賑やかなパーティー会場に足を踏み込む。色違いの瞳は目立つし、それを覆い隠す眼帯もドレス姿では更に目立つだろうとカラーコンタクトで瞳の色を青に変えてある。短い髪もコウの手により綺麗に纏め上げられ、ボスの用意したワインレッドのドレスも合わせて場には馴染めた。3時の方向に腕を組み主催と話し込むコウとポラリスは"仲睦まじい夫婦"を見事に演じ切っているし、ポラリスは普段の豪快さをどこに隠しているのか不安になる程に淑やかな微笑みを浮かべている。あの二人、育ちが良いとは聞いていたけどこんなに馴染むとは。そっとピアスを模した通信機に手を触れさせ、呼び掛ける。バリトンボイスと共に風の音が聞こえるから彼は所定の位置には着いたらしい。とん、とピアスにもう一度触れれば少年らしい高い声が返ってくる。そうして聞こえた声とほぼ同時にひょろりと背の高い、グレーのスーツに身を包んだ男が声をかけて来た。

「壁の花ですか、レディ。」
「…ええ、こういった場には慣れていなくて。」
「そうですか、では少しお話でも。」
「宜しいのですか?」
「勿論、美しい女性を放っておくことなんて出来ませんから。」

グレー混じりの髪を背後に撫で付けた男がウエイトレスを呼び止めシャンパンを受け取り、そうして差し出してくる。それを手に取り軽く掲げて一口含む。美味しくはない、コーヒーの方が好きだ。未成年だからと断ることは容易だが、これからの計画を楽に進める為にもその言葉は飲み込む。コーヒーは帰ったら好きなだけ飲めばいい。


「失礼、名乗りもせずに。ヴァイアット・マークレイと申します。」
「ルナとお呼びください。」
「私のことは是非、ヴァイアットと。」
「ええ、ヴァイアット様。…実は貴方の研究論文を読みまして、どうしても貴方と言葉を交わしたくて友人に頼み込んでこの場に参加させていただきました。」
「そうでしたか、私のような人間の論文など…年若き女性にはつまらないでしょう?」
「そんなことはありません、研究に年齢や性別は関係ないと思いますの。元は孤児の身故に学はありませんが…少しの可能性から切磋琢磨し一つの結論を出すことに直向きな方は憧れてしまうでしょう?」
「人は皆育ちも含めて平等ではありません、ですが自身の境遇からそのように至るなんて…余程私の方が頭が下がりますな。」

くすくすと笑いながら言葉の往復を繰り返す。悟られないように気を配りつつ会場内から目立つ背の高い二つの金髪を探せばアッサリと視界に入る。こちらも問題なさそうだな。そうして視線を外した一瞬の間に男が私の体を上から下へと品定めするのが分かる。金取るぞ、ジジイ。……余り長引かせても面倒だし頃合いみたいだし、そろそろ仕掛けるか。


「レディ?顔色が余り…。」
「申し訳ありません、実はアルコールに慣れてませんの。少し酔い覚ましに外に出て参ります。短い時間でしたがお話出来て光栄でした、Mr.ヴァイアット。」
「…主催は友人でしてね。幾つか部屋を用意してくれています、どうぞそちらをお使いください。……エスコートさせて頂いても?」
「まあ…では、お願い致します。」

差し出された手を取る。そうしてよろけたフリをしてヒールを三度鳴らせば目が覚めるような金髪が遠くで揺れるのを確認し、ピアスからも二つ、三度指を叩く音が返ってくる。全員の準備は完了。上手く父の求める結果を持ち帰らなくては。


エスコートされた部屋に入ってすぐ、壁へと押し付けられてそのまま唇が重なりそうになったのでやんわりと手で止める。目の前の男が不機嫌そうに眉根を寄せるのに笑みで返しドレスに手を掛ければ一気にその目が薄汚い欲に濡れる。そうしてドレスを脱ぐ…直前に足払いをして男を地面に叩き付けナイフを首筋に当てる。

「ッ、は!?」
「薬はどこ?」
「なにを、」
「あら、アンタの書いた本読んだって言ったじゃない。違法薬物による改造人間への可能性だっけ?その実験の為のパーティーだってことくらいは分かってんのよ。いいから出しなさい、結果も知らずに死にたくはないでしょ。」
「っは、はは!私は持っていないし、今更見つけたところで意味などない!もう手遅れだからなぁ!」
「そう……じゃあ、読みは合ってたのね。」
「は…?」
「ヴェムス、予定通りよ。解読よろしく。」

