計画犯
※性的描写あり
前提もなにもないすぐきう
出会いはベタ過ぎる程にベタなもので、手の届かなかった本を取ってもらうなんて少女漫画もドン引きだったと思う。私も身長は高い方なんだけど、女子で言えば程度…だと思いたい。男子の平均身長を超えてるけど。そんな私の頭一つ分くらい、背の高い男子だった。
「これ?」
「あ、ありがとう、ございます。」
「いや、それ課題のやつだろう?分かりやすいかい?」
「この中だと一番分かりやすいと思う。」
ちらりと覗いたら上履きのラインが同学年であることを示していたので一つ頷きで返す。手に持ったまま一冊の本を眺めていたので借りる予定なら先にどうぞ、とほぼ反射で口に出していた。目の前の男は驚いたような顔をした後、目の前に差し出される。
「有難いけれど横取りするのは気が引けるからね。」
「もう読んだ本だから。その二つ隣の本でも十分だから平気。」
「じゃあ、こっちも取ろう。」
首を振って二つ隣の本を指差すと持っていた本をそのままにもう一冊を取り、そうして差し出されたもう一冊を今度こそ受け取る。男はありがとう、と言ってから何かに気が付いたような顔をした。
「すまない、名乗り忘れてた。B組の夏油傑だ。」
「D組の愛染喜雨。よろしくね、夏油。」
「よろしく、愛染。」
そんな風に知り合った男とは本の返却日の週に一度だけ会っていた。お互い借りていた本を交換して借りたり、同じ本を並んで読んだり…定期テストが迫れば並んでノートにペンを走らせていたり。毎日顔を合わせるわけではないが、それなりに仲良くなっていたと思う。そんな日々が半年も続けば、すれ違い様にお互いなんとなく手を振り合ったし、学食で会えば向かい合って昼食を摂った。クラスメイトたちには付き合っているのかと聞かれたけれど、良くて友達だろうと思っていたのでそのまま伝えていた。その内そう聞かれる事も無くなって、私自身も夏油もお互い心地好い距離感を保っていた、はず。
「愛染。」
「ん?問6なら今途中式だけど。」
「勉強のことじゃなくて…。」
無駄な会話もなく勉強に集中出来るから、と夏油に提案されて何度目かのテスト勉強を一緒にしていたら突然呼ばれる。分からない箇所があれば聞き合っていたし、その類いかと思って顔も上げずに返事をしたが困ったような声を出されて顔を上げた。なんだろう。呆れたみたいな夏油の顔を視界に捉えて首を傾げていると夏油が頬杖をついたまま、口を開く。
「テストは明日終わりだろう?放課後、少し出掛けないか?」
「………めっずらし…夏油って寄り道とかするんだ。」
「私の事をなんだと思ってるんだ。」
「出掛けるのは別に良いけど、なんかあるの?」
「ああ、少し行ってみたい場所があって。」
「ふうん?」
別に用事もないし、構わない。でも放課後にこうして図書室に来る以外で夏油と過ごすのは初めてだな、なんて思いながら書きかけの途中式を埋める為にノートにペンを走らせた。夏油がどんな顔をしていたかは、見てない。
憂鬱な一週間は数学のテストをもってして終わりを迎えた。問題用紙に解答は書き写しておいたので帰ったら答え合わせでもしようかな。夏油と出掛けてからだから…うーん、面倒くさくなってやらない気もする。カフェにでも行くなら二人で答え合わせとかしたい。机の中は空っぽなのでロッカーに鞄を取りに行って、筆箱を取り出しシャーペンと消しゴムをしまって鞄に放り込む。そういえば連絡先とか交換してないけど、クラスに行った方が良いのかな。それとも図書室に行けばいいのか、なんて考えていたら教室の入り口からクラスメイトに呼ばれた。
「喜雨ー、お迎えー!」
「今行くー。」
鞄を肩に掛けてドアに向かえば夏油が笑顔を浮かべたまま片手を上げる。手を上げて返し、隣に並ぶ。呼んでくれたクラスメイトにお礼を言って、軽い挨拶を交わしてから夏油と並んで昇降口に向かう。
「手応えは?」
「80は越えてると思うよ、愛染は?」
「まだ答え合わせしてないけど同じくらいじゃない?最終問題、ちょっと自信ない。」
「√2じゃないか?」
「私もそう書いた、夏油と一緒なら大丈夫か。……あ、その前に本返すのだけ付き合ってもらっていい?」
とりあえず夏油と回答が同じなら大丈夫そうかなぁ、やっぱ後で答え合わせ提案しよう。成績同じくらいだったと思うし。なんて考えていたら不意にやけに重さを感じる鞄への疑問が湧いて、そうして返却期限の本の存在を思い出す。夏油は目を丸くした後、笑って頷いてくれたので踵を返して図書室に向かう。
「付き合わせちゃってごめんね。」
「いや、気にしなくていいよ。私もこれから付き合ってもらう予定だしね。」
「そういえばどこ行くの?」
「新しく出来たカフェがあるだろう?」
「あー、なんかパンケーキ美味しいらしいとこか。お昼食べよ。」
