可愛いのは君の方
※性的描写有り
ぬるめ、世界線謎
ぬるめ、世界線謎
頬に触れると真っ赤になった顔が困惑を浮かべたまま、私を見る。何が起きているのか分かってないんだろうなとは思うけれど一から説明するのも雰囲気が壊れそうなので可哀想だが気にしないでおく。
「だめ?」
「だめとか、じゃないけど、え?えぇ?」
「じゃあ、目瞑って。」
鼻先が触れるくらいまで顔を近付けると駿がキツく目を閉じた。睫毛が伏せられるのをこんなに近い距離で見たことがないから、新鮮だ。流石に私だけ見ているのも不公平だろうと同じように目を伏せて、唇を合わせる。薄いのに柔らかいのがなんか不思議で、何度か角度を変えて合わせていると駿の手が私の服を掴む。パニックだろうなぁとも、思うんだけど。服に皺が寄るくらいで、私の腕ごと掴まないからこうやって良いようにされるんだよな。相変わらず、自分の懐に入れた人間に対して警戒心がなさすぎるのは注意が必要かもしれない。
深くまで重ねるとそのままぶっ倒れそうだから、一旦離れることにする。そんなつもりはなかったけど、部屋が静かだったせいかリップ音が響いて、駿の肩が跳ねてた。可愛いと思ってしまったのは…不可抗力としたい。
「平気?」
「……平気。」
「なら良いけど。」
壁に背を預けた駿の膝に乗り上げたまま、頬を撫でる。目線があちこちに散らばって、そうして助けを求めるみたいな顔をして私を見るから笑いそうになってしまった。助けを求めるべき相手じゃないと思う。でもこの場には私たちしかいないし、私が止まれば良いだけなもんね。親指で駿の唇に触れて、形を確かめるみたいにして指の腹で撫でる。そうしたら私が付けていたリップが駿の唇に色を乗せているのに気が付いて、気恥ずかしいやら何やら。私が付けるとそんなに目立たない色だけど、駿の唇に乗ると結構目立つかも。
「……喜雨?」
「リップ付けちゃったなと。」
「いや、そうじゃなくて…。」
「うん?」
もごもごと口を噤む駿が何を言いたいのかも分かるんだけど、分からないフリをして首を傾げる。頬から手を離して両手を駿の首に回し、肘を曲げて距離を詰めると駿が慌てた声で私を呼ぶ。なんでだろう、駿って意地悪したくなる反応するんだよなぁ。
「もっかいする?」
「ち、がくて!」
「近いなんて今更じゃん。今でも空護と三人でくっついてるでしょ。」
「そうだけど…。」
「私が駿の膝に乗るのも、こうやって体をくっつけてるのも、初めてじゃないのに。」
「でも、キスとかしたことないじゃん。」
「そりゃ好きとも伝えてないし、許可も取ってないのにするわけないでしょうが。訴えられるわ。」
わざと駿の体に胸を押し付けて鼻先同士を合わせると、駿が限界だと言わんばかりに私の肩を掴んで押す。痛みを与えないようにだとは思うけど、そんな力じゃ抵抗にはならない。私はそれなりに体力も力もあるけれど男女差も体格差もあるし本気で抵抗すれば、無理矢理にでも距離を離すのなんて難しくないのに。肩に置いた手は殆ど添えられているだけで、気持ちばかり押してくるだけだ。
「嫌だって言えば良いのに。」
ぽつりと漏れた声に駿が大きく肩を弾ませた。それから怯えたみたいな顔をして私を見るから、結局笑ってしまう。別にここで駿が嫌だと言ったから友達をやめるだとか、空護や駿の兄に何か言うだとかをするつもりはないのに。これまでと変わらず"友達"でいるのだから、怯える必要もない。むしろそんな事で私がヒステリックを起こすと思われている方が心外なんだけど。