ピアスから使い慣れたインカムに切り替えて声を掛ければヨハンが捻りも面白みもない、なんて愚痴を零しながらもその声とは別にパソコンを叩く音が聞こえた。薄皮を裂いて溢れる血液の赤とは別に男の顔が真っ青に染まる。

「まさか、」
「ソーレとサトゥールノも計画通りに。…ええ、多少は構わないけれど今はなるべく避けて。ネットゥーノは二人のサポートをお願い。……全てはセンソ レッテロの望みのままに。」

ちらりと下を見れば怒りと恐怖をない混ぜにしたような表情の男、なんだか叫びながら勢いだけで反撃なのか私の首へと手を伸ばして来たのでひらりと避けてみせる。そんなことを繰り返して壁に頭を打ちつけたりする男に溜息を零すしかない。さっさと殺してしまいたいけれど、色々聞き出す為にも生きて連れて帰らなくてはいけない。なるべく傷を付けずに持ち帰りたいんだよなぁ、仕方ない。がむしゃらに突進して来た男の肩を掴み向こうの勢いに合わせて鳩尾に膝を打ち込むとそのまま膝から崩れたのでナイフの柄でこめかみを殴り昏倒したのを確認してから適当に拘束し、外で待機させていた部下を呼んで持って帰ってもらう。さて、本題に入りますか。ぱっぱっと埃を払ってドレスに傷がない事を確かめてからヨハンの指示通りに動く。



「メーセ、解けたぞ。」
「ヴェムスったら仕事が早いこと。」
「早く行け、脳筋たちが暴れ回ってる間に回収しろ。」
「了解。」

会場の方で大暴れしてくれている二人を止めようと、もしくは逃げる為にすっかり人が居なくなったキッチンへと入り込み、奥の部屋へと足を進める。奥の方にひっそりと置かれたワインセラーへと手を掛け開けば中にロックの掛かった部分を見つける。開くのに暗号化されてはいるが、うちの天才にかかれば特に問題もない。解けたという言葉通り何かをする必要もなく扉はアッサリと開き、目的の薬を手に入れた。現状詳しい情報はないが、これもうちの天才によって内容物や人間に与える作用なんかも分かるだろう。検分の為にも一足先にアジトへ運ぶ必要がある。持って来ていたアタッシュケースの中へと慎重に入れてそのままこれも別の部下へと渡す。薬も回収出来たのであとは暴れ馬たちを回収したら終わりかなー、なんて呑気に考えてたらインカム越しに聴き慣れた、低過ぎない声が鼓膜を揺らす。

「アオイ。」
「ボス…任務中ですよ。」
「ふふ、ごめんごめん。もう一つお願いがあってね、でもこれはまだ他の子たちに伝えてないんだ。アオイの判断も聞いておこうかなって。」
「わざわざ個人回線こっち使ってますしね。…それで?」
「うん、主催の人間がどうやらイムのことを嗅ぎ回ってるみたいなんだよね。」
「殺しますか?」
「彼以外は殺していいよ。」
「了解、こちらで他の者に指示を出します。」
「よろしくねぇ。」

間伸びした声が途切れると同時に届く回線へと切り替える。ヒールを鳴らしながら騒がしい会場へと戻り、扉を閉めて全員へと指示を出す。どうせ皆殺しならコードネームは不要だろう。

「計画変更、主催の男のみ殺さずに確保し持ち帰る。逃げられるのも面倒だからレイテッドは脚を狙って動きを止めておいて。コウはターゲットが身動きの取れない状況になったら回収、引き渡し後はいつも通りに。ポラリスはそのままで構わないから好きに暴れ回って…ついでにコウの邪魔をしそうな人間を止めてちょうだい。ヨハンはコウの通るB通路以外を閉じて、ターゲットを引き渡し次第完全封鎖。こちらから指示を出すまでネズミ一匹逃げないように。……後は全員殺して良いわ。」

声を掛けてすぐにパソコンのキーボードを叩く音がして、数秒後には窓ガラスが割れる音と同時にレイテッドが「完了、回収お願い。」と短く声を残す。コウから回収・引き渡しの連絡が来たので、扉という扉にロックがかかる。これで誰も逃げられない。会場内を見渡せば結構な死屍累々具合…ポラリスがめちゃくちゃイキイキしてるから余程さっきのお嬢様モードが嫌だったのだと窺えた。とりあえず先程薬を手渡すと同時に部下に届けさせた二人の武器を投げて渡せば、いつもの笑顔を浮かべて受け取る。

