理性は本能に勝てるのか
※性描写あり
17×19
バタバタとした日々も過ぎ去り、大学に通いながら合間に堅と連絡を取るだけの日々。乾とバイク屋を営む堅も中々に多忙で最後に顔を合わせたのはいつだったか、とふと講義中に思う。東卍の集まりという名の雑談だけするあの時間がなくなっただけで随分と会う頻度が減った。ルーズリーフに板書を書き留めながらしばし唸る。今日の午後は空きコマで、昼には終わる…軽く何かを差し入れに行くくらいは許されるだろうか。堅の予定も仕事としか聞いていないのでもしかしたら顔を出したとて誰も居ないか乾のみ居る場合もゼロではない、悩む。
…とかなんとか講義中に頭を捻らせていたが、考え込んでも仕方ない。アポなしで行かなければ良いだけの話じゃないかと結論つけて大学を出ると同時に携帯を操作して堅へと電話を掛ける。数秒のコールの後、堅の声が聞こえた。
「どうした?」
「…顔見に行っていい?」
「構わねぇよ、ただ迎え行けねぇけど。」
「自分で行けるわ。」
くつくつ笑う堅を遠くから呼ぶ声が聞こえて、一言二言のやりとりを挟んで通話が終了する。とりあえずなんか買ってくか…三人分の昼食を用意してD.Dモーターへと足を運んだ。
「お疲れー。」
「そっちもお疲れさん、迎え行けなくて悪かったな。」
「あんたの彼女もういい年だから一人で来れるんだわ。」
「…いい匂いする。」
「乾もお疲れ、昼買って来たから休憩中ならどう?」
ひょいと顔を出した乾も呼んで裏の休憩室みたいなところで三人で買って来た弁当を広げる。何が好きかわからなかったので三種類、ハンバーグと唐揚げと野菜炒めという無難なところを選んでみた。じゃんけんするかと提案されたが残った物でいいと伝えれば熾烈な唐揚げ戦争が勃発し、じゃんけんの末に無事に乾が唐揚げを勝ち取った。堅はハンバーグを選んだので野菜炒めを取る。流石育ち盛り、肉の人気が凄いな…なんて考えてたら乾が缶のお茶をくれたのでありがたく受け取り三人で昼食となった。結局唐揚げとハンバーグを交換してるからもう最初からそうしてろよとは思ったがそっと飲み込む。
「ヨメも唐揚げ食うか?」
「んーん、平気。」
「ハンバーグは?」
「なんで私に食わそうとするんだ、お前らは。」
とりあえず二人の米の上に野菜炒めを乗せてやれば大人しくなったのでこっちも食べたかっただけかもしれない。どうせ食べ切れないから後で堅に流れていくのだけれど…まあ、いいや。雑談混じりに進む昼食の食べ切れなかった分を堅に押し付けてから冷えたお茶を飲む。とりあえず顔を見ることが出来たので満足っちゃ満足である。変にやつれたりもしてないから忙しい中でもきちんと食事は摂っているようで安心した。
「んじゃ、帰るわ。」
「…ドラケン。」
「おー、サンキュ。紗織、送ってく。」
「え、仕事戻るでしょ?平気だって。」
自分で帰ると言ったけど背中を押されて結局バイクの後ろへと乗ることになってしまった。何故。そのまま送られ、駐輪場へとバイクを停める堅に首を傾げていたらそのまま腕を取られて歩き始める。終始疑問符しか頭に浮かばないが、それを聞く前に玄関へと辿り着き、そのまま部屋へと上がる堅の背中を追い掛けた。
「は?仕事は?」
「イヌピーに任せた、今日はもう上がり。」
「嘘でしょ!?」
「本当。」
ひょい、と抱えられてソファに腰掛けた堅の膝の上に乗せられた。目の前に堅の顔があるのは随分と久しい、なんて思考を投げ出してたらあっという間に後頭部を捕らえられて唇が重なり、啄むように口付けられる。オイルと汗が混じった匂いに目の前がくらりとした。舌先に促されるまま口を開けば深く交わり水音を鳴らして舌が交わる。唾液が絡まって、ちゅうと舌を甘く吸い上げられるとゾクゾクして肩に手を置き服を握り込む。
「っは、…もう、まだ話してるのに、」