「……パンケーキか。」
少し微妙な顔をしている夏油に首を傾げる。新しく出来たカフェはパンケーキが美味しいとクラスメイトたちは言っていた筈だけど。そこでふと、夏油はいつも緑茶かブラックコーヒーを飲んでいたことを思い出す。一度、糖分欲しさにミルクティーを飲んでいた私を見て神妙な顔をして甘くないかと聞いてきた事があった。
「甘いの嫌いじゃなかったっけ?」
「……得意ではないね。」
「え、じゃあなんでカフェ?」
「新しく出来たから気になるな、程度だったんだ。一人だと行く気にもならないし、誘うような友人は居ないし。」
「変える?軽食もあるらしいけど…カフェのご飯とかだと男子には少ないでしょ。」
「いや、コーヒーも美味しいらしいから大丈夫だよ。」
「なら良いけど…?」
よく分からないな、と思ったけれど何かを考えて、何かに呪詛を吐いているので放っておく事にしよう。一度昇降口まで向かったせいで遠回りをしてしまったから、通い慣れた図書室が少し遠く感じる。なんとなく隣を覗き見たら普段は座っているから気にならなかったけど改めて背が高いなとか、ひと束だけ落ちた横髪が邪魔じゃないのかなとか、そんなものばかりに気を取られてしまう。でもなんか、異性として意識してるみたいで嫌だな、と考えを払った。
図書室に着いてから本を返却し、小走りで入口付近で待っていてくれた夏油の元へ戻る。中に入ると本が気になってしまうからとのこと。分からないでもない。隣に並ぶと夏油が笑って行こうか、と声を掛けて来たからそれに頷いて今度こそ昇降口へと向かう。途中、自販機の前あたりで突然背後から声をかけられて肩を跳ねさせてしまった。夏油が笑ってるのが見えたので肘でどついておく。
「あのさー…ってあれ?」
「びっくりしたなぁ、…なに?」
「もう帰る?」
「うん、誰かなんか用事?」
「用事があるのは俺なんだけど…ちょっといいか?」
クラスメイトが何かを考えるみたいに、後頭部を掻きながら目の前に来た。なんだろう、提出漏れでもあったのか。いや、今日提出するべき物はした筈だ。さっき本を返却する為に鞄の中を見たので間違いはない。じゃあ、アレか。
「今日じゃないとダメ?これから夏油と出掛けるんだけど。」
「すぐ終わるからさ。」
「や、さっきから待たせてるから。」
「夏油ごめん、ちょっとだけだからさ。」
夏油の事だから、両手を合わせて頭を下げる男子に構わないと言うんだろう。実際の時間が数分だと言えど本の返却で待たせてたばかりだし。ちらりと横を見れば夏油はお手本みたいに笑って、首を振った。
「申し訳ないけれど許可出来ないな。」
「へ?」
「すまない、この後カフェの予約をしているんだ。結構時間が迫っているからこれ以上だとキャンセルの電話をしなくてはいけなくてね。月曜日にでもしてもらえるかい?」
「あー…そっか、うん。わかった。じゃあ月曜にするわ。二人とも引き止めてごめんな。」
何かを言いたそうな顔をしたまま、クラスメイトが踵を返す。なんかよく分からないけど月曜日で良い。それより夏油が言った通りならばとりあえず急がなくてはいけないらしい。予約とかしてたなら先に言って欲しかったが。
「ごめん夏油、急ごっか。」
「予約の話は嘘だから気にしなくて良いよ。」
「…なにその無意味な嘘。」
「私は意味のない嘘なんか吐かないさ。」
意味が分からない、と問い詰めようとしたら夏油の手が私の手首を掴む。痛みを感じるようなものではないけれど、夏油が触れてくるなんて初めてだから驚いた。
「なんで呼ばれたか分かってる?」
「…いや、まあ、予想はつくけど…確証はない、多分だけど凄いどうでも良い話。」
「……愛染は鈍いからね。」
「喧嘩なら買うけど。」
「そういうところだよ。」
夏油が呆れたみたいな顔をして見てくる。そんな表情をされるような発言はしていないと思うんだけど。眉間に皺を寄せて見上げれば、夏油は掴んだ手首を緩めて、私の手を取り繋ぐ。なにこれ、仲良しですよ的なの?女子同士で引っ付いてるのはよく見るけど男女でやるのはカップルだけじゃないかな。
「私がお前を好きなのも気が付いてないだろう?」
「は?」
「本当はカフェの後にでも言うつもりだったんだけど、格好がつかないな。」
「や、ちょっと待って。なに?は?」
「口が悪いよ。」
脈略というものを知らないのかとその厚い肩を掴んで揺さ振ってやりたくなるが、片手は捕まってるしもう片方は鞄を押さえているしで叶いそうにない。いや、それはどうでもいいんだけど。今こいつなんて言った?と頭の中で反復する。何度思い返しても好きだとか気が狂った事を言われた気がする、という結論にしか達さない。
「好き?夏油が?誰を?」
「私が、愛染を。」
「正気か?」
「そこまで言うか?」