「これで問題ない?」
「ありがとう!やっぱりコレがないと落ち着かないや。ジャケット脱いじゃおうかな。」
「アオイ、このスカート割いていいか?」
「着替えは用意してあるから各自動きやすい格好で構わないわ。レイテッドも引き続きサポート宜しく。」
「任せて。」
「早く終わらせよう、ボスが待ってる。」

私を抑え込もうとしたであろう背後にいた男から血飛沫が上がると同時にキン、とインカム越しに響いた薬莢が地面に落ちる音を聞いて、地面を蹴って随分と久し振りになった掃除の仕事に意識を集中させた。


「つっかれたぁ…。」
「お疲れ!アオイはハニートラップもあったから大変だったな!」
「ポラリスも淑女みたいだったよ。」
「アオイ、届いた薬の解析は?」
「なるべく早めにお願い、それとボスへの報告前に一回私に上げて。あと、他に生体反応がなければロックの解除をお願い。」
「こっちも撤収準備完了。」
「お疲れ、レイテッド。そっちで車を待機させてあるからそのまま乗っちゃって。報告は車の中で聞くわ。」

僅かに顔を濡らした返り血を適当に拭ってそのまま迎えの車に乗り込む。無駄に広い車の中でポラリスがドレスを脱ごうとしたのを必死に止めるコウをばんやり見ながら水を含む。ヒールを脱ぎ捨てドレスの下からスラックスを履くのがなんだか面白かった、どうやって上は着替えるつもりなのか。まあ、私が今確実に言えることがあるとすればレイテッドの意識が遥か彼方へ旅立とうとしているくらいなんだけど。半分白目の彼の隣に座って、反対側へとコウを座らせればわたわたと慌てふためいている。顔が煩い。

「コウとレイテッドが見てなきゃいいのよ。」
「痛い…!」

二人の顔面に掌を叩き付けるようにして目元を覆い隠す。片方には落ち着け、もう片方には戻って来いの一発である。その実視界を塞ぐことが目的ではない。ポラリスは誰に着替えを見られようと基本的には気にしないし…とはいえ妙齢の女性のストリップを放置するわけにもいかないからただのポーズでしかないが。彼女の美しさが際立つようにと用意された豪奢なドレスからいつもの見慣れたタンクトップ姿になるのを見届けてから両隣の男共の顔面を解放し、全員が落ち着いたところで各々から報告を貰う。

「薬莢の回収は問題ない?」
「39発撃って39発分回収してあるよ。」
「ポラリス、」
「ん?ああ、39回聞こえたぞ!」
「…アオイちゃんってなんでいつもポラリスに聞くの?」
「あー…レイテッドのことは信頼してるよ、何発撃ったのかちゃんと理解してるのも分かってる。だから一応というか、ダブルチェックみたいなもの。心配性なの。」
「そっかぁ、僕らにはない発想だね。」

一通りの報告を整理してノートパソコンに打ち込み、軽く纏めておく。まだ会場内での出来事のみなので、ヨハンからの報告が上がり次第それも含めてボスに提出しよう。未だに僅かに残るアルコールの不快さを水で流し込んでいるとポラリスがちょいちょいと私のドレスを引っ張る。

「アオイは着替えないのか?」
「あんだけ暴れ回ってたのに全然服に傷付いてないし返り血も被ってないね…凄いなぁ。僕、コレはもう着れないや。」
「あー…ボスが用意してくれた物だし一度見せてから着替えようかなと。」
「律儀だな!」
「そう?」


そんなくだらない話をしながら車に揺られていたらどうやらアジトに着いたらしい。何故だか車を降りる際にポラリスに手を出されエスコートされたのはなんでだろう…いや、恋人にエスコートされたかったとかではないし、人一倍荷物が多いから別段気にしないのだけど。まあ、私とポラリスじゃ男女くらい身長差があるしこの存在感の激しい乳がなければ男と間違えそうな服装ではある。私よりずっとずっと綺麗な顔をしているのに勿体ない…いや、これが彼女らしいんだけどさ。

