たんぺーーーん
やちよとはるちよ
三途春千代(さんずはるちよ)と
春日井弥千世(かすがいやちよ)
夜中にモゾモゾと何かが動く感覚がして目が覚める。
春千代くんになんだこの雑巾みたいな布団はって罵られながら買ってもらったお気に入りの掛け布団を捲ると見慣れたピンク色の頭…高校生時代は綺麗な白色だったのにどういう心境の変化なんだろう…というかまず違法薬物やるような人じゃなかったしうーん、やっぱりどんな心境の変化があったんだろうか…
モゾモゾとお腹の辺りで居心地のいい場所を探す頭をそっと撫でるとじんわりとお腹に湿った感覚、これは違法薬物でバットとリップしてただでさえ情緒がジェットコースターしてるのに急降下しちゃったんだろうなぁ…可哀想に。高校生の時は何だかんだ楽しそうにしてたのに違法薬物をやらなきゃやってられないくらいしんどい事が多かったんだろうなぁ
ベソベソと声まで聞こえ始めた春千代くんに声をかける。
「どうしたの?なんか嫌な事あったの?」
「やちがオレ?と結婚してくれねぇ…」
「うん?」
ちょ?っと耳を疑っておかしな返事をした自覚はある。
それを聞き返しと捉えたのか春千代くんはまたうぅ…なんて唸った後に同じ事を繰り返す。
「なんで結婚してくれねぇんだよォ…」
「いやぁ結婚はちょっと…無理かなぁー…なんて」
あぁ…なんてこったい、春千代くんガチ泣きムーブ入っちゃったみたいでさっきまでじわぁ…だった湿った感覚がびたびたになってきてるぅ〜
「やちはオレが嫌いなんだろ!?」
「えぇ〜…むしろ春千代くんを嫌いだったらお互いタダでは済んでない事にもうなってるよ…春千代くん違法薬物やってるし、春千代くんは殺しにくるだろうし…」
ガバァっと被ってた掛け布団を振り払って勢いよく叫ぶけど夜中だから本気でちょっと声を抑えよ?防音凄いお高いマンション?億ション?で良かった…家賃がいくらかも分譲なのかも知らないったら知らない。
春千代くんにある日突然連れてこられて『今日からここがオレたちの家な』って機嫌よく言ってきたその日からこの家に住んでるだけなんだもん…
なーんて現実逃避してると春千代くんが顔をその大きい手でホールドしてきて自分の方に無理矢理向ける、痛い…首がグキって人間の首からしちゃいけない音した…
「春千代くん痛い…」
「やちが悪ぃ」
「なんで?」
「結婚し」
「ないからね?」
「なんでだよォ」
涙に濡れてビー玉みたいな目が何時もよりキラキラしてて綺麗だなぁ…結婚しろって迫ってくるのはちょっとアレだけど…うーん、違法薬物やってて反社会的組織の幹部で元暴走族の時点でダメだったなぁ、解散だ。
ベソベソ泣いてる春千代くんの顔を見ながらぼんやり考えた後、絶賛メンヘラバーストしてる春千代くんが激昂ヒステリックかまして殺しにかかってこないよう、刺激しないようのんびりとした口調と柔らかい声音を意識して口を開く。
「春千代くんが結婚したいのって誰なの?」
「あン?やちに決まってんだろ…」
「フルネームで教えてくれる?」
「かす…カス…カスガイ…ヤチヨ…」
「うっそでしょ…?」
思わず真顔にもなるよね、それにスンって春千代くんの顔からも表情が抜け落ちて頭を慌てて撫でると表情が緩んで一安心。
嘘だろこの人、結婚迫ってる相手…しかも高校生時代から付き合ってるのに一瞬フルネーム出てこなかったよ…?しかもカスカス言われて若干傷付く…
「そうだねぇ、春日井弥千世だねぇ…」
「わかるに決まってるだろ」
「そうだねぇ、ごめんねぇ?」
いやわかってなかったよ春千代くん。
「じゃあ、結婚したいって言ってる人は?」
「頭イッたのかよ…三途春千代」
「そだね、春千代くんだ。」
このやり取りに飽きてきたのかぼすっと勢いを殺さないで胸元に頭を落としてくる春千代くんに痛みに声が出ないよう一瞬声を詰める。
そのままパジャマのボタンをいじり始めた春千代くんの頬だの目の下だのをやさぁしく指先で撫でる、凄い泣いてたから明日瞼が腫れないといいけど…
「春千代くんはなんで結婚したいの?今のままじゃダメなの?」
「…オレのもんだってハッキリ証明出来んだろ…それにガキだって出来たら…お前だってオレから逃げらんねぇだろ?」
「まって♡」
「何が」
まてまてそこの違法薬物乱用者止まりなさい。脳内でいまや大御所芸人がタバコの箱を口に添えながら叫び始める。
「結婚はともかく子供まで欲しいの?」
「そりゃ結婚すりゃガキだって出来んだろ」
「出来ないよ…?」
「なんでだよ」
脳内までぶっ壊れてるこの人。高校生時代から付き合ってて、一緒に住んで早…早何年だ…?やばい忘れた。
そんな事はどうでもいい、違法薬物やりすぎて脳みそ壊れちゃってるどうしよう、明日…いやもう今日か、今日日が登ったらいくらかかってもいいから脳ドック連れてこう。春千代くんのスマホ借りて他の幹部の人に連絡してお休みさせますって電話してすぐに連れてこう、なんだったら今すぐ救急車呼んで病院に連れていきたい、そしたらもう何があってもいいから違法薬物止めさせよう。
「春千代くん…どんなに頑張っても日本じゃ…いや、日本じゃなくても男同士で結婚は出来たとしても子供はできないよ。」
「…………そうだった…」
納得いったのかスペキャ顔晒してるけど春千代くん、貴方は明日病院です。
10何年の付き合いの人間の性別も忘れて結婚だの子供だの強請ってくる脳ミソも頭髪もパッションピンクちゃんは人間ドックフルコースです。
幾らイカれててもクスリやってても人殺しても構わないほど愛してるけど、俺の事を一つでも忘れるお馬鹿ちゃんが悪化しないようにしないといけないからね…。
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