ディストーション

 血まみれになった赤黒い世界を見下ろす。最初は俺が斬ってやっていたんだが、あとからひなが俺を貸してくれと言うものだから、貸してやった。ひなの方が残酷な殺し方をする。どこを斬ったほうが楽になれるのかを知らないからだ。ひなが見せてくれる綺麗な世界も美しいと思うが、掃き溜めのような世界で俺を振るってくれるのもまた悪くはないと思えた。
 相当鬱憤が溜まっていたのだろう。ひなにしては珍しく、狂ったように高笑いしながら俺を扱った。ひなの心はくるくると色を変える。ああ、だからか。見ていて飽きない。ひなといると退屈しないのはそのせいか。
 だがなあ、ひな。刀は刺すことや肉をバラすことには向いていないんだ。
 無茶な斬り方をするひなにそれを告げると、ひなは残念そうに「つまんないの」と呟き、俺に身体を預けてきた。おいおい、俺はそこら辺に刺しっぱなしかい、と思ったが、ひなが楽しそうだったからいいんだ。

Distortion



 あれをしたのは、いつのことだろう。夢の世界での出来事だったのか、それとも夢だったのか、あまり覚えていない。けれど、したということだけは覚えている。
 赤黒い世界。再生と破壊の天頂によく似たあの禍々しい空間。
 最初は鶴が誰かを切り刻んでいた。けれど、私は見てるだけじゃ足りなくて、鶴から鶴丸国永を取り上げて、滅多切りにしてやった。誰を斬ってたのかは覚えていない。顔は血塗れでよく見えなくなってしまっていたから。でも、家族や大切なひとではないことは確かだ。
 残酷なようだけど、それが楽しかった。でも、切り刻むだけじゃあ足りない。バラしてやりたい。そう思って、食用肉を包丁で斬るみたいに鶴丸国永を扱っていたら、さすがに鶴に怒られた。いや、怒られてはないけど、日本刀をそんな風に扱うのはどうかと思うと言われた。じゃあのこぎりはないのかと聞いたら、しょんぼりされたので、仕方なくもう少し遊んでしまった。
 私が鶴丸国永を振るうのを見た鶴は、とても嬉しそうだったのを覚えてる。
 だめだ。もう少し書いておきたいことがあったんだけどな。これじゃあ、ただ私が死体で遊んでただけになる。
 ああ、嫌になるなあ。

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