「何でこのタイミングでそんな話になったのか皆目検討もつかない…。」
「負けたくないじゃないか。」
「本当に意味が分からない…。」
「数分の差でお前がさっきの男子の恋人になりました、なんて笑えないだろう。」
本当にこの人は何を言っているのか、と思っていたのが顔に出ていたんだと思う。夏油が繋いだままの手を引っ張って来るからバランスを崩して、胸元に収まった。片腕が背中に回って、手を掴まれただけでも逃げ場がないのに完全に拘束されてしまった。なんという早業、匠かよ。
「あの、夏油さん。」
「急に他人行儀になるのはやめなさい、振られてなんてやらないよ。」
「や、ちが、あの……あいつ、彼女いる…。」
「ん?」
「あいつの彼女が私の友達で、その子の誕生日近いから…プレゼントの探りを入れてくれってやつ、だと思う…。」
「…なるほど。」
「なんかごめん…。」
夏油がそのまま静かになってしまった。ちゃんと説明しておけば良かったな、なんて思いながらもとりあえず離して欲しい。今は誰も居ないけれど、自販機の前とか絶対誰か来るし。
「夏油、離れようか。」
「まだ返事を貰ってないから。」
「返事はまた今度で良いとかないの?」
「ないよ。」
さようですか。返事、返事なぁ…と、とりあえず考えてみる。噂になりませんようにとかが思考の中心に湧いてきたけど一旦投げ捨てておく。好きだと言われて、私も好きだとすぐに返せるかと言われれば難しい。でも、所謂お付き合いというものをするにあたり、夏油が生理的に無理ですか?と聞かれたらそれは違うと思う。付き合えるけど、好きかはわからない、みたいな。
「夏油となら付き合えると思うけど、…好きかまでは、わかんない。」
「試しにキスでもするかい?」
「そんな答え合わせみたいな…。」
「似たようなものさ。ほら、じゃあ目を瞑って。」
「うっっそだろ、おまえ。」
背中に回された腕が解かれて、顎を掬われる。目の前に夏油の顔があって、パニックになりそうな頭を必死に冷静にしようとするけれど、目の前の男は何で事ないみたいな顔をしてるから物凄く腹が立つ。
「君は鈍いと言っただろ?私の事が好きなのに、それを自覚してない。でも頭が悪いわけじゃないからキスの一つでもすれば自覚するよ。」
「意味分かんないんだけど、さっき田村と数分の差で付き合う云々言ってたじゃん。」
「ないとは思うけれど、自覚してないからとりあえず付き合ってみるとか、する可能性がゼロなわけではないから。大丈夫、責任の一つや二つはきちんと取る、その器量も甲斐性もあるから気にせず頷いてくれたら良いよ。」
「や、人目、人目とかさぁ、」
「私は弟以外なら誰に見られても困らないよ?」
「あ、弟居るんだ、…じゃない!私は困るんだけど、」
「愛染が暴れなければ一瞬だろう。」
「せめて、せめてどっか教室とか!」
「はは、諦めてくれ。」
そのまま柔く唇が重なって、夏油の言葉通り一瞬で離れた。ファーストキスだったんだけどとか、こいつ本当にしやがったとかそんな事を思わなきゃいけない筈、なのに。
「自覚は出来たかな?」
顔が熱い。目の前の夏油が悪い顔をして笑っているのが悔しいのに馬鹿みたいに鳴り響く心臓と胸いっぱいに広がる経験のない感情に言葉が詰まって何も言えなくなる。好きかはわからない、なんて、思ってた数分前の自分が一番馬鹿だ。
「荒療治野郎…。」
「好きだろう?」
「……好きらしい、です。」
口に出してみたらもう、本当にそうとしか思えない。やばい、どうしよう。夏油の分厚い掌が頬を包んで顔を反らそうとする私の最後の抵抗を封じてくる。悔しい、余裕そうな顔しやがって。
「ちゃんと言わなきゃいけないよ。」
「…好きだよ、ばか、ちくしょう……、」
「良い子。」
今度は夏油の腕の中に自分で潜り込む。もう噂になってもいいやとすら思う。だって夏油モテるし。腕が回らないんじゃないかってくらい逞しい体に抱き着いて唸っていたら、夏油と繋いだ手が揺らされて視線だけ上げる。
「カフェにする?それとも、私の家に来る?」
「何その二択、カフェ行きたかったんじゃないの?」
「その後に家に連れて帰る口実作りというだけだから特に用事はないね。」
「もはや一択。」
「どうする?」
「……お腹空いたからカフェ。」
笑う夏油の体が小さく震えて、首元に額を押し付けた。お付き合いなんて初めてだから何をすれば良いのかも分からないけれど…まあ、任せておこう。エスコートとか得意そうだし。私が自分で分かっていない事も汲み取ってくれるのは経験済みなので、安心して任せていいだろう。
「そろそろ行こうか、私も腹が減った。」
「パンケーキ食べさせてあげるね。」
「やめなさい。」
促されるままにくっつけた体を離すと指を絡めて繋ぎ直されたので握り返す。筋肉質な体から離れたら少しだけ、寒く感じた。
