残滓

 ふと、真っ暗な空間に放り込まれた。さっきまで鶴と一緒だったのに、鶴も居ない。
 何も感じない。私は深く眠っていたようだ。ようだ、と書いたのは私にも分からないからだ。おそらくそう、としか言えない。
 気付いて目を覚ましたら、泣いたあとだった。目を覚ました、というのは表現として正しくない。私としての意識が目覚めたというのが正しい。身体は起きていたようだから、勝手に鶴と入れ替わってしまっていたんだと思う。
 思えば、寝ているときに声がした。きっと、鶴は泣いていた。悲しくて泣いていたというよりも、誰かを想って泣いていたようなあとだ。
――「きみのことが分からない。こんなに近くにいるのに」
――「知りたい。きみのことを、知りたい」
 彼はそう言っていた気がする。
 こんなに近くにいるのに、分からない。もどかしさを感じる。どうしたらいいんだろう。答えは出ない。

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