ぬるい性描写あり
本当に心の底からごめんなさい



日課の筋トレが終わってストレッチの最中だった。男というのは何とも不思議なもので、疲れが溜まっていたりすると下半身が誤作動を起こす事がある。ゆるりと反応を示す下腹部を見てなんとなく居た堪れないような、誰に見られるわけでもないのに自己嫌悪のような感情が胸を占める。ちんこって気紛れだよな、とかふざけた事を言っていた友人の顔をなんとなく思い出した。何時もならシャワーを浴びて汗を流してる間になんとかなるけれど、何故か今日はそれを無視する気にならない。最近随分とばたついていたせいだろうか。そういえば恋人である彼女とも暫く会えていない。どうするか、と考えれば無意識に溜息を吐き出してしまう。30を超えて、何故こんな思春期みたいな事になっているんだろうか。いや、多感な時期であれば悩むなんてことはせずにティッシュに手を伸ばすのだろうけれど。ちらりと時計に目を移せば22時を少し回った頃。今から抜くだけ抜いて風呂を済ませても日付変わる前には眠れるだろう。

「……さっさと済ませちまおう。」


誰にするでもない言い訳を口にしそうになったがなんとかそれを飲み込んでボックスティッシュを手元に手繰り寄せる。そういや一人でするなんて久し振りだな。携帯を手に取り先日友人が悪ふざけに送ってきたLINEのURLに飛ぶ。実チャンに似てる子居た、なんて一言が添えられたっけか。動画を読み込んでいる間にイヤホンを耳に付けてからBluetoothの電源を入れる。ぶうん、と音がして接続が確認された所でふと、電気がついたままな事に気が付く。別に一人暮らしだし良いか?とも思うけれど自分の状況を客観的に見てからリモコンを操作した。驚くほどシュール過ぎた。なにしてんだオッサン、もう若くねえだろ。ちょっと萎えたけれど取り敢えず気を取り直す。生理現象なんだから、仕方ねえ。この歳で下着は汚したくないだけだ。結局口にしなかっただけで言い訳してんじゃねえか、なんて一人笑いそうになった。


部屋の暗さに目が慣れ、スポーツウェアをずるりと引き下ろした所で動画が始まった。ショートカットの栗色の髪が揺れてあどけない顔をした女の子が画面に映る。均一が取れた体に白い肌、くりっと丸い目は確かに彼女を思い出したが全体的に実ちゃんより小さい。身長とか胸とか。そんな事を考えながらぼんやりと画面を見てまだ幾分か柔らかい性器に触れた。ゆるゆると適当に上下に手を動かしていると画面の向こうで女優に手が伸びて、演技じみた愛撫と喘ぎ声が始まる。アンアンと喘ぐ女優は彼女とはやはり違うんだな、なんて思った。実ちゃんは喘ぎ声を出すのを嫌がる。否、嫌がるというよりかは恥ずかしがるが正しい。俺が触れると肩を揺らして白い肌をじわじわと染めるのに、唇や指を噛んで声を出すまいとするのだ。気持ちよくない?と聞けば、恥ずかしいのだと暗闇でも分かるほどに真っ赤に肌を染めて、その両手で顔を隠す。大きな丸い目いっぱいに涙を溜めて、俺を見る。その目が少しばかりの加虐心や余りある程の庇護欲を掻き立てる事を彼女はきっと知らない。だからあんな風に蕩けてしまいそうな、甘える子猫のような声で俺の名を呼ぶのだろう。


「…っ、」


ゆうさん、と息も絶え絶えに俺の名を呼ぶ彼女は助けを求めるみたいな顔をするのに彼女の体を暴く俺を受け入れてくれる。それを思い出しただけで右手に包まれた性器が一度跳ねた。息を細く吐き出してもう一度端末へと意識を向ければどうやらフェラシーンだったようで、女優が必死にモザイク処理されたソレに奉仕していた。態と音を立てて奥まで咥え込む様子を見ている筈なのに、頭を占めるのはやっぱり彼女の事で。小さな口で拙い愛撫をするその姿が何よりも掻き立てられるのが男心というもので、技術なんて案外どうでもいい。少女のような顔立ちをしてグロテスクなソレを咥えようと必死なのが堪らなく愛おしくて欲が刺激される。そんな事は知らないでいて欲しい、なんて酷く自分勝手な思考が頭を過る。汚している事に興奮する癖に、彼女に清いままでいて欲しいとは矛盾にも程があるな。


