親バカとはこういうもの
「おかーさん」
「ん?どした?」
「わたしね、おにーちゃんとけっこんするの!」
皆さんこんにちは。どうも名前です。
私は今、家族四人で夕食を取っています。
最近、成長した娘はまだ滑舌が悪いけど言葉を話すようになって、意思疎通がなかなか難しい時よりも可愛らしさが増した。
自分の子供が一番可愛いなんて良く言ったもんだと、毎日成長して沢山の事を覚えて行く娘が可愛くて仕方がない。
そう思っているのは私だけじゃなく、父である我愛羅君も、兄であるシンキ君も、表情はいつも通り二人とも無に近いけど態度が明らかにデレデレしている。
そんな娘が、皆で食卓を囲んでいる中で「お兄ちゃんと結婚する」なんて、まあ可愛らしい発言をしてきた。
「シンキ君と結婚するの?いいねえ。いつも無表情で何考えてるのか良く分からないけど、優しいよ絶対」
「うん!いっつもね、いっしょに遊んでくれるんだよ!やさしいおにーちゃんだいすき!」
「………おい」
「ん?どしたの我愛羅君………え、」
ニコニコと、シンキ君の事を大好きという我が娘に、なんて可愛いんだと内心思いながら微笑んでいると、今まで静かに会話を聞いていただけだった我愛羅君が突然割って入ってきた。
なんだか少し低めの声色に、娘から視線を外してそのまま我愛羅君の方を見ると、なんとまあ見事に眉間に皺が寄っていて。
なんでちょっと怒ってんの?
「え、ちょ、眉間に皺が寄ってますが…」
「…なぜ、俺ではないんだ」
「……は?」
え、……え?
ちょっと何言ってんのこの人。
「普通は…、お父さんと結婚する。と言うものではないのか。何故シンキなんだ」
突然何を言いだすかと思えば…。
そんな事どっちでもいいだろう。幼い娘の戯言なんだから。
兄貴と妹が本当に結婚する訳がな………
いや待てよ。
実際のところ本当の血縁関係じゃないんだから、しようと思えばできるのか?
…いやいや血は繋がってなくても一応ちゃんと家族なんだし、戸籍上も家族って事になってるし………
我が娘はお世辞にも我愛羅君みたいに落ち着いてるとは言えないけど、それでも我愛羅君の血を半分は受け継いでる訳だから
コレと決めた事はやり遂げる?みたいな事になったり?
え、もしかして戯言じゃなかったりする?
娘よ、マジで言ってたりしちゃう?
「…いやいやいや、そんなはずないよね。できる訳ないし、だって家族だし、」
「…何故俺ではなくシンキなんだ、確かに俺は公務でなかなか相手をしてやれないが、だからと言って将来はお父さんと結婚すると言うのが定石と言うものだろう、なぜなんだ」
「…義父上、義母上、何をブツブツ言っているんですか」
まさかな、まだほんの小さい娘にそんな、我愛羅君みたいに使命感のような心意気なんてあるわけないよ。
もう完全に周りの声なんて聞こえない、我愛羅君はブツブツと相変わらず「なぜ俺ではないんだ」とか言ってるし、シンキ君も何か言ってるけど、私の頭は家族同士の結婚の事でいっぱいだった。
家族が結婚なんて、そんな話あるか。
あ、でも男女の双子がお互いを好きになってしまって、禁断の恋と称されたものの実は他人だったみたいな漫画あった気がする…
うわあ、それウチの家族じゃん…!
「おとーさん!おかーさん!」
「んお、な、何?どした?」
わああああ、と変な方向に物事を考えてあたふたしていると、突然娘が割と大きい声で私と我愛羅君を呼んだ。
それにハッとした私は、なぜか少しムクれている娘の方を見やり、なんだなんだと娘に声をかけた。
「わたしがおはなししてるの!」
多分、私たちが娘の会話を遮って、自分の思考に浸っていたからムクれていたんだろう我が娘に「ごめんごめん」と私は謝りながら話の続きとやらを聞いてみる。
我愛羅君は未だに自分を選んでもらえなかった事に落ち込んでいるのか、自分の世界から帰ってこない。そんなに落ち込まなくてもいいだろ。
「わたしね、おにーちゃんとけっこんして、それからおかーさんとけっこんしてね、そのあとおとーさんとけっこんするの!わたしみんなダイスキだから!」
「…!」
「!!」
え、ちょ、なにこの子、やば、可愛いすぎるんですけど。
我が娘ながらグッジョブ…!