「久しぶりなんだから仕方ねぇだろ。」
「ちょっと、手、やらしい。」
「シャワー浴びるか?」
「……いい、ベッド行こ。」
堅の指が全身を伝う、バイク弄りで固くなった指の腹が肌を撫でる度に体が跳ねて汗が滲む。暑い、クーラーを入れ忘れたことを悔いている間もなく次々に刺激が送られて頭の奥が痺れる。堅の顎を伝う汗が私の肌に落ちて、それすらも何かいやらしい物に思えた。合間に気紛れに落とされる口付けを受け、悪戯に指先が弱い部分を撫でる。ぬかるんだソコに指が入り込むとぐちゃり、と酷い音がして死にたくなるけど堅の指はそんな思考ごと吹き飛ばす。
「ッ、ふ…ぅ、」
「…声、抑えんなって。」
「も、いいから…っ、」
「ダメだっつの。」
一人で乱れているのが恥ずかしい。せめて堅も服脱げと思うのにもたつく舌と絶え間ない刺激に喘ぐことしか出来ず、硬い生地を握り込む。垂れた前髪が擽ったく感じるのにそれを刺激として捉える体に呆れる方が先か、教え込んだ目の前の男を叱る方が先か。手前のザラついた部分に指先が触れればもう何をされるか分かってしまって、でも言ったところで止まってくれないのも知ってる。やだ、と口から溢れた言葉じゃ制止にならなくて結局好き勝手されてしまうのだけれど。ぐーっと押し込まれた指先が気持ちいいのは知ってる、けど今日はなんかいつもと違う、ような?気持ちいいだけじゃなくてお腹の中が熱い。自分の体のことなのに全然分からなくて、目の前の体にしがみついて首を振り助けを求める。
「や、堅まって、なんか、へん…ッ、」
「ん?気持ちいいだろ?」
「きもち、けど…ちが、ッ、」
ぐっ、と押し込まれた、その瞬間。何かがシーツを濡らした。堅が目を瞬かせて私の方を見てくるけど私だって何が起きたかわからないしむしろ教えてほしいくらいだ。だからこっち見るな。ない混ぜになった気持ちが整理出来ない私を放って堅が一度指を引き抜き徐に指を舐めるのが視界に入って色気のない悲鳴が漏れた。
「…潮だよな。」
「説明…!」
「オレも詳しくは知らねぇ。」
「可笑しい…だって一虎たちと見たAVと違う…!」
「何見てんだ。」
堅が知らないだけかと思いきや実際潮のメカニズムってよく分かってないらしい。AVがフィクションなのは理解しているけどこんな違うのか、女優さんはなんか出るとか叫んでたのに…こちとら気が付いたら出てたなんだが。ちくしょう、意味わかんない。うーうー唸りながら堅の肩を軽く叩いていればその手を取られてまたベッドへと押し付けられる。
「堅がいっぱい変なこと教えるから、私の体おかしくなっちゃったじゃん…!」
「……それは誘ってるってことでいいのか?」
「今私怒ってるんだけど!?」
「後で思い返して反省しろ。」
半泣きの私をそのままに続行しようとしてくる、酷い。せめてごめんとか言えないのか。いやでも謝られたところでどうにもだし、でもなんか、私ばっかり変なこと教えられてる。偶にはやり返してやりたい気持ちもあるけど、自分でも何がどうなったのかわからないまま丸め込まれる自信もあるので行動に移したことはないが。昔から普段は聞き分けが良いけどベッドの中じゃ堅に勝てた試しがない。でもそんなことを相談する友人も…居ないことはないが、多分桃も私とそう変わらないだろうから愚痴で終わる気がする。
「…私も、する?」
「風呂入ってないからまた今度頼むわ。」
「いや、アンタもさっきからシャワー浴びてない人の体好き勝手してるじゃん。」
「諦めろ。」
それは口でするのを諦めろなのか、イニシアチブを握ることを諦めろなのか。多分どっちもなんだろうけど。尖らせた唇が塞がれてまた膣口に指が触れ、ゆっくりとした動きでナカを広げる。暫くしてなかったからか、ちょっと苦しいような…でも痛みも不快感もない。やっぱり下克上は出来ないのかも…いや、寧ろ私が今下剋上されてるのでは?
