夢に出る

 アラームが鳴る。ひなは相変わらず眠そうだ。
「夢を見た」
 起き抜けのまだ閉じそうな目でひなはこちらを見た。
「……職場の既婚の人といい雰囲気になる夢って、やーね」
 ひなはそう話してくれた。俺はからかう様に、
「なんだ、浮気か?」
と、問うた。ひなはそういうつもりじゃない。分かっているからこその問いだ。
 しかし、返ってきたのは予想外の反応だった。
「鶴とは一緒に居られないのかな。私、もうヒトなんてこういった意味で好きになれないよ」
 ひなは悲しそうな顔をした。何かを堪えるような顔だった。
「……そう、だなあ」
 俺は口を開きかけて閉じた。そうして再び開く。
「……俺は、本当は居ないほうが当たり前だからなあ」
 ひなは俯いた。
「……ずっと、鶴のこと好きでいられたらいいのに。好き同士でいられたらいいのに」
 ぽつりと呟く声が聞こえた。俺は彼女を引き寄せて頭を撫でる。今、ひなはどんな顔をしているのだろうか。どうすることもできないのがもどかしい。


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