娘のいう話の続きとやらはまさかの私たち家族全員と結婚するというもので、その発言をした途端、落ち込んでいた我愛羅君もパアと顔色が明るくなった(気がした)
私は私で、三人ともと結婚するという娘に、ただの幼い少女の戯言だったんだと一安心。
そもそもこんな小さい娘がそんな真面目にお兄ちゃんと結婚するんだなんて言うはずないよね!
ただの好きって感情の現れだよね!
……ん?好きの現れで結婚したいなんて言ってるって事は、
もしかしてもしかしなくても外でできたお友達とかにもそんな風に言ってないか?
「え、ねえ、もしかしてお友達とかにも結婚しようねとか言ってたりしない、よね?」
「うん!言ってるよ!ダイスキな人とけっこんはするものでしょ?おともだちみんなダイスキだから!」
「!!!!だ、…!」
だめえええええええ!!!
それはだめええええええ!!!
みんながみんなに結婚しようねなんて言ったらだめだよ!
いやそんな事言うこの子めちゃ可愛いんですけど…!だけどそんな事言いふらしてたらどこぞの馬の骨とも分からんやつが勘違いするかもしれないでしょーが!
「?、おかーさんどうしたの?」
「へ?!いや、えっと、」
お友達にも結婚しようねと言いふらしているらしき娘に私の思考回路はショート寸前。
一体どう言う風に、それはダメだと伝えればいいのか分からず、首を傾げてどうしたのと問うてくる娘に慌てふためいてしまう。
そんな事言っちゃダメだよ!と頭ごなしに言ってしまっては可愛い我が娘は悲しい顔になってしまうだろうし…うう、それは避けたい
かと言ってこのままうやむやにしてしまってはどんどん娘の婚約者が増えてしまう…!それも避けたい!
「……お前は、俺のことは好きか」
「おとーさんの事?」
「ああ」
一体どうすれば!と頭をフルに悩ませている私の横から、いつのまにかいつもの無表情に戻っていた我愛羅君が娘に話かけている。
何を言うつもりなのかは知らないが、こういう困った時に助けてくれるのが我愛羅君だ。風影だし。口も達者だし。
上手い事言ってくれよ…!と我愛羅君に視線を送れば、俺に任せろと言わんばかりの表情が帰ってきた(無表情だけど)
「おとーさんだいすきだよ!せかいでいちばんすき!」
「…っ!、そうか。では結婚は俺とだけだ。他にはもう言わなくていい」
「おとーさんとだけ?」
「ああ、そうだ。俺以外の者へも結婚の約束をお前がしているとなれば、俺は悲しい」
「…おとーさんかなしいのいや!」
「なら約束してくれ」
「わかった!もうほかのおともだちとはけっこんしない!」
……お、おおお。ま、丸め込んだ…。
途中世界でいちばん好きと言われて眉間にシワを寄せながら照れるのを我慢した我愛羅君が気になったが、うまいこと丸め込んでくれてよかった。…のか?
「おにーちゃん、おかーさん、わたしおとーさんとけっこんするから……ごめんなさい!」
「……」
ああきっと、我が娘は単純なんだ。私に似てしまったが為に単純なんだ。
我愛羅君に俺だけだと言われた事で、さっきまで私とも結婚すると言っていた娘はちゃんと断りを入れてくる。
え、私振られたの?いや良いんだけど。良いんだけどね?
フと我愛羅君の方を伺って見れば何やら勝ち誇ったような表情になっていて、なんだか無性に腹が立った。
バカ親父め…!
そんな我愛羅君に八つ当たりと言わんばかりに、「じゃあお母さんはお兄ちゃんと結婚しようかな?」なんて言ってみると、シンキ君にはバカな事を言うなと静かに一喝された。かなしい。
こんな感じで、可愛い愛娘に家族全員がデレデレと振り回されている毎日です。
あれ、作文?
おわり
名無し様からリクエストいただきました、娘が喋れるようになった頃のお話でした!
お名前を記載されていなかったので名無し様と表記させていただきました!
親バカ達によるただのギャグになってしまいましたが、読んでくださると嬉しいです!
連載についてのコメント、リクエスト共にありがとうございました!