「ん、…ッう、は、ァ、」
「奥にする?」
「やだ、ぁ…っ、ひ、ちょ、けん、ッ!」
「最近奥のが好きだよな。」
「〜っ、やぁ、も、いじわる…っ、」
濡れそぼっているソコに無遠慮に指が入り込み好き勝手に動かす。なんかもう最初からこうだったのか錯覚する程に堅の指が気持ちいい所にばかり触れて、声を抑えることも忘れてしまう。それでもなんとか一回くらいはやり返してやりたいと負けず嫌いが顔を出したので本能に従い、手首を捕らえたままの左手に擦り寄るついでに甘く噛み付いてやればナカで堅の指がぴくんと跳ねる。肉食獣みたいな目が見下ろして来て、ゾクゾクして肌が粟立つ。一回くらい絶頂まで持っていかれるかと思ってたけど堅が指を引き抜いてベットヘッドに手を伸ばすから、もう入れるみたい。暑いと文句を零しながらツナギを脱いで、ボクサーパンツが下される。触ってもない筈なのに腹に付く程反り返る性器にくるくるとコンドームが巻かれていくのをぼんやり眺めて。薄膜に包まれたソレが焦らすように膣口を撫で、期待で腹の奥の方が疼く。そんな私を知ってか知らずか、いつもはゆっくり入れるのに、一気に奥まで貫かれる。
「ひ、〜ッ!」
「…マジ?イった?」
「っは、ぁ、…まって、ちょっと、〜、んんん…ッ、」
「かーわい。」
目の前が弾けたのだけはわかったけど、逆に言うとそれくらいしか分からない。呼吸や思考が完全に止まってしまうから待ってって言ってるのに堅は待ってくれず、ギリギリまで引き抜いたかと思えば最奥をこじ開ける程に深くまで突かれてもう何も追い付かない。肌の当たる音と粘着質な水音、私の喘ぎ声ばかりが部屋に響く。いつの間にか解放されていた両腕で大きな体にしがみつくのが精一杯で、辛いほどの快感を与えてくる男に縋って助けを求めてしまうのが滑稽過ぎる。でも助けてくれるのもこの男しか居ないのだから仕方ないじゃないか。
「っれ、ま、ひぅ、ッンぅ、」
「舌回ってねぇ、ぞ、」
「むぃ、ってば、ばかぁ、っ!」
絶頂直後の過ぎる快感を受け止め切れずに堅の肩に噛み付いて抵抗にもならない講義をするけど、抽送する動きを助長するばかりで何にもならない。思考が融けるのが自分でも分かって、目の前の肌に薄らと傷を残していく。思考が戻って来れないまま、また絶頂へと導かれて背を反らし悲鳴混じりの嬌声を上げた。堅の性器が脈打って、そのまま薄膜越しに欲を吐き出しては荒い呼吸のまま唇を重ねて足りない酸素を更に失くす。肩で息をする堅がずるり、と性器を抜き取り気怠げにゴムの口を縛って捨てる。
どうしよう、足りない。もっと欲しい。
バカになった頭が求めるまま、柔らかくなった性器に触れると堅が驚いた顔で私の名前を呼ぶのが分かったけれど、それを聞こえないフリして胡座をかいた堅の下腹部に身を屈めて顔を寄せ咥内に含む。独特の苦さとゴムの味が混じって正直に言えばクソまずい、でも嫌じゃないから困った。
「紗織、こら、止まれ。」
「ン…、」
「ッ、んのやろ、」
さっき私が待ってって言ったのに堅も待ってくれなかったんだから私だけが制止に耳を傾ける必要もない筈で、ちゅっとリップ音を鳴らして先端に口付けて少しずつ膨らむ性器を唇で扱き喉の奥まで飲み込めば堅の太腿が跳ねて苦しくなる。さっきまで気になってた味も、もう私の唾液と混じってもう分からなくなってきた。半分、無理矢理離されて咎めるようにじとりと見上げるけど堅が凄い顔をしてた。男の人の顔、だ。
「わかってんの?」
「……もっかい、しよ?」
「あー、もう、知らねぇからな…!」
乱暴にコンドームを漁って取り出し、さっきまで私が舐めてた性器にまた薄膜が被るのを見てたらなんだか堪らない気持ちになってえい、と堅の肩を押す。倒れてはくれなかったけど、後ろに傾いたので良しにする。太腿を跨いで上からひたりと膣口に押し当て、自分で、ゆっくり飲み込んでいく。
「は、ぁ…おっき、…ぃ、っ」
「んと、どうしたんだよ…っ、」
「わかん、な、…堅、ぎゅー、して、」
