緑の瞳の、


※ぬるい性描写があります


兄弟あまり似てないね、とよく言われる。そしてそれは自分でも思うから思わず苦く笑ってしまう。昔、凄く幼かった頃は大好きな兄さんと似ていないと言われたら泣き出してしまっていたけれど、この関係になってから似てないのも悪くは無いのかな、なんて思うようになってしまった。我ながら現金だなぁって、思う。でも、同じマイノリティだったとしても明らかに兄弟よりかはただのゲイカップルに間違われる方が良いなと、そんな風に思ってしまう。隠し事をする気はないんだけどコレは兄さんには言えないなぁ。

そんな似てないボクら兄弟だけど身長はそんなに変わらない。とはいえそれは身長だけの話で、兄さんはボクよりずっと逞しい体をしているから触れ合う時に大きな差を感じる。だから、最初は凄く戸惑ったけど今は兄さんの膝に乗って背を預けていても落ち着くだけだ。筋肉がある人は温かいというのを知ったのは兄さんと、親友の存在。親友に関しては彼のパーソナルスペースが異常に狭くてスキンシップが激しいだけで疚しい気持ちはない、お互いに一切ない。ボクはずっとずっと兄さんが好きで、兄さん以外も兄さん以上もボクは知らない。触れる体温が心地好くて微睡んでしまうと、兄さんは楽しそうに笑った。


「眠いかい?」
「…あったかくて。」
「膝の上で眠くなるなんて駿は猫みたいだね。」

猫じゃないよと返したかったのにそれより先に兄さんの真っ直ぐな髪とは違ってぴょんぴょん跳ねてうねるボクの髪を大きな手が撫でる。太い指が髪を梳くように撫でて眠気を促す。でも、久し振りに二人で過ごせるのにこんな早い時間に寝てしまうのは勿体無くて瞬きを何度も繰り返して居るともう一つの手がボクの手を包む。手の甲から包み込んで指を差し込んでくるからこれは指を絡めて繋ぐと言うよりかは…拘束?兄さん、これ拘束だよ。

「兄さん?」
「眠気覚ましに、イイコトしようか。」

耳元に直接吹き込まれたお誘いは吐息混じりで、ぞくぞくと迫り上がる疼きを逃がそうと身を捩ると兄さんがくつくつと喉で笑って、そうしてさっきまでボクの髪を撫でていた筈の手はいつの間にかボクの服の中へと潜り込んできた。いつも通りの薄手の服を選んでしまったボクは、期待していた、わけではない。



どれくらいの時間が経過したのか。体感で言えばもうとっくに朝日が登っていても可笑しくないけれど、カーテンから光が差し込むことはないからきっとまだ夜と呼ばれる時間なんだろう。もはや感覚のなくなってきた場所を、兄さんはまだやるの?ってくらい、丁寧に解し続けている。達する事もなく続く行為に息を切らしながらもういいと言っても、兄さんは止めてくれない。もう少しくらい性急になって欲しい、いつだって余裕があるのが狡い。ボクは、いつもいっぱいいっぱいなのに。ぐちゃぐちゃの思考回路はろくな考えが浮かばなくて、それでも少しばかりの悪態をつきたくて強く噛んだ唇を解放したタイミングで兄さんの指が前立腺に触れて、大きく声を上げてしまう。これが嫌で噛んでたのに、酷い。セックス中の兄さんは、意地悪だ。

「っ、ふ…にいさ、ッ、もうい、から、ぁ、」
「もう少しね。痛いのは嫌だろう?」
「や、だぁ、っ、」

いじわる、なんて言えばいいのかな。兄さんがボクを労わってくれてるのは分かっているけれど、心配するような眼差しの中にそれ以外の感情が見え隠れしてるからきっとそれだけじゃない。ぐずぐずになってしまう前に、きちんと意識がある内に兄さんの熱を感じたいのに。満たして欲しいのに。普通の人より太い指がもう三本入っているんだからもう入る筈なのに!