「うっせえな、コレ。」

彼女に少しばかり似ているその顔が快感に歪むのも、耳に直接響く嬌声と下品な水音も、やけに不快に感じて携帯とイヤホンを放り投げて目を閉じる。先端から溢れ始めた先走りを塗りこめるように広げて痛みのない力で握り込んで上下に扱く。チクショウ、あと一歩足らない。ごめんね実ちゃん、なんて絶対に言えもしない謝罪だけしておいて情事中の彼女を思い出す。長い足が崩れそうになるのを必死に耐える姿を見るのが案外好きで、挿入してから甘やかすように彼女のイイ所を押してやった時に堪え切れずに漏れる控えめな嬌声が好きで、俺が強請れば羞恥心を堪えて応えてくれる健気さが好きだ。やらしい事なんて全く知らなかったあの子が俺が少しばかり触れると期待で膝を擦り合わせてしまう事が愛おしくて、むちゃくちゃに愛してやりたくなってしまう。

ぐちゅ、と先走りが空気を含んだような音がして、射精感がじわじわと押し寄せると勝手に膝が震えて腰が跳ねる。ぐり、と先端を押し込むようにすれば息が詰まって性器の先端からどろりとしたソレが溢れて、慌ててティッシュへと手を伸ばした。何とかどこかに溢さずに済んだけれど自分の手がべったべたに汚れていて、それを見て一気に現実に引き戻される感覚。乱暴に白濁とした物を拭ってから下着とウェアを戻して手探りで電気をつける。パッと明るくなった所為で目の奥がずくん、と痛んだが何はともあれ手を洗いたい。キッチンまで行ってからしっかりと石鹸液で丁寧に手を洗い、放り投げた物の存在を思い出す。拾い上げて動画を止めて画面が傷付いていない事を確認してから閉じる為にもう一度見れば、まだ中盤くらいのようだった。もう用事もないしタブごと消してからイヤホンと一緒に机に置く。煙草に火をつけて吸い込み、ぼんやりとこれまた特有の感覚に浸る。


「なにしてんだ、俺…。」


そう、所謂賢者タイムとかいうアレだ。やってる最中は正常な思考回路とは言えないが終わってみれば一気に押し寄せてくるのが現実というやつで、彼女に対する罪悪感が頭を占める。ごめんな、本当…。深い溜息が出たところで携帯からポロン、とメッセージの受信を知らせる音がして大袈裟な程肩を揺らしてしまった。今実ちゃんから連絡が来たら埋まりたくなるぞ。恐る恐る画面を確認すれば悠臣からで、安堵の息を吐き煙草の灰を落としながらLINEを開く。

『この間URL送っといてなんだけど、恋人に似てる女優が出てるAVって自分の恋人が他の人とセックスしてるみたいで嫌じゃね?』

いや、タイムリーな話題やめろ。自己嫌悪で死にたくなってきた。まだ死ぬ訳にはいかないけど。…でもまあ、何となくその気持ちは理解できた。途中でやけに不快に感じたのはそれだったのかと腑に落ちる。これで喘ぎ声やら癖やらが同じだったら多分俺もダメだった気がするし。

スワイプしながら友人へと連絡を返してから煙草を揉み消す。とりあえず風呂入って来ないと。少し、というか物凄く罪悪感はあるももの何だか彼女の声を聞きたくなってしまった。風呂から出て、その時間に彼女が起きているかは分からないけれど一度だけ連絡してみよう。その時に、少しばかり甘えるような声音で名を呼ばれる事を期待してしまう。嗚呼、でもそんな声聞かされたら会いたくなってしまうからやっぱりダメかもしれない。矛盾した感情を抱えながらとりあえず風呂へと向かう背中に聞いた通知音はきっと悠臣だろう。



『ゆうさん、今日時間があれば少しだけ話せませんか?』
『少しだけでいいので、声が聞きたいです。』

なんて、いじらしいお願いを俺が見るのはあと20分後の事。


/ きなこ