素直じゃない人
※少しセンシティブな内容により注意。
名前の産まれた国、日本列島という国は、世界でも類を見ない程の災害列島とボヤかれる程、よく大きな自然災害がくるらしい。
地震、津波、台風、大雨と、天災が訪れた時には住む場所が危険に晒され、避難する者達も多いと名前は言っていた。
その天災の中で、一、二を争う程に多い天災が、台風だという。
夏から秋にかけ毎年の様に飽きもせず日本列島を襲う台風は、小さい物から大きな物まで様々だったと言うが、名前自身、避難しなければならない程の大物に襲われた事はないらしい。
だが一人で住んでいた分、「台風の時は凄く怖かった」と言っていた。
それがこちらの世界に来てから、自然災害という言葉を忘れる程、平穏な日々だと笑っていた名前は、たった今、俺が仕事をしている執務室の端でしゃがみ込み震えている。
「うう、窓がガタガタガタガタ…こわいんですけど…」
これは最早大型の台風だよ…。
そう呟きながら、窓が風に煽られガタガタと大きな音を立てる度、声にならない叫び声を上げている。
砂漠特有の突飛な砂嵐は、俺からしてみればそんな事しょっちゅうだ。
名前が言う台風のように大なり小なり、風が砂を舞い上がらせる事など、もう慣れたものだ。
そもそも、力をつけた忍が世界を動かしているこの世の中で、砂嵐程度の天災など気にもならない。
人間の方がよっぽど脅威なのだ。
そう考えるとやはり名前の世界は、人為的な脅威に関してはとてつもなく平和なのだと、怖がっている名前を見て一人思う。
「もし石とか飛んできたら…!スナイパーが銃を撃つかの如く窓ガラスを突き破って最後には私の脳天を…!ひい!」
「…」
一体どんな想像をしているんだと言いたくなるが、特に俺の方へ寄ってくる訳でも無く、部屋の隅にいる名前をそのままにして公務に励む。
そんなに怖いなら俺を頼ればいいものを。だがそれをしてこないのは、さっき、大人のプライドが〜、とかなんとか言っていたからなのだろう。
今の名前の状態を見るとプライドも何もナイキがするのは俺だけなのかは分からないが。
外から聞こえる風が鳴る音と、名前の呟きを聞きながら書類に目を通していると、突然、部屋が真っ暗になった。
「ひ!!何?!停電?!」
一瞬、部屋が暗くなった事に驚いたが、すぐさま冷静になった俺へ届いたのは名前が叫んだ声。
部屋も明るく、すぐ近くに俺がいた状態でもあれほど怖がっていた名前は今、恐怖が頂点に達しているに違いないと感じた俺は、暗い!ヤダヤダ!と叫び続けている声がする方へと、目をこらしながら足を進めた。
「…名前、落ち着くんだ」
「わ!あ、が、我愛羅君…!」
少し目を瞑り、暗闇に自身の目を少しだけ慣らす。
そのおかげでうっすらとだが確認できた部屋の隅で震えている名前へ手を伸ばし、肩辺りに触れるとそれが跳ねた。
だがすぐに落ち着けと声をかけた事で俺だと分かったのか、名前は手をこちらへと伸ばして来た。
「心配ない。大丈夫だ」
「…っ、」
名前が伸ばして来た手を取り、俺の方へと引き寄せ抱きしめたところで、なるべく優しく声をかける。
砂の里も昔に比べると随分と発展した。
こんな停電などすぐに復旧するだろうが、名前は俺の腕の中で震えながら「このまま電気つかなかったらどうしよう…!」と呟いている。
暗い事がそんなに怖いのか?いくら嵐だとしてもここまでとは。
大人のプライドがどうこう言っていたが、こうしてみると子供のようだ。
そんな事を考えつつ、だんだんと名前に対して悪戯心が湧いて来た俺は、ある提案をしてみる事にした。
「名前、里の様子を少し見てこようと思うんだが、…ここで待っていられるか」
「…へ、」
暗闇で表情こそ見えないが、声色から明らかに動揺しているのが見えたので、更に抱きしめていた腕を解くと慌てた様子で俺の腕を掴んで来た。
「、名前、こんな時、風影が里の様子を見に行かなければならない。…分かるだろう?」
「あ、えと、…わ、分かる、けど…」
一人にされるのがよっぱど怖いのだろう。
様子を見に行くと言った俺の腕を掴んで離さない名前に、今、冗談だと言ってやりたいところだが、もう少し名前の恐怖心を煽ってみるかと思う俺は性根が悪いだろうか。
「……分かっているならここで待っていてくれ。すぐ戻る」
俺の腕を掴む名前の手にそっと触れ、離すように促してみると、それはあっさりと外れた。
俺としては行かないでくれとせがまれると思っていた分、意外とあっけない結果に一人眉を寄せる。
こんな時、頼って欲しいと思うのは男の性。
特に好意を寄せている女には、これ以上ない程必要とされたいものだ。
だが名前はこんな時でも虚勢を張る。
俺に迷惑をかけないようにとでも考えているのだろうが、そんなものは無意味だ。