「さっきはまあ、ゴリ押しみたいなもんだったけど…本気で嫌ならしないよ。駿が嫌だって言うならスキンシップだって控えるし、二人きりも避ける。友達なことは変わらないんだからさ。」
「そうかも、しれないけど…、」
「あと、それじゃ抵抗っていう抵抗にならないよ。突き飛ばすなりなんなりしようね。」
「喜雨にそんな事出来ないよ。」
「その理論で行くとこのまま私に何されても泣き寝入りコースだな。」
ちゅ、と額に唇を押し付ける。一度したのだから構わないのかもしれないけど、本人にその気がないのなら二回目以降は虚しいだけだろう。これだけ柔い抵抗しか出来ないのだから、しようと思えば簡単。それでも、そこに駿の意思がないのならどれだけの回数を重ねても意味はない行為になる。
「ていうか、むね、あたってる、から…!」
「当ててるに決まってんでしょ。ていうか、駿もだし。」
「男だもん!仕方ないじゃん!」
「へえ?友達とキスして、胸が当たったらそうなるの?」
ゔ、と言葉を詰まらせた駿に案外期待できるのかもしれないななんて思う。首に回した手で襟足の毛を指を通して項を撫でると体が跳ねるからつい楽しくなってしまって困った。このまま流されてくれないかなって気持ちもちょっとだけ湧いてくる。後で虚しくなるだけって分かってる、でも、好きな男が自分の行動に対して大袈裟なくらい反応をしてるのを見ると抑えが効かない。
「だめとか嫌とか、そういうの言わなくて良いの?」
「……ボク、えっと、」
「ちゃんと言って。」
嫌ならしないよ、と続ければ駿が唇を噛む。そのまま私の肩を掴んでいた手が離されて、背中に回される。
「駿?」
「喜雨はいつも、なんかあったら空護に言うから、空護が好きなんだと思ってた。…ボクが辛い時は助けてくれるのに、喜雨は助けてって言わないから、だから、」
「……あー、うん、そこはごめん。なんかこう…好きな人には、そういうの…見せたくない、じゃん。」
「ボクは見せて欲しかったのに。」
腕の中にすっぽり埋まったのは私の方なのに、縋るのは駿みたい。甘えてるとも見えるみたいな姿に母性本能が疼く。これが母性本能かは知らないけども。項を撫でていた手を背中に滑らせて、お互いぎゅうぎゅうと身を寄せ合う。あったかい。物理的にも、心情的にも。告白すると言い出した私に元気良くゴーサインを出した親友はこうなる事を分かっていたのか、わからないけれど。首元に唇を掠めさせたけど、その体が跳ねることはなかった。
「すき?」
「……うん、好き。」
「ふふ、両思いだ。」
しあわせ、とその言葉が口に出ていたのかはわからないけれど駿の腕が強まったから漏れてたのかもしれない。膝に乗り上げるのは初めてじゃないけれど、こうして親友ではない立場でくっつくのは初めてだから浮かれてしまう。私以上に考え込んでしまいそうな駿に弱みを見せるにはまだ少し勇気が足りないけれど、こんな風に甘えるくらいなら、問題なく出来そうだ。というか、こういう分かりやすい甘え方はしてこなかっただけで、私は結構駿に甘えていたと思うけれど。何も言えなくても、それを咎めずに受け入れてくれていた駿は、十分私を甘やかしていたんだよ。本人は納得しないかもしれないけど。元々空護に言えるのは、なんかこう、シンプルな答えをくれるからだ。その場その場で思いついた事を言うし、なんとかなる精神の元、発言をするので深刻に考えずに済むというか。駿は当事者の気持ちを汲もうとするし、その問題の当事者より考え込んでしまうから避けていた。だって普通に、駿の心労増やしたくないし。二人とその他を天秤にかける必要はないくらい、二人が大事だし。