カフェで昼食を済ませ、宣言通りにひと口分のパンケーキを差し出せば渋い顔をして口に含んだ夏油に笑って…というのが30分程前の話。そして何故か私はとある家の前に居る。夏油宅である。何故?と思わなくもないのだが、これまた宣言通りというかなんというか…いや、本当に不思議なんだけども。
「まだ誰も帰って来てない筈だから、気にせずどうぞ。」
「や、あの…展開が早い。」
「なんのこと?」
笑顔を浮かべた夏油に促されるままに玄関を通ると、背後から抱き締められた。なんだなんだと混乱していたら夏油の唇が耳に触れて体を弾ませてしまう。吐息がかかって擽ったいし、なんか、変な感じがする。こんなに近くで声を聞いたことがないからかな。
「夏油、なに?」
「……抱いてもいい?」
「は!?」
数時間前に交際開始となった気がするんだが、記憶違いか?混乱しつつ振り返ろうとしたら、夏油の手がお腹の辺りに触れる。なんかその位置は、よくないと思う。抵抗するべきだと思うのに、なんとも言えない威圧感みたいなものがあって言葉が出てこない。そのまま腕を引かれて、壁に背中が触れた。両腕が左右に置かれ、閉じ込められる。肘をついてるから、顔が近い。壁ドンって言うんでしょ、これ。誰だよときめくとか言ったの、震えるの間違いでしょ。
「男の家にのこのこ着いて来たんだから、覚悟はしているだろう?」
「ちょ、うそ、…っ、本気?」
「本気。」
靴も脱いでないのに、二回目のキス。でもさっきみたいにちょんってした程度のやつじゃなくて、反射的に閉じた唇に濡れた感触が触れてこじ開けてくる。夏油の事を優しそうだよね、なんてクラスメイトが言っていたけれどこの人はそんなに優しくないみたいだよと頭の片隅で思う。何度も角度を変えて咥内を荒らす舌に変な気分になってきて、薄く瞼を開けば睫毛を伏せた夏油が視界いっぱいに入ってしまい、なんだか凄くいけないことをしてる気分。
厚い舌が歯列をなぞり、上顎の窪みを擽って、ざらついた舌同士が絡む。どうすればいいのかわからなくてただ夏油の動きを受け入れるだけになっていたら、舌が一度引き抜かれて唇が触れたまま甘く名前を呼ばれた。ぞくぞくして、腰から下が震える。夏油が触れる場所が熱くて、唾液で濡れた唇の色気が凄くて死んでしまいそう。
「ほら、おいで。」
「……ん。」
力が入らないのがバレてるのか、腰を支えるように腕を回されて凭れかかる形で足を運ぶ。何処に向かってるのかなんて、聞く必要はない。リビングとも思わしき場所は通り過ぎたし、通された部屋は夏油の匂いがした。なんかこれ、変態っぽいから嫌だけど。ふわふわしたまま呆けていたらベッドに押し倒されて、覆い被さられた。なんでとか、なにするのとか、言いたいのに。
「ダメかい?」
「っ、…さっき付き合った、ばっかなのに、」
「うん、でも抱きたい。」
首を傾げて尋ねて来たくせに、緩く開いたシャツの襟元に鼻先を埋めてくる。止まる気ないじゃんと視線だけで咎めるけれど、私の首筋に何度も唇を押し付ける夏油には届かない。しゅる、とネクタイが解かれてシャツのボタンが外され、……両肩を押した。
「今日じゃないと、ダメ?」
「今がいいな。」
「シャワー浴びてないし、下着可愛くない、から。」
「私は気にしないよ。」
「夏油はそればっか、私は気にする。」
私は初めてなのだから、自分の中で完璧な状態でその時を迎えたい。体育がなかったとはいえ、初夏の時期にシャワーも浴びずに肌を晒すのは恥ずかしいし嫌だ。下着は…まあ、そんなまじまじ見ないのかもしれないけど。
「だめ、もう待てない。」
「っぁ…げと、ちょっと、せめて暗くしてよ、っ」
「私しか見ないんだから大丈夫だよ。」
プチプチと簡単に外されていくボタン。可愛さなんて何も感じない黒のキャミソールが晒されて、それだけでも恥ずかしいのに大きな手が下から差し込まれてキャミソールをたくし上げる。友達とお揃いにしようなんて言いながら買った真っ白なフリルの下着が夏油に見られて、思わず暴れそうになった。
「へえ、白なんだ。」
「ッ!」
「私は好みだよ。濃い色でも似合いそうだけど。」
「いつもは、黒とかだし、」
「それも今度見せてね。」
背中に回った手が器用にホックを外して胸元の締め付けが緩むと、その中に手が入り込む。指先を沈ませるように何度か揉んで、突起に触れる。変な声が出そうで口元を抑えると夏油が笑った。
「誰も居ないんだから声を出せばいいのに。」
「夏油が、居るでしょ、」
「私には聞かせるべきだろう、私が触れているんだから。」
そんな事を言いながらも指の腹で突起を摘み、軽く潰すみたいにして擦り合わされると思わず膝を擦り合わせてしまう。ぞくぞく、ぞわぞわ、きゅうきゅう、そんな感じの感覚が体を襲って来るからさっき以上に声が漏れそうで横に顔を逸らして枕に押し付ける。でも、夏油の匂いがして余計に意識してしまうから逆効果だった。