「報告は私が行くから三人は各々自室に戻って平気よ、なにか伝え忘れがあったり問題があればすぐに連絡して。」
「おう!」
「はぁい。」
「了解。」
「それじゃあ、良い夜を。」


三人と別れたその足でボスの元へと向かう、一応お手洗いに寄って身なりのチェック入れたが。リップだけ塗り直して扉をノックし、返事を待って入室する。ボスはいつも通りニコニコと人当たりの良い笑顔を浮かべて私を迎えてくれた。

「おかえり、アオイ。」
「ただいま戻りました。」
「報告かな?」
「いえ、簡単なものしか纏まっていませんし…まだ押収した薬物についての報告は出来ませんから後程ヨハンと合流して分かり次第要点を絞り提出します。今回は無事怪我人も出ず帰還した旨を伝えに…あと、用意して頂いたドレスを見せに。」
「わぁ、嬉しいなぁ。そのドレス似合うと思ったんだ。久々にアオイに服を選んだけれどやっぱり娘にプレゼントってワクワクするね!」
「…ついでなのでボスと写真を撮ってイムにも送ろうかと。一緒に選んだのでしょう?」
「僕の娘ってば優秀なんだから。」

おいで、と促されるままに近寄り、二人で写真を撮る。映りを確認してからボスの端末に送信、これで目標は達成である。あとはこの写真を送って会えない時間を埋めるよう、存分にいちゃついて欲しい。勿論わたしの知らぬところで。

「では、一度着替えてヨハンと合流します。確保した二名は私の直属の部下に拷問を得意とする者がいますので、そちらに任せて吐かせます。」
「うん、アオイに任せるよ。僕だと殺しちゃうから。」
「了解しました、失礼します。」
「あ、アオイ。」
「はい?」
「レイテッドに可愛いって言って貰えた?」
「………怒りますよ。」
「ううん、相変わらずシャイだなぁ。折角彼色のネックレスも付けてたのにそっちもダメだったか。」
「ッ、もう!彼が気が付くわけないでしょう!」
「それはそれでどうなんだろう…?」

失礼します!と今度こそ部屋を出た。ドレスも髪も化粧もネックレスどころか、顔すら合わせてもらえてないっての。胸元や背中も結構開いているし、スリット入りのドレスを彼が直視出来るはずないというのに。…私はこういった物が好きなので着ていて楽しいけれど、レイテッドには刺激が強すぎるのである。父たちが私の好みに寄せてくれただけで十分嬉しい、これ以上は我儘である。アホなこと考えてないで仕事をしよう。


部屋に向かう道すがらに部下に拷問の旨を伝えてから自室でシャワーを浴びて服を着替え、鬱陶しいカラコンも外して眼帯を付ければいつも通りの私。さっさと身支度を整えてからヨハンの元へと訪ねアンネの淹れてくれたコーヒーを飲みながら薬物についての結果を纏めていく。薬物投与による改造人間、と言うだけあって肉体強壮剤や痛覚を鈍くするなどの効果は分かったのだが…ただそれだけではない。私とヨハンの見立てでは、理性はなくなり破壊衝動に駆られるであろうことも視野に入れている。つまり、強制的に筋肉増強し痛みも感じず衝動のまま破壊し続けるのではないだろうか、と。

「健康寿命を延ばすとか論文には書いてあったけど内容を見る限り人間兵器を作ろうとしてた、って感じか。」
「だね。あとは…流石に欠損部位を治すまでは無理でも血は止まりやすくしてるのかも。出血多量で廃棄になるのを防ぐ為かな。」
「…ここはアドレナリンの過剰投与か、アホらしい。」
「死を恐れない兵士、厄介そうだけど…、」
「だが、」

「不死じゃないのだから殺せばいい。」

揃った声にお互い笑う。一旦ヨハンの方で預かってくれるらしいのでヴァイアットが口を割り次第、情報を渡すという形で今夜は解散となった。私の直属の部下であり拷問担当のシウは信用している、今まで彼の手で情報を吐かなかった者はいない。アイツ、ボスは勿論のこと私を含めた幹部たちには凄く友好的で出来る男なんだけどソレ以外にはちょっと人格破綻者なので将来が心配である。心を寄せる相手が出来るのかという意味で。


「……居るかな。」

そんなことを考えていたら寝る前に一目会いたくなった。否、ボスに揶揄われていた辺りから会いたかったんだけど…腕時計を確認すれば2時を少し回った辺り。射撃場をチラ見して居なかったら大人しく部屋に戻ろうと決めて、自室へ向かう道のりからズレた。


