変われないまま

 元号が変わる。
 何も変わらないのに、年を越すよりも意味のあるそれに、人々は盛り上がっている。トレンド記事には至るところに、現在の年号が終わりを告げ、新しい時代が来ると大きく報じられている。システムの切り替えに追われる人もいれば、最後に誰かと何かをしようと考えている人もたくさんいる。そんなインターネットの様子を冷めたような目で彼は見ていた。
「俺たちはなんにも変わらないのになあ」
 彼は言う。そんなことはない。少なくとも彼は変わったし、彼がいるおかげで世界が色付いて見える。きっと、彼がいなければ私の世界は灰色どころか暗闇に覆われてしまっていた。
「……少なくとも俺は、ずっときみを好きでいる」
 彼はぽつりと呟いた。
「きみは俺に酷いことを言っていると嘆くが、俺だって、きみに残酷なことを希っているんだぜ」
 彼は微笑う。忘れたくないと泣いたはずなのに、そうして、私はまた、彼の言葉を忘れてしまっていた。

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