「に、さん…っ!」
「なあに、駿。」

なんでも言って、そんな顔をしている癖に指の動きは一つも止まらないし思い出したみたいに良いとこを撫でる。引き攣った声が上がると兄さんは楽しそうに笑う。ボクが何を言いたいのか分かっていて、それでも言わせないつもりなんだ。やっぱり、兄さんは意地悪だ。


「……っ、て、」
「うん?」
「もう、いれて、っ、…にいさんが、欲し、ッい、」
「…良く出来ました。」

ずるり、と一気に引き抜かれて目の前がちかちかする。何度も中途半端に熱を上げた体はそれくらい、限界。それでもいざとなれば目の前に垂らされた御褒美に期待してしまって、思わず腰を揺らす。兄さんはそれに気が付いてまた笑う。それから漸く、兄さんのが、触れる。時間を掛けて解された場所がひくついて、必死にソレを飲み込もうとしてるのが自分でも分かって死んじゃいそうなくらい恥ずかしい。誤魔化したくて目の前の体に手を伸ばすけれど首に絡ませる前に兄さんの手に捕まって、そのままシーツに押し付けられる。手首の辺りに兄さんの体重が掛かって、解けない。少しだけ不服。偶にはぎゅうってしたいのに。

「入れるよ。」

拗ねた態度が漏れるよりも先に、静かな部屋に声が響く。此処で体が硬直してしまうと飲み込むのが辛いし、兄さんだって辛いだろうからなんとか意識を逸らしなから深く息を吸い込む。それから少しだけお腹に力を込めて、兄さんが入りやすいように手助けを。そんな風にタイミングを合わせたら兄さんの太くて大きいのが、腹を埋めていく。

「ぅ、あ…ッ」
「…そう、上手だね。」

ゆっくり、ゆっくり。少しづつ飲み込んでいく。最後まで入ると兄さんが動きを止めて、ボクの鼻先にキスしてくれた。詰めた息を吐き出してうっすら滲んだ涙を兄さんの唇が拭って、そうして視線を絡ませると余裕そうに見える兄さんだけど、額にはうっすら汗が滲んでいた。それに綺麗な柳眉が眉間に皺を寄せていて、視線が蕩けそうなくらい、甘い。こんなのダメだ、疼いてしまう。今までもそんな顔してたの?なんて、思ったらもうダメだった。ツンと目頭が痛くなって視界が滲む。折角兄さんが拭ってくれたのに。

「駿?どうしたの?」
「うれし、くて、」

まるでこれが初夜みたいな言葉が口から漏れる。もう数え切れない程に体を重ねた筈なのに、どうして急にこんな気持ちになっているのか。全部全部兄さんのせいにしてしまいたい。今こんなに心臓が締め付けられてるみたいに痛いのも、制御出来なくなった涙腺も、どうしようもなく幸せなのも。

「嬉しくて泣くの?…まあ、お前の涙も可愛くて愛おしいけれどね。」
「にいさ、の、タラシ、ぃ、」
「待て、私がいつ誰を誑し込んだと言うんだ。」

心外だと言わんばかりの顔と声音に笑ってしまいそうになった。それでも、出て来るのはやっぱり笑いじゃなくて、しゃくりを上げながら泣くことしか出来ない。兄さんはそんなボクに呆れる事もなく、もう一度涙を拭ってくれる。目が溶けてしまうよ、なんて言うけれど兄さんの目の方が余程蕩けてる。

「駿。」

とろんと、とけてしまいそうだ。原型を留めないくらい、氷が水になるみたいに。優しい声で呼ばれてしまうとすぐこうなってしまう。それが少しだけ悔しくて、でも心地好くて。手首を捕らえた手が離れて手の甲がボクの頬に触れるから擦り寄ると兄さんは目尻を下げて笑う。うごいて、と言ったけれど言葉にはならなかった。それでも兄さんは分かってくれて、緩やかに体が揺さぶられる。

「っあ、あ、…ッん、」

馴染む時間があったからか、それとも時間を掛けて体を暴いたからか、圧迫感も痛みもなかった。正直こんなの、気持ちいいだけじゃない。内蔵だし、正しい使い方じゃないんだから当たり前だけど。それでも兄さんがボクを求めてくれるのが嬉しくて、繋がっている時間が愛おしくて。だから本当は、本当はね。

「ッ、いさ、…!」
「な、んだい、」

少しだけ、余裕がなさそうな声。嬉しくて、胸の辺りが痛くて温かい。伸ばした手は今度こそ首に回すことが出来たから距離を詰めて鼻先を触れ合わせ、兄さんの髪を纏めるゴムを指に引っ掛けて解くと癖のない髪が落ちてくる。お互いしか、映らない。驚いた顔の兄さんの唇を奪って、ちゃんと聞こえるように。

「ボクで、きもちよくなって、」

大きく目が見開かれたのは一瞬で、すぐにボクは快感に絡め取られる。お腹が破けそうなくらい、激しく揺さぶられて口からはもう喘ぎ声しか出ない。女の子みたいに高い、それでもやっぱり男の声なのに。それでもまだお腹を埋める質量は変わらなくて、それがどうしようもないほどに嬉しい。

