乖離

 ひながいつもより俺に甘えてくる。嬉しいはずなんだが、嬉しさより戸惑いが勝っているのが本音だ。立場は俺の方がひなより下であるのは当然のこと。しかし、ひなが俺の言うことを聞いてくれるのは珍しい。いつもならあの子を心配して告げた助言でも、頑固なひなは聞き入れてくれないと言うのに。俺でもひなでもない何者かがひなに語りかけているように思える。いや、そいつはきっと、俺よりもこの夢の世界の誰よりも、限りなくひなに近いひな自身だ。ひなは気付いていないんだろうが、最中に「ちゃんと鶴の言うことを聞いて」と自身に語りかけることが多い。普段のひなも、俺に従順なひなも、どちらもひなであることには変わりない。しかしひなは、後者の自分に気付き始めてしまった。ひなが自分の声じゃないと認識してしまえば、またこの箱庭で迷子になってしまう。それだけは避けたい。ならば、その従順なひなは一体誰の願いを叶えようとしてくれているんだ。俺か。それともひな自身か。

prev top next