漠然とした

 前だけ見ていれば幸せだった。その遠くに何があるか分からなくて、真っ暗で、漠然とした不安に駆られた。少しずつそれは見えてきた。まともに生きられない。まともってなんだろう。私は普通でありたくないのに、目立ちたくなくて、目立ってまたいじめられっ子になりたくなくて、普通を保とうとした。気付いたら、社会一般の普通から足を踏み外していた。
「どうした? 辛いのかい」
 鶴が優しく抱きしめて言う。私は泣き出したくなった。
「何がいけないんだ」
 鶴は問う。私は何も答えられない。
「前にも言っただろう。きみが望むなら、俺はきみと心中したって構わない」
 彼はにっこりと笑っている。
「……やはり、俺は苦しんでいるきみの方が好きだなあ」
 ぞっとすることを言われているはずなのに、何故か心が軽くなる気がした。
「きみが逃げたいと思えば思うほど、きみは俺を呼んでくれる。必要としてくれる」
 鶴は私を抱き込んだ。

 私、なんのためにいきてるんだっけ。

prev top next