そういう事だ
「がーあーらーくーん」
「…」
あー今日も可愛いねえ!なんて、こいつはいつも暇を見つけては風影の執務室に来て机に向かい座って公務をこなす俺の頭を後ろから撫で回す。
俺はそんなに暇じゃないんだが。
それでも拒否するなんて事は無く、いつもこいつにされるがまま。
嫌がろうと思えば嫌がる事はできる。だが俺はそれをしようとしないだけ。
理由は単純なもの。
俺は、こいつ、名前の事を特別に想っているからだ。
「我愛羅君は毎日忙しいねえ!よしよ〜し!」
「名前、いつまで俺を子供扱いするつもりなんだ」
「え?!子供扱いなんてしてないよ?!愛でてるだけ〜!」
ニコニコと、ナルトと同じ様な笑顔を俺に向け頭を撫でながらそんな事を言ってくるが、俺からすればその行為自体が、子供の様に扱われていると思ってしまう。
幼い頃から面識があり、同じ年だが妙に大人びていて、いつどんな時でも俺にこうして構ってくる名前に、いつしか恋心を抱いていた。
それからしばらく、こうして風影になった頃、名前にもっと自分を一人の男として見て欲しいと思う様になり、いつだったか、お前の事が好きだと伝えた事がある。
だが結局、私も好きだよ!友達でしょ?なんて、見事に俺の想いは伝わらなかった。
「ねね、そういえばさ、この前お見合いしたんでしょ?どうだった?いい人だった?」
「…上役に無理やり縁談を持ち込まれただけだ。丁重に断った。相手側も無理やり見合いさせられていた様だったしな」
「なーんだ、早く我愛羅君の子供見たいのにな〜絶対可愛いのにな〜。あ、子供産まれたら撫でさせてね!」
「…」
縁談の話など、どこから情報を得ているのか。そこまで数は多く無いが何度か行った見合いの後は必ず結果を聞いてくる。
そんな話、名前の口からは聞きたく無いのだが、どうしてもこいつは空気が読めない。
俺が眉間に皺を寄せても、お気に召さなかったのね、など俺が考えている事とはお門違いな発言をしてくるのだ。
一度ならず何度もこいつに想いは伝えた。伝えても伝えても、少しの反応も見せないこいつ。
俺の言い方が悪いのか。だが好きだという言葉以外の伝え方が分からない。男が女に好きだと言えば想いは伝わると思っていたからだ。
それとも本当は俺の想いを分かっていて、わざと避ける様な、分からないフリをしているんじゃないか。
もしそうなら、なぜ嫌だとはっきり言わないのか。
お前がはっきり言ってくれないおかげで、俺は諦める事ができず停滞したままなんだ。
「…名前、本当は分かっているんじゃないのか」
「ん?何が?」
「嫌なら言ってくれ。お前がはっきり言ってくれないと…俺は、」
「だから何がよ〜」
どうしちゃったのよ我愛羅君、と、後ろから頭を撫でて来ていた名前が、俺の持っているペンを奪い取り机の上に山積みになっている書類の上へと置いた。
なにをする、とペンの行方を目線で追うとその先には少し不機嫌そうな顔をしている名前と目が合った。
なぜそんな顔をするんだ。
不機嫌になりたいのは俺の方だ。
お前の所為で、俺は公務が捗らない。
お前の所為で、俺は守鶴を抜かれた後でも眠れない。
お前の所為で、俺は前へ進めない。
「俺は…、お前の事が好きだと、何度も何度も…言っているのに」
「うん、だから私も好きだって返事してるよ?大切な友達なんだから当たり前でしょ?」
ほらまた、お前は友達だから好きだと言う。
俺が言いたいのはそう言う事では無い。どうしてそれを分かってくれない。
「なぜ、…なぜなん、だ!」
「!?、ちょっ…我愛羅く、ん」
ガタン、と音を立てて座っていた椅子を倒して立ち上がり真横から俺の顔を覗く様に見ていた名前の上半身を今まで向かっていた机に組み敷いた。
お前の友達思いにはうんざりだ。
「…なに、どしたの。ペン奪った事怒ってるの?それとも何か、私、気に入らない事しちゃった?」
「っ、……」
「ね、言ってくれなきゃ分かんないよ。ほらそんな眉間に皺寄せてたら可愛い顔が台無しだよ」
組み敷かれてもなお、悲鳴をあげる事も、抵抗する事も、怒る事もなく、いつも通りの名前のまま、困った様な笑顔を向けてくる。
このままお前を、無理やりにでも自分のものにしてやろうなんて、組み敷いた瞬間によぎった考えはその困った様な笑顔によって簡単に打ち消されてしまい、名前の腕を抑えつけていた両手の力が抜けた。
「……すまない」
「ん、いいんだよっ!っと、私もごめんね、ペンとっちゃってっ」
両手を解放してそのまま身体を起こして名前の両膝の間で立ち尽くし、口から出たのは謝罪の言葉。
すると名前は、やはりというか、ペンを奪った事に対して俺が怒っていると思っているらしい。
テヘ、とでも言いそうな表情をしながら、自由になった両手を後ろに着き少しだけ身体を起こして真っ直ぐ俺を見つめてくる。
やめてくれ、そんな表情でこっちを見ないでくれ。
折角おさまった無理矢理になんて感情がまた溢れそうになる。
そういう表情も、俺の足にちょんちょんと当ててくる膝も、全て愛おしく感じて、全部奪ってしまいたくなる。
「………愛おしく、そうか、」
「ん、なんだなんだ、?」
好きだと思い、それをそのまま何度も伝えていたが、それ自体が間違っていた事に今更気付く事になるとは。
俺の本当に伝えたかった想いは、
「俺は、お前を愛している」
そういう事だ。
おわり
谷丘さまリクで夢主ちゃんと関係を進めたい我愛羅君でした!
我愛羅君視点で書くとどうも暗くなってしまいましたが…
思ってたのと違う!って感じでしたらすみません…!
コメント、リクエストありがとうございました〜!