「撫でるより摘む方が好きそうだね。可愛いよ。」
「そういうの、思っても言わな、でしょお、」
「取り繕った言葉を吐く方が失礼だろう?私は思った事を偽ってはいないだけだよ。」
いじわる、と漏れた声が夏油に届いたかはわからないけれど、薄く笑った。そのまま胸元の顔を埋めた夏油の舌が胸に触れて、指とは異なる感覚に逃げ出したくなる。汗をかいてるかもしれないのに、そんなことは気にしてないみたいに何度も肌を吸い上げられるからどうしようもなく恥ずかしい。
「っう、ぅ〜、ン…ぁ、」
「触るよ、」
「もう、触、…ッあ、や、夏油やだ、やッ、」
「大丈夫だから。…腰を上げて。」
スカートの中に潜り込んだ手に反射で逃げようとしたけど逃げ道なんてひとつもないから、せめて脚を閉じる。夏油の手は何も気にしてないみたいに太腿を撫でて、そのまま下着へと触れる。熱っぽい、吐息混じりの声が鼓膜を揺らして恥ずかしいやら何やらで首を振るくらいしか出来ずに居ると、夏油が胸元から顔を覗かせた。
「下着が汚れてもいいなら構わないけれど?」
「ばか、ほんと、ばか!」
「良い子だね。」
そろそろと腰を上げたら額に口付けが落とされて、そっちに意識が向いている間にあっという間にショーツが脱がされた。スカートの中がスカスカして落ち着かないし、そもそもなんで一人でこんな格好になってるのか。夏油はなにも、崩れてないのに。
「夏油、…も、脱いで、よ。」
「……可愛い事を言わないでくれ。これでも優しくしたいとは思っているんだから。」
「思ってるだけじゃなくて、優しくして、」
唇が重なって、さっきみたいな深いキス。咥内の舌の濡れた感触とか熱さとかが気持ち良くて、首に腕を回して口付けに夢中になっていると、腰回りの風通しが良くなってスカートが床に落ちる音がした。捲り上げられたキャミソールとずらされたブラと、ボタンが全部外れて羽織ってるだけになったシャツだけしか残ってない。キスの合間に夏油のシャツを掴んで引っ張ったら唇が離れる。
「私の服は君が脱がすかい?」
「む、り…。」
「じゃあ今回は許すけど、次は脱がせてくれ。」
「……ン、」
次、それがいつだかは分からないけど二回目で脱がせてだなんて無茶を言う。目の前でシャツを脱いで、インナーを頭から引き抜いた夏油を見てるだけでも精一杯なのに。鍛えているんだっていうのが、一眼見るだけで分かる。割れた腹筋とか、盛り上がった筋肉が彼は男なんだと分からせるみたいで。分かってた筈なのにドキドキした。
「触る?」
「それも、次、」
「次は楽しみが多そうだ。」
首筋に唇が触れて、偶にぴりっとした痛みが走る。キスマークだって事くらいは未経験者の私でも流石に分かるけど、それの持つ意味だとかを考えると見える位置は困るんだけど。促されるままに膝を立てれば夏油の指先が太腿を伝って、誰も触れた事ない場所に辿り着く。
「ん、濡れてる。」
「〜っ、だから、」
「嬉しいんだ、馬鹿にしてるわけじゃない。」
指が割れ目に触れたまま上下に動く。陰核が強くもなく良くもない力で擦られて堪らず声が漏れるけど夏油の指はずっと往復する。お腹の奥が熱くて、逃げるみたいに腰が反る。脚を開いて、と低く囁かれたらもう抵抗なんて出来なくて力が入らないけど少しだけ、夏油が動ける隙間を作ると指先がナカへ触れようと押し込まれる。
「い、ッ」
「まだ痛いか、もう少し此方にしようね。」
「ひぅ、ン、やぁ、〜ぁ、げと、…っん、」
「…喜雨、ゆっくりで良い。力を抜いて。」
「ア、ぅう、んく、っあ、げとお、」
「恋人なのだから傑って呼んで欲しいな。ほら、名前で呼んで?」
「す、ぐる、?」
「そう、これからもそう呼んでくれ。」
ぬるぬると濡れた指先で陰核を擦り上げられると気持ち良くて頭がバカになりそう。なんで指が濡れてるかなんて考えなくてもわかる。漏れる声を押し殺した所でこうやって体に触れられたらバレてしまうのはちょっと、納得がいかない。すぐる、と嬌声混じりに名前を呼ぶと満足そうに笑うのはなんでだろう、でも、私もさっき名前を呼ばれて嬉しかったから同じなのかもしれない。同じだったらいいなって、思う。
傑が指の腹を陰核に押し付けて、そのまま転がすみたいに刺激してくるから腰が勝手に動いてしまう。明確な熱を持って、それを発散したがる体が私の意識とは別に反応を繰り返す。強過ぎる刺激に目の前がチカチカして、傑の腕を掴み首を振る。やだ、なんか、変な感じがする。
「や、すぐ、やだぁ、っへん、」
「ああ、イきそう?」
「やあ、やだって、やッ、ゃ〜…!」