「喜雨、ごめん、あの…一回降りない?」
「重い?」
「や、重くはない…心配になるくらい軽いんだけど、その……色々、都合が悪いというか、」
「……うん?」
「ボクも男なんだってばぁ…。」
あ、と思うけど…離れ難い。別に膝の上に乗る必要はないのかもしれないけれど、どっちみちくっついてたら同じなんじゃないかとも。いや、男性の生理現象はよく分からないけれども。
「……離れたくない、んだけど。」
「ボクも離れたいわけじゃないけど…嫌でしょ?」
「嫌なら乗ってないって。」
「辛いんだよぉ…!」
まあ、足の付け根のあたりにね、違和感はあるけど。ジーンズ越しだし、細かいことは知らないけれど自分にない物が触ればその存在は分かりやすい。辛い…がなにかはなんとなく察しがつく。でも、恋人なわけだし。
「する?」
「お、んなのこが!何言ってるの!」
「性欲に個人差はあっても男女差はないでしょ。私は駿となら、したいけど。」
「〜っ!」
首が真っ赤に染まって、耳の近くで駿が唸ってる。そこもの凄くぞわぞわするからやめてほしい。向こうがその気になる前に私がその気になりそう。なんて考えてたら駿の手が私の腰を抱いて、脇腹に指先が触れる。
「っん、」
「お願いだから、そんな声、出さないで。」
「だって、駿が変なとこ触るから…。」
体の触れる位置が変わって、ちょっと良くない。さっきまで足の付け根辺りだったんだけど、丁度下着越しの位置になってしまった。告白する予定だし、とミニスカートで来てしまった自分を咎めたい。硬い生地だから駿は気が付いてないのかもしれないけれど。でも、これを言うのって恥ずかしくない?あ、自分で動けばいいのか。なんとか触れる場所を変えようと身動いだら駿の体が跳ねて、私の顔を見る。
「喜雨、その、……ごめん。」
「なに、…が?」
「そこで動かれると、ちょっと、」
「私もちょっとあの、そこは、困る…というか。」
「へ?」
駿が思わず、とばかりに視線を下へと向ける。スカートが隠して居るから見えないとは思うけど…でも、何かで察したらしい駿が声にならない声を上げた。ごめんって、私別に悪いことしてないけど。
「ごめんごめんごめん!!!」
「や、へーき。」
「ああああ……やっぱり降りよう?ね?」
「くっつきにくいじゃん。」
「う、腕枕するから!」
「私脚の間に何か挟んでないと落ち着かないんだけど。」
「初耳なんだけど!?なんでそんな分かりやすい嘘つくの!?」
くっつきたいから、としか言えないんだけども。駿的には少し落ち着くまで離れたいんだろうなとは分かっているが、別に手を出されたとしても棚ぼたみたいなもんだし。あわよくば既成事実…的な。性行為をしたとなればちょっとくらいは優先してもらえるかも程度の気持ちなんだけどね。空護とは比べないでいいけど。私も比べられないからそこら辺は良い。
自分にもダメージが来るのは分かってたけど軽く腰を揺らして擦り付ける。駿が引き攣った声を漏らして、動きを止める為に腰に回った手が下に向けて抑えつける。布越しとはいえ思い切り触れ合うから私まで変な声が出た。
「……喜雨、ほんと、ダメだから。」
「頑なだなぁ。」
「付き合ってすぐだよ、流石に…さっきまで友達だったのに。」
ふるふると首を振って、さっきまで言わなかったくせにダメって言う。付き合ってすぐかもしれないけど、知り合ってすぐよりかは全然良いと思うしなんなら私はこのまま流されてくれと思っているのに。窮屈な腕の中で身動いで、駿の耳元に口を寄せる。
