演じるということ

 鶴は鶴として自分のことを語りたくないのかもしれない。自分を物語の登場人物に託して、あたかも彼らのことのように話したいのかもしれない。
 鶴の言葉を彼の手を離れた言葉にしてやると、鶴はとても喜んだ。
「ああ……! しっくり来るなあ……!」
 彼は感嘆した。
「俺は言葉を伝えたかった。俺とひなの話をしたかった。けれど、嫌だったんだ。俺を見つけてほしいのに、見つかりたくない。でも、この感情をこのまま留めておきたくない」
 彼は言う。
「分かるやつだけが分かればいい。でも、俺に気付いても知らないふりをしてほしい。それでも共感されたい。きみとここにいたことを伝えたいんだ……!」
 ――ああ、なんだ。私と同じじゃないか。

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