一際強い刺激の後、大きく体が跳ねて頭が真っ白になった。腰から下が変だし下腹部が切ない、なにこれ。そういう年頃だから知識としては知っていた。自慰だってした事もある。それでも自分で触ってもこうはならなかったのに、疑問符は止まないし何より経験のない事で頭が可笑しくなりそう。どうにかなってしまうのが怖くて、目の前の体に抱き着く。
「やだ、すぐる、やだぁ、こわい、」
「イったのは初めて?」
「……ん、はじめて、」
「こんなに敏感なのにね、触るのが下手なのかもしれない。触り方を教えようか?」
「…それしたら、今すぐ、帰る、」
「拗ねるな、可愛いよ。」
軽い音を立てて口付けを落とされると絆されてしまう。惚れた欲目か、自覚して数時間だというのに。ていうかこんなのに上手いも下手もあってたまるか。戯れている間に少しだけ体の熱が落ち着いて、無意識に込めた力が抜けていく。傑の指がまた膣口に触れたけど、今度は痛みはなく飲み込んだ。痛くはない、ちょっとだけ苦しいけれど。
「〜ぅ、ふと、い、」
「それは指じゃない方で聞きたいかな。」
「ばか、えっち、ッん、」
「今えっちなことをしてるのに、今更?」
やめてくれ、恥ずかしくなる。ていうか傑の口からえっちとか聞きたくなかった。引くのが普通だと思うんだけど、なんか、可愛く聴こえてしまったのが一番良くない。なに、アンタの見た目でえっちとか、なんなの。むしゃくしゃしたから目の前の首筋に唇を押し付けるとナカに潜った指が少し跳ねた。
「煽るな、って、言ったつもりなんだけど?」
「傑も、したじゃん、」
「私は良いんだよ。」
「意味わか、ン、っは、んん、」
粘液を纏った指先が何度も出し入れを繰り返して少しずつ拡げていく。圧迫感はまだ少しあるけれど、その内慣れるのかな。そうやって時間を掛けて暴いていた筈の指が突然引き抜かれ、驚いて声を掛ける間もなく傑の体が腕の中から滑り抜けていく。
「すぐ、」
「目は閉じていた方が良いよ。」
「何言っ、ア、ッあ、やだ、や〜っ、」
べろ、とさっきまで指で触れていた陰核に濡れた感触。その感触が何なのかは、見なくたって分かる。ぴちゃ、ぢゅ、と酷く濡れた音と吸い上げる音が静かな部屋に何度も響く。言われた通り目は瞑ったから視覚的な刺激や恥ずかしさはないけれど、その分次は何をされるかなどの視覚的情報もない。視覚を塞げばその分触覚や聴覚が欠けた分の情報を補完しようとするから、余計に刺激を拾ってしまう。陰核を舐めていた舌先が膣口に触れて、押し込まれる。指程の長さはない、でも指に比べて柔らかく濡れている分、痛みも圧迫感もない。
食事の際に味を知るソレ、その舌の厚さや熱を私はもう知っている。だからそうされる事が酷く羞恥心を煽り、でもそれ以上によく分からない感情が胸を占める。そんなところを舐めないでって思うのに、なんの躊躇もなくそこに口を付けた傑に興奮してしまった。
「もぉ、や、ってば、ァ、ん、」
「気持ちいいくせに。」
「〜ッ!ばか、えっち、っひ!やだ、ごめ、ごめんなさ…っ、やらぁ、」
どうしたら良いか分からなくて謝ってしまうと傑は最後に陰核を強く吸い上げてから、口が離れる。許されたのかと薄らと目を開けば濡れた口元を拭う傑が視界に入って死にたくなる。なにこれ、なんのプレイなの。色んな物に押し潰されそうになっている私を放ってまた指が入り込む。今度は圧迫感も少ない。
「だいぶ解れたね、痛くはないかい?」
「痛くはない、けど、ッあ、」
「流石にナカではイかないか。」
ぐちゃぐちゃと粘着質な水音に空気が混じって耳を塞ぎたくなる音がして、指が増える。何本入ってるかは怖いから見たくないし聞きたくもないので触れない。
「そろそろ入るとは思うんだけど、いい?」
「だめって、言ったら、どうす、んの?」
「良いよと言うまで舐めてみようかな。」
「いい、入れて良いから、やだ、絶対、や、」
「そんなに嫌がるか?気持ち良さそうだっただろう。」
気持ちいい、でもそれ以上に精神的なダメージが大き過ぎる。ずる、と指が引き抜かれて喪失感が襲う。傑が少し動いて、それをぼんやりと眺めていたらコンドームが視界に入る。当たり前だけど、持ってるのね。包装紙ごとコンドームを咥えて、ベルトが外れる音が生々しい。見るのも怖いけど何も分からないものが体内に入るのが怖くて、恐る恐る覗き込む。そして見た事を後悔した。さっきまでのふわふわした意識が全部どっかに行く程の衝撃。
「無理無理無理無理!!でかいでかいでかい!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!絶対裂けるじゃん!!」
「こらこら、逃げない。大丈夫、この年齢で合意の元行ったSEXで死んだ人はいないよ。」
「傑は入れる側だから痛くも怖くもないでしょ!?」
「これだけ狭ければ私だって痛いさ。」
