ばさり、と目の前に差し出された真っ赤な薔薇の花束。目にも鮮やかなそれはとても綺麗だが突然の事に思わず目を瞬かせてしまう。

「なに、急に…。」
「え?!あ、えっと…。」


事の始まりは10分ほど前。呼び出され恋人への部屋へと出向くと慌てた様子で何かを後ろ手に隠して居たのは気が付いていたけれど何か問い詰める事も無く放置した事から始まる。ソファに座るレイテッドの隣に腰掛けて他愛もない話をして居たら突然、花束を差し出されたのである。

とりあえず受け取るべきなんだろうけど…いやでも今日なんかの記念日だっけ?付き合い始めた日ではない筈。必死に頭を回転させても全くヒットしない。記念日じゃないならなんだ。日頃の感謝?改めた告白?色々想像は出来るけれどそんな事をする人だったか。レイテッドはそんなイタリアーノじゃなかった気がするんだけど。


とりあえず大人しくレイテッドの次の言葉を待つか、と決めたところでふと先日買い物に出た事を思い出した。通りすがりの花屋にダズンローズ、というものが書かれていた気がする。

感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠…だったっけ。12本の薔薇でそれらを誓うといった意味だった気がする。良く覚えてたな、私。そっと薔薇の数を数えれば丁度12本。レイテッドはまだ口籠もっている。


さて、どうしたものか。言葉を待つより行動した方がお互いの為な気がしなくもない。薔薇みたいに真っ赤になったレイテッドの手からそっと花束を取ると慌てた様子でこちらに目が向けられた。

花束の中から適当に一本引き抜いてレイテッドに差し出すとレイテッドは目を丸くして赤くなった顔を更に赤くさせた。

「違った?」
「……合ってる。」

それから一月後、指輪を用意したら同じ事を考えていたらしいレイテッドと互いに指輪を贈りあったのはなんかもう、いい思い出って事にしておきたい。

薬指に光るふたつの指輪は輝いている。その手でそっと薔薇に触れればなんだか胸が暖かくなったけれどそれはなんか悔しいから教えてあげない、と小さく心に決めて。さて、まだベッドで眠る愛しい旦那様を迎えに行く事にしようか。どうせだから緩む頬をそのままに。




ダズンローズの誓いを君に。





/ きなこ