我ながら、勝ち組の人生を歩んでいることは承知である。
18で高校を卒業してから就職して、着々と昇級していた私は入社してほんの1年で店の長。更にその翌年には本店営業に移り、順風満帆な社会人ライフを送っていた。
思い返せば、あることを除けば生まれてから学生時代までを振り返ると大きな困難が迫ったことなんて一度ないしミラクルとしか言いようの無い位、人生ヌルゲーだ。
だから、なのかもしれない。
「今日はレイニーデイ。お前も嫌いじゃ無いぜ…」
自分とは全く別のルートを歩む人になぜか寄り添いたくなるのは。
言わせてもらうなら、
ー廻りだした、人生の歯車。
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道端で懐かしい匂いを漂わせる男に目を付けられた。というより、穴が開くんじゃないかっていうほど見つめられたと思いきや、時折謎の単語を発している。彼はなんだ。新種のモンスターか。
いよいよもって気味が悪くなった私は、ほんの休憩だと座っていたベンチから腰をあげる。10m程離れた木に持たれていた彼はそれと同時に動き出す。が、そんなのは気にも止めずに歩きだした。あんな人初めて見た。
変なもん見たな、とクスリと笑えば、丁度視界に映った彼は先ほど私が座っていたベンチのど真ん中に腰をかけていた。
目があうと思い切り逸らされてしまう。
ブブブ、と震えるスマホにそろそろ仕事に戻るか、と再び踵を返し会社に着いた頃にはあの男のことなど頭に残ってなどいなかった。