「ひぎ、ッあ、んん、く、あ、ンンン〜ッ、」
「っけ、る…!」

きもちいい、ぜんぶ、ぜんぶ。兄さんがくれるから。掠れた声が鼓膜を揺らして、そうして底のない沼に落ちたようにもう這い上がれなくなる。それでもいい。嘘、それが良いよ。兄さんがくれる全部をボクだけのにしたい。与えられる物をひとつも零さずに、ボクが全部飲み込むんだ。だから、はやく、

「イ、っちゃ、…っにいさ、!」
「私、も…っ」

はやく、ちょうだい。
ぜんぶ、ボクのだ。



「ほら、水飲むだろう?」
「ありがと。」

倦怠感に苛まれながらも上体を起こす。差し出されたペットボトルは一度開封していたのか余り力を込めなくても簡単に開いたから、零さないようにしながら少しづつ流し込む。冷えた水が火照った体には少し冷た過ぎたけれど、それ以上にかさついた喉が潤されることの方が大きい。兄さんが適当に服を選んで羽織るのをぼんやり見ながら、また迫り来る眠気に抗う。目がしぱしぱする。

「寝る?」

ボクの手からペットボトルが消えて、そのまま兄さんの口元へと移動するのがなんだか気恥ずかしくて、少しだけ、ほんの少しだけ眠気が覚めた。さっきまでもっと凄いことしてたんだから回し飲みくらいで照れるのはどうなの、と自分に言い聞かせる。そんな事をしていたらこつん、と額に冷たいペットボトルが触れて思わず肩を跳ね上げてしまった、びっくりするじゃないか、兄さんのバカ。

「お返事は?」
「……あ。ごめんなさい…えっと、もう少しだけ、起きてたい、な。」
「うん、良い子。じゃあもう少しだけね。」

ペットボトルを枕元のチェストの上に置いて、ボクの横へと体を滑り込ませ、枕に沿って腕を伸ばす。そのままおいで、と呼ばれた。腕枕をしてくれるつもりなんだとワンテンポ遅れて気が付き慌てて腕の中へと潜れば肩まで布団を引き上げて、ボクの腰を抱き寄せるから僅かにあった筈の隙間はなくなった。こんなにくっつくなら服着なくて良かったかも、なんて、言えないけど。


「明日の予定は?」
「…喜雨と空護が帰ってきたら、一緒にご飯食べる。」
「お前達は本当に仲が良いね。」
「うん、二人とも大事な親友なんだ。」

ただでさえ眠かった所に運動までしたからか、兄さんの腕枕と寝かし付けようとしているとしか思えない背中を叩く手のせいか、結構睡魔が手強い。今すぐにでも眠ってしまいそうなくらい、眠い。それでもまだ兄さんと話していたくて。とろとろと微睡みの中で落ち着いた、意識しているのかいつもより少し低くて潜めるみたいな兄さんの声を聞いていると本当に寝てしまいそう。

「…にいさん、は?」
「私?私は明日は少し外に出るよ。近場だけれど依さんに一級が居るかもしれないと言われているから祓いに行くことになっているんだ。出る時間によるけれど日付が変わる前には帰って来れると思うか…眠かったら先に寝ているように。」
「ん…お昼ご飯は、一緒に、」

食べようね、まで言えた記憶は残念ながらなかったけれど。それでも翌日、起きた時には兄さんがちゃんと居てくれて、二人でお昼ご飯にお箸で食べるパスタっていうのを食べに行った。妹分たちに少し申し訳ないなと思ったけど、偶にはボクも兄さんを独り占めしたいから、許して欲しい。今度二人が欲しいって言っていたペンケースを買ってあげよう。一緒に何処かに出掛けるのは難しいから他にも何か、喜雨に見繕ってもらおう。そして独り占めの延長で任務前の兄さんにキスをしたらまたあの蕩けそうな目で見られてしまって、喜雨と空護と合流する前に熱いシャワーを浴びておこうと心に決めた。


ボクと兄さんは似てない。でも、兄さんが兄さんで、ボクがボクであるのなら、もうそんなことはどうだって良い。…それと、余裕がない兄さんの顔は色っぽ過ぎて、心臓に悪い事を学んだ。似てないからこそ、なのかもしれない。こんなことを考えてるボクを知っているのは、兄さんだけがいいな。なんとなくだけどそんな事を思った。お互いしか知らない顔っていうのにキュンとする、なんて書いてあった何かの記事に今更だけど同意をしながら、浴室へと向かった。



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交換用に書きました、その内手直ししたい。



タルト有馬す。