「……い、行ってらっしゃい…」
そろり、と後ずさり俺から少し距離を取る名前。
正直なことろ、停電とあっては俺が里の様子を見に行こうが意味はない。
電気を供給している科学者たちの踏ん張りでいずれ復旧するだろう。
それを今、目の前のこいつに伝えて、どこにも行きはしないと言えばいいのだが、なんとなく今更そんな事が言えなくなってしまって、仕方なく一度外へ行こうと、暗闇の中、部屋の扉を探す。
俺も素直じゃないな。
「…行ってくる」
「……」
壁に手を這わせて扉を見つけ、開けようとドアノブに手をかける。
その時に一度振り返ってはみるが、少し離れただけで姿も確認できないほどの暗闇は、名前の姿を見せてはくれなかった。
すぐ戻ってくればいい。戻って来て、また名前を抱きしめてやればいい。
そんな事を考えながら扉を開けた瞬間、名前が俺を呼んだ。
「が、我愛羅君、…!」
呼ばれた瞬間再度後ろを振り返るが、やはり名前の姿は確認できなくて。
なんとなく声のした方へと足を向けて見れば、今度は微かにすすり泣くような声が聞こえて来てハッとする。
「…っ、」
「名前、…」
まさか泣かせてしまうとは思ってもおらず、途端に後悔の念に狩られる。
暗がりで名前を探し、やっと触れられた方は少し震えていた。
「ご、ごめ、あの、全然、一人が怖いとかおもってないからね、ち、違うからね…っ」
泣いている事がバレていないとでも思っているのか、必死に明るく取り繕う名前の肩に触れながら黙っていると、小さい声で「気をつけて行ってらっしゃい」と言われる。
きっとこんな暗がりで、轟々となる風の音の中、一人になる事が怖くて俺を咄嗟に呼んだのだろうが、駆けつけたとところで怖くないとまた強がる。
素直に怖いと言えばいいものを、なぜそこまで強がるのか。
たまらなくなった俺は再度名前を抱きしめた。
「…嘘を言うな。泣くほど怖いなら怖いと言えばいいだろう。」
「…!、な、泣いてな、いし…怖く、ない」
まだそう言うのか。
俺の腕の中に収まっている名前と、泣いている泣いていないの言い合い。
ほとんど水掛け論の様になっている言い合いを続けていると、フと部屋が明るくなった。
突然の明るさに目を少し細めながら窓の外を見てみると、どうやら里中の明かりが復旧した様だった。
「復旧した様だ」
「…!、ちょ、こっち見ないで!」
「、っ」
窓の外の明かりを確認した後、それを伝えようと名前の顔を覗き見るが、今度は名前の手によって俺から光が奪われる。
目元を手で覆われた俺は、やめろと制止を促してみるが名前は手を離すつもりはない様だ。
「見られたくないと言うことは、泣いていたと捉えるが」
「え?!い、いや、ち、違うよ!ええっと、…き、急に明るくなったら目に悪いと思って!」
「……」
必死に俺の目元を抑える名前は思いついた様に訳のわからない事を口走る。
じゃあお前の目は急に明るくなっても大丈夫なのかと問いたいが、それは言わないでおこう。
だがずっとこのままでいる訳にもいかないので、名前の肩に触れていた手に力を込め、そのまま引き寄せると同時に名前の肩に顔を埋めた。
その時俺の目元を抑えていた手が外れ、力なく放り出されたのが視界に映った。
「これでお前の顔を見ないで済むが、これでいいか」
「あう、…うん、」
明かりが点いた事によって少し落ち着きを取り戻しつつある名前だが、それでも窓が風によって大きな音を立てる度、俺の腕の中で体が跳ねている。
大丈夫だと言い聞かせるように抱きしめている力を少し強くすれば、俺の背中に力なく腕が回った感触が届いた。
……
少し経ってから名前は、もう大丈夫だと言いながら俺から離れ「そう言えば我愛羅君、里の様子見に行かなくてもいいの?」なんて間抜けな事を言ってきたので、
「お前の恐怖心を煽ってやろうと吐いた嘘だ」と飄々と言ってやると、みるみる顔が赤くなり、もー!などと言いながら俺にそよ風の様なパンチを繰り出してくる。
「ばか!」
「素直に怖いと言わないお前が悪い。……ああ、怖くはないんだったか?」
「もう!怖かったに決まってるじゃんか!一人にしないでって思ったよ!」
「……」
いつの間にか怖かったと素直に言ってくる名前は気づいているのかいないのか。
少し呆れてはしまったが、そのまま嵐が静かになるまで俺たちは執務室で過ごした。
こんな日も悪くないな。
おわり
めにぃ様リクエストで、自然災害に怯えてヒロインが我愛羅君に甘え、それに我愛羅君が喜ぶと言うお話でした!
なんだか我愛羅君が逆に構ってちゃんみたいになってしまいましたが…!そして意地悪…!
文章力がなくてすみません…!
リクエスト、コメント共にありがとうございました!また遊びに来てくださいませー!