「友達じゃしないこと、しよ?」
囁くようにこぼした言葉が終わる頃、私の視界は見下ろす駿と天井で埋まった。
手探りみたいに恐る恐る、私の体に触れる駿が可愛くてつい意地悪をしたくなったりもした。自分で触れるくせに、私が声を上げたら顔を見て怯えた犬みたいな顔をするのが可愛くて愛しくて。痛みを与えないようにと必死に力加減を探る指先が敏感な場所に触れると声が我慢出来ない。でも、その声が凄く情けないからあんまり聞かせたくて口元を覆ってしまう。
「ッ…ん、ぅ……ふ、」
「いたくない…?」
「きもち、いよ?」
濡れた指が陰核を撫でる度に腰が痺れるのにそんなことばかりを聞いてくる。上手いとか下手とか、お互い初めてだから分からないのに。それでもどこまでも優しく触れるから、今肌を重ねているのが駿なんだって思ってそれにもまた反応してしまう。立てた膝が笑いそうで、縋る場所が欲しい。でも大きな声が漏れるのは嫌だ。色んな感情で頭がぐちゃぐちゃになりそう。
「指、入れるね、」
「ん…っ、ぁ…ひぅ、」
「すご、」
何がとは聞かないし聞きたくない。でも想像出来てしまう。だって濡れてるの、自分が一番分かってる。駿の細くて長い、綺麗な指を汚してるみたいで罪悪感。なんにも知らない、綺麗な子で居て欲しいと思ってたのに。口元を覆う掌をズラして親指を噛み刺激を堪えるけど、不意に探る指先が敏感な場所を捉えたから思い切り歯を立ててしまったら駿が咎めるようにその手を取ってシーツへ沈められる。
「喜雨、噛んじゃダメだよ。」
「や、ってばぁ、…っ、ひ、ぁう、あ!」
「……大丈夫だから、」
その大丈夫は何に対しての大丈夫なのか。痛くしない、じゃなくて、声を出しても嫌いにならない、の方なんだろう。情けないから嫌なんだ。私はまだ、駿にとって頼れる人間で居たい。甘えるけど守られる側には、まだなれない。左右に首を振って嫌だと主張を続けるけど駿の指は止まってくれなくて、反応を示したからかそこばかりを指の腹で撫でる。粘着質な水音に空気の混じった音がして、恥ずかしくて死にそう。
「〜ゃ、やぁ、かけ、…っそこ、や、ッ、」
「でも、気持ち良さそうだよ?」
「あたま、変になっ、ちゃ、っから、」
ナカが気持ち良いなんて知らない。知らなかったのに。自分で触るのと人に触られるので違うのか、それとも相手が駿だからなのか。思考が纏まらない、ぐずぐずに溶けていく。指先が触れる度、押さえ込む手段を失った私の口から情けない声が漏れて恥ずかしいのに、駿は安心したみたいな顔をするからもうどうして良いのかわからない。指先でシーツを絡め取って握り締めていたら、駿の手が私の手首からずれて不恰好に手が繋がる。指がぐちゃぐちゃに挟まった、そんな繋ぎ方なのにそれが嬉しくて。
「かける、っや、ぁ、う〜っ、」
「声、聞かせて?」
「やって、いってる、のに、っひ、どぃ、ンぅ、ッあ、」
「ボクしか、聞いてない、から、」
そういう問題じゃないって言いたくても舌が上手く回らないし滲んだ視界じゃ駿がどんな顔をしてるのか、もうわからない。さっきまで見えてた筈なのに。もうわかんない、ぐずぐずに蕩けた頭じゃ目の前の駿の事しか考えられない。必死に繋いだ手を握り締めて耐えるけど、お腹の奥が熱くて堪らない。
「か、ける…っ!」
「……うん、」
ずる、とナカから指が抜ける。喪失感となんだかよく分からない感覚に腰を震わせて、のろのろと視線を向ければ駿が…真っ青なのか真っ赤なのかよくわからない顔をしていた。え、なに?なんで今のタイミングでその顔色?