「むりだって、しんじゃうって!」
びいびいと騒いでいる私に笑顔で返す傑。これは引く気がないと言う事だろうか。なにこの羞恥心で死ぬか物理的に死ぬかの二択。デットオアダイ?兎も角、一旦感情の整理をしたくて傑の手を掴むと傑は笑顔を浮かべたまま、首を傾ける。かわいこぶってるんじゃないよ、こちとら死ぬかどうかの瀬戸際だぞ。
「ただいまぁ。」
ぴしり、と固まる。今の声、誰?子供みたいな声だったけど。あれ?そういえば弟が居るって言ってたような。さあっと青褪める私を他所に傑が小さく舌を打って、端に寄せられていた毛布で頭から包み込まれる。
「………ちょっと待っててくれるかい?」
「むっ、…え?あの、ちょ、嘘でしょ?」
「大丈夫、すぐ戻るよ。」
制服をそこら辺に放り投げ、アウトラインの広いボトムスを手に取った傑がさっさと身につけて部屋を出ていく。上裸のままだけど良いのか?同性、寧ろ兄弟なんてものはいないから距離感が分からない。とりあえず上体を起こして息を潜め、体を隠すように毛布に埋まる。傑が出たから部屋に来ることはないと思うけど、…でもローファーは玄関にあるままだ。来客があるのは一目で分かるし…挨拶に、とか、言われたらどうしよう。傑がベッドの下へと落とした制服を拾って身に付けるべき?何があっても良いように落ち着かなければ、と耳を側立てる。
「おかえり、駿。」
「ただいま、…兄さんなんで服着てないの?」
「汗をかいたからシャワーを浴びようかと思ってね、丁度服を脱いだ所だったんだよ。」
「ふうん?…あ、図書館で絵本の読み聞かせがあるんだけど、行って来ても良い?友達が外で待ってるんだけど…。」
「ああ、構わないよ。友達が待っているなら早く出た方が良いね。でも、気を付けて行ってくるように。」
「うん、いってきます。」
ガチャ、と玄関の扉が開く音と傑の見送りの挨拶が聞こえて胸を撫で下ろす。危ない、本当に。家族と暮らしているならこういう事もあるのか…次から気を付けよう。いや、次からってなに。付き合ってるから当たり前なのかもしれないけどさっきまで凶器じみたアレを見て怯え全力で逃げようとしてたのに次を考えてるってなんだ?扉に背を向けたまま、うんうん唸っていると背後から毛布越しに抱き締められて短く悲鳴が漏れた。びっくりさせないでくれ。
「お待たせ。」
「う、ん…。」
「暫く帰って来ないみたいだし、安心していいから。」
自分で掛けた癖に、あっさり毛布を剥ぎ取られる。さっきまでそうだったのに、一度意識が逸れたせいでこの中途半端な格好が恥ずかしい。無意味と分かっていても隠そうとシャツを引っ張っていたら、傑の手がシャツを肩から落とす。
「折角起き上がってくれたみたいだし、脱いでしまおうね。」
「そんなつもりじゃ、なかった、んだけど?」
「皺になるよ?」
今更じゃないかと思うんだけど、ばんざーいなんて気の抜けた掛け声と共に服が剥ぎ取られていく。全部取った、この男全部剥いだ。抗議しようとしたけど、それより前にベッドへと転がされて膝裏を掴まれ…開かれた。そりゃもうなんの躊躇もなく。
「ひッ!」
「乾いてしまったかな、少し触るよ。」
「や、っちょ、ばかばか!」
目の前で太い指が口元に寄せられて、舌が這って傑の指が唾液で濡れていく。目を逸らしたいのにそこから視線が動かせなくて、金魚みたいに口をぱくぱくさせる事しか出来ない。そんな私を気にもせず、濡れた指先がまた陰核を捉える。転がして、私が喘ぐとそのまま、ナカに指が入り込む。そんなに、キツくはない、けど。
「っう、すぐ、や、ぁっ、て、」
「うん、大丈夫そうだね。」
「ゔ〜っ、」
目頭が熱い、泣きそうになってるのは火を見るよりも明らか。傑は謝る気があるのかないのかわからない調子でごめんね、と私の目尻に口付けを落とす。それから、今度こそコンドームの封を切った。なにがどうなるのか気になる所ではあるけれど、またあの凶器を見たら今度こそ逃げ出しそうなので手元には視線を向けずに傑の顔を見ておく。そういえば一つに纏められた髪が下りてる所を見た事がない。手を伸ばすとそれに気が付いた傑が身を屈めてくれるから、髪をちょんと突く。
「髪、解かない、の?」
「暑いし邪魔だからね。」
「ふうん。」
「でも、喜雨が解きたいなら好きにして良いよ。」
じゃあ遠慮なく、と指先をゴムに引っ掛けて引っ張ると黒い髪が重力に従い落ちる。肩より少し下辺りの、外ハネ。ぴょんぴょん跳ねてるのは多分毛先を多めに梳いてるからかな。触ってるのがちょっとだけ楽しくて傑の髪の毛を指に巻き付けたりしていたら、また脚を抱えられた。
「じゃあ、入れるね。」
「……こわい、んですけど。」
「大丈夫だよ、痛かったら噛んでも良いから。」
