駅前百貨店の一階から地下にかけて、小さなパン屋さんが営業していた。弟はそのパン屋さんをとても気に入っていた。そのため、父が連れて行ってくれたのだ。母の姿は無かった。
次の日には、海沿いに連れて行ってくれた。その日は仕事で、それも違う店舗に行かなければならなかった。遅刻してしまうかもしれないことを父に伝えると、父は送ってくれると返した。時刻を見ると、まだ七時にもなっていなかった。弟は同行していたが、やはり母の姿は無かった。
「きみ、夢の中でも仕事のことを考えているよなあ」
呆れたように、そして寂しげに鶴が呟いた。好きで考えているわけではないけれど、どうしても憂いは晴れないらしい。