「……ごめん、喜雨。その、できな、い…。」
「は?…ここまで、しておいて?」
「ちが、その……ない、から。」
「ないって、なにが?萎えたって事?」
「違うって!その、えと……あれが、」
「どれよ。」
「………ご、む…。」
思い切り眉間に寄せていた皺が一気に解けて、笑いが込み上げた。セックスの最中にこんなに笑うか?ってくらい、本当に笑ってしまった。駿が真っ赤になった顔のまま、咎めるような声で私の名前を呼ぶ。かわいい、ほんと。さっきまで男の人って感じだったのに、急に良く知った親友に戻ったみたいだ。笑いはまだ引きそうにないけれど、なんとか手持ち無沙汰になっていたベッドヘッドに手を伸ばして目当ての物を取り出す。赤いパッケージに白色の文字が大きく0.01mmと書いてあるソレ。そのまま駿に差し出すと微妙そうな顔をして、拗ねたみたいな声を出す。
「………なんで持ってるのさ。」
「空護にもらった。」
「それこそなんで!?」
「駿に告白するーって言ったら渡された?」
「えええええ…。」
まだ濡れた指でコンドームを受け取った駿はまだ不服そうな顔をしていたけれど、これで止まる理由もやめる理由もなくなった。絡んだ指先が解けるのが少し寂しいが一旦体を起こし、手元を凝視する駿の顎先に唇を押し付ける。
「付けられる?」
「やった事ない…。」
「ん、貸して。」
箱を開けたまま放心した駿の手から中身を取り出し、繋がったままのコンドームを一つ切り分ける。実践した事はないけれど大体の知識は付けてきたから、多分出来る、はず。パッケージを切った所でふと、駿の衣服が一つも乱れていない事に気がつく。じっと見つめてみるけど、視線の意味が通じていないのか気不味そうに目を逸らすから一旦コンドームを置いて指先で服を突く。
「脱いでくれないと、無理ですけど。」
「あっ、…ごめん。」
私に言わせた事になのか、自分が気が付かなかった事になのか分からないけれど頬を赤く染めて慌てた様子になんとも形容し難い気持ちになる。悪い事を教えてるみたいじゃないか。駿が手早く服を脱ぎ捨てるのをぼんやり見ていたけど、下着を脱ぐのは恥ずかしいらしく、目線を泳がせている。アンタ、人の下着はあっさり取り払ったくせに、…とは思うが、仕方ない事としてあげよう。手を伸ばして黒のボクサーパンツ越しに駿の性器に触れると大きく体が弾んで、私の手首が掴まれる。
「喜雨!?」
「や、だって脱がないと無理じゃん。」
「自分で脱ぐ、から…!」
ぶんぶんと首を左右に振られたので大人しく手を引く。指先に触れたソレは、こっちが恥ずかしくなるくらい反応を示していた。私触ってないのに、それでも興奮してくれたのかと思うと無意識に膝を擦り合わせてしまう。そんな私に気が付いているのかいないのか、駿は下着に指を掛けてそのままするりと落とされる。体格に見合う物なんだろうか、こういうの。あんまり見るといけないとは分かっているけど、これからコンドームを装着するわけなので…うん。ベッドに放り出したままのコンドームを手に取って薄いゴムの膜を取り出す。こっちが表、だったはず。
「付ける、よ?」
「やっぱボク自分で…っ、」
「いいから、」
私ばっかり恥ずかしいのは割に合わない。だから、腹に触れそうなくらい反り勃った性器に触れてゆっくり、コンドームで包んでいく。これやる側も相当恥ずかしいけど、でもなんか、こんな顔をしてる駿が見れたのだから、それでもいい。くるくるとコンドームを下ろしていくと駿が拳を握り込んでいたから止めた。
「出来たよ?」
「………すいません…。」
そんな死にそうな声を出さなくても良いのに。寝転んだ方が良いのかな、とそのままベッドに背を預けて両腕を伸ばす。名前を呼んだら大人しく身を寄せてくれたので細くて大きな体を抱き締める。細いけど、薄くはないんだよなぁ。骨太だからかな。好き勝手に鼻先や頬へと何度も口付けを繰り返していたら駿が小さく唸っていた。
「じゃあ、入れる、よ?」
「…ん、いいよ?」