自重で奥まで入るのが分かる、お腹の中がいっぱいで苦しいけど、気持ちいい。くらくらする。上手く動く方法なんて分からないけど、聞き齧った知識を引っ張り出して来て奥の方にぐりぐりと押し付けるように動く。私は気持ちいいけど堅は気持ちいいかな、わかんない。
「えっろ、」
「〜ッ、…堅は、きもちい、?」
「気持ち良いよ。」
大丈夫、と背を撫でられる。それが妙に安心して、上手く出来ないなりに上下に動いたり、腰を回してみたりしてみる。自分が気持ちいいばっかりで不安にもなるけど、堅が私を見る目が甘くてやらしくて。ぎゅうと胸が苦しくなって、肩に擦り寄って額を押し付ける。
「ごめ、っ、うまく出来な、くて、」
「…悪ぃ、もう無理。」
「ひ、…あ゛ッ、ンンン〜ッ!」
腰を掴んだ大きな手が下から思い切り突き上げて来て、目の前が弾ける。途切れる呼吸を整える間もなく繋がったままベッドへ倒されて私の動きなんて戯れてるようなものだと言わんばかりに繰り返される力強い抽送。ゴツゴツと子宮口を刺激されて意識を手放しそうになるのに強い刺激がそれを許さない。でもそんなの奥歯を噛み締めて私に影を落とす堅の顔を見たら全部どうでもよくなっちゃう。したったらずに名前を呼んで、肌を求めて腕を伸ばす。逞しい腕に包まれたらもう何も考えられなくて、うわ言のように吐息と嬌声を溢す。
「イく、…イっちゃ、」
「いーよ。」
「やら、っ、けんも、ひッ、」
「…オレも、だから。」
最奥に押し付けられた先端が圧迫するように擦り付けられてぎゅうぎゅうと堅を締め付けてまた達する。何度か揺さぶった後に奥へと吐き出され、そのままふつりと意識が途切れた。
「………死にたい…。」
「出てこいって。」
目を覚ましてすぐ、機嫌の良さそうな堅を視界に入れた。ぼんやりする頭で擦り寄りに行き、そして目の前にあった歯形を見て完全に意識が覚醒した私は頭から布団を被り現在籠城中である。薄いタオルケットなので防御力はほぼゼロに等しいがそんなことはどうでも良い。なにを、なにをした!私は!あんだけ何も考えられずに本能的に行動したというのにハッキリと記憶に残っている、叫び出したい。なんなら今すぐにでも鍵のかかる部屋に飛び込んでしまいたいけれど、腰が立たなくてそれも叶わず。
「さーおーりー。」
「むり、本当無理だから。私の財布使ってご飯適当に頼んでいいから!ちょっと待って!」
「待たねぇっつの。」
「やーだー!ばか!堅のばか!」
悲しきかな圧倒的な力の差でタオルケットをひん剥かれた。堅の肩やら腕やらにめちゃくちゃ噛み跡らしきものが残っていて羞恥心が募る一方である。半分泣きそうになってる私の両頬を堅の手が包んで強制的に視線を合わさせられる。酷い、極悪非道。
「可愛かったって。」
「今そんな感想求めてない!」
「いつもあれくらい情熱的でもいいけど?」
「やだ!」
「…幼児退行してね?」
「ばか、堅のバカ。」
「ダメだ、語彙力どっかに捨ててきてんな。」
ちゅ、と柔らかく目尻に口付けられて髪を撫でられる。兎に角顔を見られたくない一心で両手で堅の手首を掴むけれど頬を包む手は緩まないし、それはもう楽しそうに笑われた。絶対許さん。堅に虐められたってマイキーにチクってやる。詳細は絶対話せないけど。
「ゔ〜…。」
「ハイハイ、オレが悪かったから。」
「暫くセックスしない…!」
「今日の二の舞になんじゃね?」
べちんと背中を叩くけどびくともしないし寧ろ笑いが深まる一方だし。落ち着かせるみたいに背中をとんとんと一定のリズムで掌を弾ませる堅に少しずつ冷静を取り戻し始めたけど、やっぱり悔しいのでごつりと胸元に額をぶつけておく。どこで可笑しくなったんだ、と思うけれど記憶を引っ張り出すと思い出したくないことも思い出しそうなので飲み込んだ。
「お風呂入りたい…。」
「連れてってやるけど、騒ぐなよ。」
何を今更騒ぐことがあるのか。数時間前の醜態を思えば何が来ても驚かないわと首に両腕を回して抱き着き運んでもらう。鏡を見て、私の胸元に無数に散らばる赤い鬱血痕と視界に入った堅の背中の引っ掻き傷に声にならない悲鳴を上げたのはものの数分後の話だった。