「懐かしかったね、ああやって踊るの。」
「結構覚えているものだな!」
「あはは、体に染み付いてるのかもね。あのドレス凄く綺麗だった、ああいう濃い色はポラリスの髪と似合うね。」
「そうか?」

何故談話室でいちゃついてんだ?と思いながらもそうっと通り過ぎようとする。私は今レイテッドに会いたいのであってバカップルに絡まれたいわけではないのだ。そしてそのサラリとドレスを褒めてそれを何なく受け取れるのが凄いなと思う、素直に尊敬した。

「あれな、実は黒から紫にグラデーションになってたんだ!私も知らなかったが私はコウの色が似合うんだな!」
「ポラリス…!」

前言撤回、ただのバカップルだった。



射撃場を覗き込むと、彼は居た。相変わらず的には一つの穴しか…あれ、珍しい。いくつかズレてる。特に何をするでもなくボーッとしているようだったので背後から肩を軽く叩く、とレイテッドの肩がピョンと跳ねた。でもこれは私が怖いからではないともう理解しているので特に気にならない。条件反射だ、熱い物に触れたら耳朶触るのと一緒。隣に座ってもいいか聞いたら、背凭れに掛けていたジャケットを私が座る位置へと敷いてくれる。ハンカチなくてごめんね、と言う彼の言葉も相まりキュンとした、悔しい。

「寝ないの?」
「うーんと…此処に居たら、会えるかなって…。」
「ふふ、なにそれ。」
「……ええっと、そのぉ…ドレス、綺麗だった、ね。」
「ボスが選んでくれたの。」
「アクセサリーも?」
「ううん、アクセサリーは自分で…え?」
「だから、その…色、とか…。」

気付いてたのか、と目を瞬かせる。レイテッドは恥ずかしいのかなんなのか大きな掌で顔を覆ってしまった。なんなら私もちょっと恥ずかしい、でもそれ以上に気付いてくれたのが嬉しかった。

「変だった?」
「ううん、似合ってたよ。……今度、オレから贈ってもいい、かな。」
「……勿体無くて付けれないかも。」
「えぇ!?」
「ふふ、冗談。お守り代わりにいつでも身に付けるよ。」


とん、と彼の肩に寄り掛かる。火薬の匂いと混じって微かにシトラスの香りがした。この匂いが結構好きだなと思っているので我ながらどうなんだと思う。同時にコウとポラリスのことをバカップルと言えなくなりそうな雰囲気になっている自覚はある。でも、もう少しだけ。

「さっき仕事とはいえ、キモいジジイにキスされそうになったの。」
「え゛っ、」
「未遂よ?でも、……ね?」

くん、と彼のシャツを引く。察したらしいレイテッドが真っ白な肌を真っ赤に染め上げるのを見てから顎を上げて目を瞑る。少し震えた手が頬を包んで柔く唇が重なった。触れるだけのそれが心地好い、レイテッドにならどれだけ見られても触られても嫌じゃないんだなぁなんて改めて思いながらもう一度大きな体に凭れる。

「此処だと風邪引いちゃう、から…部屋、」
「んー?」
「……来る?」
「…うん、行く。」


立ち上がった私の肩にジャケットを掛けてから手を引いてくれるシャイで、でも少しずつ恋人扱いしてくれるようになった愛しい人。部屋に着いたら、思い切り抱き着いてやろうと心に決めて二回りは大きな手を握り返した。



ー おまけ ー


「うん、そう。アオイが僕らが選んだドレス着てくれて写真も一緒に撮ったんだ。やっぱりあの子には鮮やかな色が似合うよね、あの子はあまり関心がないみたいだけど僕はあの黒い髪も大好き。ああでも、この写真、仕方ないこととはいえ目がなぁ…僕はあの子の青い瞳も灰色の瞳も愛しているのに……そう、どっちも同じ色にしてたんだ。あの魅力が分からないなんて節穴だよ、イムもそう思うでしょ?…見てないからわかんない、って…それはそうだけどぉ……じゃあ、今度会う時にイムにも見せるから、」
「見に来たよ、ボクのハニー。」
「わぁ!いつの間に…!」
「可愛い恋人との可愛い娘の写真が見たくて来ちゃった。」
「もー!大好き!」

/ きなこ