤さんの事、嫌いじゃないです」
「何それ、同じ顔だから?」
「斎藤さんは斎藤一(悪多め)で、はじめちゃんは斎藤一(胡散臭い)…そこまで変わりはありませんですし、どちらも斎藤一さんの一面、同じ斎藤一さんですから」
ホントにこの子、頭大丈夫か?言ってる事、支離滅裂過ぎるでしょ。意味わからないせいかボクの心も着いていけてない。
もやもやする。同じ斎藤一っつてんのにさ…
「…あんた、呼び方変えてんじゃん」
「同じ呼び方はされたくなさそうだったので」
ボクが?いや、まあ…ボクからしたら初対面だったし、そういう顔をしたかもしれない。つか、関係ないだろ、この話。
「あー、ストレス溜まる」
「サラリーマンみたいですね、お疲れ様です」
「…どうしたら、言うこと聞くわけ?」
「斎藤さんが私を職場まで帰してくれたらですかね」
「………」
ストレスも溜まって、気持ちも最悪。手でも出すか?…ああ、そうだな、この方法はまだ試してなかった。
机を挟んで椅子に座る女の顎に手を置く。覗き込むボクの視線と合わせる様に上を向けて顔を近づけた。
「じゃあさ、ボクのストレス発散くらいにはなってよね。ここ丁度、ベッドあるし」
「………溜めさせるのも私なので、意味、が…」
バッと横に向けて顔を隠したかと思うと、だんだん小さくなる声。文句を言ってやろうかと傾けた顔を追いかける。
へぇ、いい顔すんじゃん
「なんて?声、ちっちゃくて聞こえないんだけど?」
「近い。私はそういうストレス発散方法は試したことがないので役には立たないかと」
「大丈夫大丈夫。君は寝転がってればいいんだよ」
話し方は元に戻ったけど、未だに赤らむ顔を見ると優越感で満たされる。足も縛られている彼女を担いで騒ぐのも無視してベッドの上に転がす。
「何?こういうの死ぬより嫌なの?」
「………」
「ほら、答えろよ」
「………」
「…っち、こっち向けよ」
横を向いて布団に顔を埋める。あんなにベラベラ口を開いてたくせに、ここで黙りを決め込むのにイラつく。肩を掴んでベッドに押し付けると隠れていた彼女の顔が見えた。
「はぁ、さっきまでの威勢は何だったの」
「………」
「嫌ならさ、仲間の居場所とか数とか教えない?」
「…わからない」
「なんでさ」
「……場所、決める前に捕まり、ましたから…」
「なるほど、ここに来て日は浅いのね」
形勢逆転。ちゃんと答えるし、しおらしくなっちゃって…かわ………いやいや、何言ってんのボク。
先程の態度や表情と随分変わって、赤い頬に眉は下がってて、目は潤んで涙が今にも零れそうで、それが、誘っている様に見える。
「しょうがないよね、さっきまで生意気言ってたのはそっちだし、痛い目みないと…」
「っは、はじめちゃん!」
「……」
「…や、だ…」
衣服の隙間からスルリと手を入れると先程より高い声を出す。そんなに震えた声出されてもさ、逆効果なんだよねぇ。
「名前、何て言うの?」
「……」
「詮索とかじゃなくて、呼びたいから聞いてんだけど」
「…名前」
「名前ちゃんね、なんでボクが止めるとおもってんの?敵だよ、ボク。名前ちゃんが言ってた様に悪多めの」
もう、止める気はない。
「君も気持ちよくて、ボクもストレス発散出来てハッピーじゃん」
「……」
「じゃあ、大人しくしててねぇ」
上に着ていた服を捲し上げて、胸を掴む。大人しくなった彼女がどんな顔をしてるのか気になって見ると、
「……っひ、う…」
「………あー、もう、そんなに泣くなよ」
号泣してた。ぎゅっと瞑っているはずの目からは次々と涙が溢れ出てきていて、こちらを見ようとはしない。
体を起こして、ボクと向き合う様に座らせる。
「そんなに泣かれたらさすがに萎えるんですけど」
「……、ひっく…」
「めんどく…」
ボクの口が止まる。
名前が、ボクの胸に頭を預けてきたから。
「…はじ、め、ちゃん…」
「………」
「はじめちゃん…」
「…なんだよ」
「はじめちゃん、やだ…」
「………」
名前がどっちのボクを呼んでるかがわからない。だけど、今はボクを呼んでるみたいで、ボクが襲ってるのにボクに助けを求めてるみたいで、言葉を遮れなかった。
「名前…」
涙を拭って、顎に手を添える。頭一個分違うボクと目線を合わせる為に上を向かせて、キスを落とす。
「今日はこれで我慢してあげる」
ゆっくりと彼女をベッドに押し倒して、ベッドから腰をあげる。ボクが部屋から出ていくまで名前は何も言ってこなかった。
暫く廊下を歩いているともう1人の護衛がやってきた。
「随分と甘ちゃんしてんじゃねーか」
「監視カメラで見てたの?趣味悪いねぇ」
「お前だってキモいことしてんじゃん。いや、お前の方がキモい」
「何言ってんの、女落とすには駆け引きが必要なんだよ。落とせたらこっちのもんだし」
「ああ、そうかよ」
仲良くよろしくやってろ。と言うとまた姿を消す。
ストレス発散も出来てないのに心のもやは少しだけ晴れている。あの子の出会った時の表情と、泣いている顔が忘れられない。その事がボクの新しい悩みで、また、彼女の顔を見に行くんだろう。
どうしたもんかな。
この時は彼女がここにいる限り、毎日の様にこの牢屋に通うことになるとは考えもしなかった。
あなたは
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