タロウには悩みがあった。その悩みは他の人が聞けば「そんなしょーもないことで?」と一笑されるかもしれないが、本人にとっては至極真面目な悩みであった。
他の兄弟たちに以前相談した事はあるが、各々が予想通りの反応しか返してくれずタロウは落胆するしかなかった。もっと、別の答えを期待していたのに。自分の時期でしたるメビウスはともかく、あのヒカリまでもが同じ意見だったのは正直落ち込んだ。
皆が皆、口を揃えてこう言うのだ。
「小さくて童顔なのは可愛いから別にいいんじゃないか?」
と。
そして一番の悩み所は・・・
「・・・いつの間にかお前の息子に身長を抜かれたな。だが、気にするな。今更だと思うが、タロウ。元々お前は生まれつき成長が緩やかだったのだ。多分、おそらくだが」
「メフィラスさん。ひょっとして僕を励まそうとしてくれます?」
「父親としては気になるんだろうが、だからと言ってお前の強さと威厳は変わらないだろう。超闘士として戦う姿はまさに鬼神そのものだ」
「あ、ありがとうございます・・・そう言ってくれるのはもちろん嬉しいのですが・・・」
腕組みしながらしみじみと熱弁する偉大な師匠の言葉がささくれた心に染み渡る。だのに我ながら何と小さな事で悩んでいるのだろう。タロウは自分が情けなくなった。同時に、何の罪もない自分の息子ーータイガを脳裏に思い浮かべる。
爽やかな年相応の笑顔を浮かべた愛息子を。
そして自分と並び立った際に、よくタイガが「父さん、抱っこします!」などと嬉しそうに言って父親の自分を抱っこする光景を。
「何で僕は身長が伸びないんだよぉぉぉぉーーー!!??」
「分からん」
魂の絶叫に、師匠の言葉は酷く淡白なものであった。
⭐️ ⭐️ ⭐️
「・・・タロウさんが身長で悩んでいるって?そりゃ本人がそう思って言ってんのカイ?」
「そうなんだよフーマ。父さんはどうも俺と並ぶのに抵抗があるみたいでさ。俺は別に気にしていないんだけど」
「私はタロウ殿の気持ちが少し分かる気がするなぁ。父親としては息子よりもカッコよくありたいものだ。周囲は言わないが、それが却って身長のことを気にされている・・・と思い悩んでおられるのだろう」
賢人でもなり闘士であるタイタスは何やらしみじみとした顔で頷いている。
忍者闘士フーマも似たような表情で、どこか同情を込めた目で遠い空を見上げていた。そんな2人にタイガは得心がいかないと言わんばかりに詰め寄る。
「でも父さんは俺に『気にするな。タイガはタイガのままでいい』と言ってくれたんだぜ。俺はそんな優しくて立派な超闘士の父さんを心から尊敬しているんだ。」
「そりゃ息子にはそう言うだろ」
「うむ。タロウ殿ならそう言うだろうな」
ピシャリと断言する2人に、タイガはえっと面食らう。そんなタイガの容姿をフーマとタイタスは改めて観察した。スラリと長い手足。端正な顔立ちを更に引き立たせる立派なウルトラホーンはさすが一族の血を引いているだけはあると感嘆させる。光の国一の有力者である家に生まれたタイガは、この世に誕生してから全てが祝福されている、としか思えぬほどのサラブレッドだ。確かトレギアもそう酔ったように語っていたが、改めて見るとそうとしか思えなるから不思議だ。
だからと言って、フーマとタイタスは畏怖の念を抱いて距離を取ろうとは思わない。幼い頃からの親友であるし、特別扱いをする気もない。しなくていいとウルトラの父と母から頼まれているのだ。良くも悪くも、タイガをあの【超闘士タロウの息子】だと色眼鏡で近づいて来る者は絶えない。誠に遺憾ではなるのだが。
そして、当の父親は自分の息子との身長差に悩んでいる。
(なんつーか、まぁ・・・言っちゃあ悪いが平和な悩みだよなぁ旦那?)
(だな。本人の前ではとても言えないが、この親子はそれはそれで似合いの親子だと思うのだ。身長などどうでもいい。タイガにとってタロウ殿は越えるべき目標なのは変わらない)
(確かに。後さ、これタイガに言ったら怒るかもしれねーんだけど)
(何だ?)
(ダイガってさ、よくタロウさんを抱っこするじゃないか。・・・俺、正直あの親子が並ぶのを見てると何つーかこう・・・・・癒されるんだけど。俺って変か?)
(・・・いや変じゃないぞ。何なら私もだ)
(旦那もか)
(うまく言語化できないがこう・・・猫の親子を見ているような心境になる)
(同志がいた!)
(それに他のウルトラ兄弟も似たような顔をいつもしているぞ)
(マジか。今度俺見てみるわ)
(ああ是非とも見てくれ。私はそれすら楽しみになっている)
(・・・絶対に本人の前じゃ言えねぇなこれ)
結論など出ないが、結局はこれからもこの親子は変わらないのだろう。尚もうんうん唸るタイガをフーマとタイタスは癒しの猫動画を見るかのような、何とも言えない表情で眺めていた。
光の国は今日も平和である。
(終わり)