ふに、と唇を指先が押し潰す。差し出された親指に噛み付くのも憚れるし、でもだからどうするのかと言われたら何も出来ない。でも多分、意識を逸した方が賢い。薄く口を開いて、親指を口に含む。関節が節くれだった、硬い指に舌を這わせて吸い上げる。さっき傑がしてたみたいに、なるべく丁寧に。
「………煽ってる?」
「んぅ?」
「優しくしたいんだけど、っね。」
「ひ!ンぅ〜…ッ!」
「き、…っつ、」
親指が咥内に押し入り、舌を押さえ付ける。一瞬迫り上がって来たけれど何とか飲み込んで、咎めるように傑を見たけど獣みたいな顔をしていて、問い掛けの直前に体を割り開かれて呼吸が止まる。指なんかとは比べ物にならない圧迫感に新手の拷問なんじゃないかとすら思う。じくじくと痛む下腹部に勝手に涙が出て来るし、噛まないようにと思っていたのに思い切り傑の指に歯を食い込ませてしまった。
「や、さしく、するって、言ったぁ、!」
「優しくしたいとは思っていたさ、でも、私も男だからね。そういう事をされると我慢が効かない。」
「ン、ぅあ、ァ、…ッは、やぁ、まだ、動かな、」
「大丈夫、激しくはしないから。」
ゆっくりと引き抜かれ始めた性器にまたあの痛みが来るのかと怯えるけれど、言葉通り激しい動きはない。時間を掛けて引き抜いて、それ以上の時間を掛けて押し込む。単調な動きで慣れるのを待っているんだと思う、多分。ゆさ、ゆさ、と一定の感覚で刺激をされると痛みだけじゃなくて焦ったいような気持ちが湧いてくる。
「痛いばかりは嫌だろうし、コッチも触ろうか。」
「すぐる、ね、待って、…っン、や!そこ、やだぁ、」
「嫌ばかりだね。」
私の口の中から半分程落ちていた指を引き抜いて、私の唾液で濡れた指先で陰核を撫でる。触れているかどうかの柔らかさを保ちながらもしっかりと快感を拾う触り方に腰が揺れて、そうして腹の中に収まった性器が意図せぬ場所に触れる。
「ンッ、あ、う、ぅ…ふあ、」
「少しは楽になったかな?」
「ぅ、んぅ、ゃ、」
「気持ちいい?」
「きもち、い?」
「じゃあ、もっとしてあげよう。」
さっきまでとは違って、今度は勢い良く引き抜かれてそこから同じ速度で膣壁を擦る。陰核程の分かりやすい刺激ではないけれど、硬い性器が何度もナカを擦るとお腹の下の方が熱くなった。意識をしないでも傑の性器を不規則に締め付けて、さっきの気持ち良さを体が勝手に求めてる。
俯いた傑の髪の隙間からギラギラした目が見えて、なんだか無性に、キスしたくなった。
「っ…ぐる、キスし、たっあ、ン、」
「おいで、」
呼ばれるままに両腕を伸ばせば傑が上体を倒してくれて、荒々しく口付けられる。キスしながら動くの大変だと分かってるんだけど、どうしてもキスしたくて。どうするのが正解かは分からないけど割り込んできた舌に吸い付くと傑の性器が跳ねたから、多分、不正解じゃなかった。仕返しみたいに甘く舌先を噛まれて、鼻に掛かる声が漏れる。それでも、なんだか、求めていたものが与えられたみたいな気分になる。
「すぐ、っん、ふ、やら、おく、もうむ、ぃ、」
「そんな事、言わずに、……っ、入れて、喜雨。」
「〜ッ、や、ああ、!は、ンン、ッう、」
ごつん、と奥の奥まで入り込んで来たから苦しくて仕方ないのに。目の前にある傑の額に汗が滲んで、何かを堪えるみたいな顔をするから、痛いのも苦しいのも、全部全部いいやって思う。求めてくれるのが嬉しいってやつなのかな。何度も何度も往復して、奥を突き上げる傑の体を掻き抱いて、背中に爪を立てる。
「あ、ぁう、ンく、っきゃ、…っあ!すぐ、もぉ、や、」
「っ、は…うん、終わろうか、」
「ひゃん、ッあ、あ、〜ッあ!」
「…っ、」
傑が両腕で強く抱き締めてくれて、お互い隙間がないくらいくっついて、そのまま内側が脈打つ。薄膜越しに吐き出されたであろうソレを想像するのは避けて、目の前の体の事だけ考える。汗ばんだ肌同士が触れて、二人の体温が混ざるみたい。溶けたら、どうなるのかな。ぼんやりしたまま首筋に鼻先を擦り付けると枕とはちょっとだけ違う匂いがして、でもこっちの方が好きだなぁと思う。
「もう一回する?」
「しない、ばか、えっち。」
「即答か、傷付くな。」
「もう体ガタガタだもん。優しくしてよ。」
「初めては優しくするけど、もう二回目だろう?」
「やってば。」
ぺち、と力の入らない手で背中を叩くと楽しそうに笑われた。私はもう指一本だって動かすのが億劫なのに、余裕そうで腹が立つ。体力馬鹿め、なんて心中だけで悪態を吐いているとゆさ、と萎えた性器がまた動く。反射的に跳ねた体を傑が抑えつけるみたいに体重を掛けてきて、正気かと顔が引き攣る。やだやだと首を振ったけど、傑は却下と言わんばかりにまた強引に唇を奪って来た。
結局何回したって?記憶にあるのは三回。初めてだったんですけどね。