本当は手を握って欲しかったけど、いっぱいいっぱいになってる駿にそれを言うのはなんだか良くない気がしたから首に回した腕を解いて、シーツを掴む。駿が寂しそうな顔をするけど、でもくっついてたらやりにくいでしょ?わかんないけどさ。
「こっち。」
拗ねたみたいな声音にすら胸がきゅっとするのに、シーツに皺を寄せていた手を絡め取られてまたあのチグハグな繋ぎ方。したかったのバレてたのかなって頭を過ったけどそうでもなさそう?繋いだ手にはちょっとだけ体重が掛かっているのか、逃げられそうにない。でもきっと痛いとかやだって言ったら押さえ込むような事はしないだろうから、本当に形だけの拘束。
安堵から体の力が抜けて、そのタイミングを見計らったみたいに宣言通り、先端が割り開く。押し広げられるとでも言えば良いのか経験のない痛みが下腹部の辺りを襲う。どうしたものかと思うくらい濡れてたし、指で広げた筈なのに。喘ぎ声なんだか呻き声なんだか、それが混じった声なのかはわからないけどそれが漏れて、繋いだ手を握り締める。
「ゔ、ぁ…っ、ン、ふぅ、」
「ごめ、力、抜いて…っ、」
「できな、っ、ア、…ッ、かけ、キスし、っ、て、」
「……喜雨、かわいい…、」
駿が身を屈めて唇が触れて、薄く口を開けば舌が潜り込んで来る。駿の体勢が変わったから奥まで入り込んで苦しいけど、色んな場所が触れ合って繋がっているのが嬉しくて気持ち良くて。繋いだ手を握り締めて、何度も舌を絡ませ合う。どっちのものかも分からない唾液が溢れて、全部飲み込んだつもりだったんだけれど、一筋分が私の口の端を伝う。唇が離れて、そのまま駿が腰を引いた。ぬるついた膣壁を擦るみたいに何度も往復して快感を生む。声は、抑えられない。
情けない顔してるから見ないで、って思うのに、余裕がない駿の顔を見てしまうとそれすらも言えない。お互いしか見えないみたいに何度も何度も体を割り開いて、キスをして。その度に握り込む手を咎めることなく、駿は熱の籠った息を吐き出していた。
「っも、イきそ、」
「ン、ッあ、かける、きて、」
「煽らないで…!」
どちらからともなく手を離して、そうして目の前の体を掻き抱く。汗ばんだ肌が触れるのが心地好い。揺さぶられるままに声が漏れて、お腹の奥が熱くて切ない。はやく、なんてのは、無意識に漏れた。
奥の奥まで駿が触れると一際強く抱き締められて、荒くなった息のまま肌を寄せ合う。おわった、のかな。頭がふわふわしていて分からないけれど、顔を上げた駿がすごい顔をしていたから多分そう。
「ごめん、ボクだけ…、」
「へ?や、だってそんなもんなんでしょ?」
「その喜雨の偏った知識はなんなの…。」
「女の猥談はえぐいんだよ。最初から気持ちいいとか、殆どないらしい。」
「ゔ……、」
「その、イけはしなかったけど、気持ち良かった、よ。何回かしたら多分、…だし。」
「そうなの?」
「ていうか、駿が触れてくれるってのが大事なんだからそんな細かい事は気にしなくていいの。」
恥ずかしくなって拗ねたみたいな顔をすると駿は目を丸くして何度も瞬かせ、そうしてふにゃふにゃと笑った。そっか、そうだよ、なんて言い合って、そうしてもう一度抱き締められる。真っ白な肌に唇を押し付けて甘く吸い上げれば目の前の体が大きく弾んだ。痛かったかな。
「次は、駿も付けてね。」
「………、喜雨。」
「なに、っ?」
がぶり、と首元に噛み付かれて私の情けない声が上がる。問い詰める間もなく、強く吸い付かれて首筋に鋭い痛みが走る。噛んだ上にキスマーク付けた…!
「おこ、った?」
「怒ってないよ、煽られたの。」
「っあ、ちょ、噛んじゃだめ…!」
何度も肌に立てられる犬歯に与えられるのが痛みだけならもっと抵抗出来たのに。さっきまでの情けない声がまた迫り上がって来る。いっぱいいっぱいになって半分泣きそうになっていると漸く解放され、駿が私の唇を奪う。
「もう煽っちゃダメだからね。」
「……はあい。」
中途半端に放置されていた性器が引き抜かれ、そうしてもう一度唇を合わせた。恋人になるまで男の子だと思っていたけど、ちゃんと男の人だったんだなぁなんて思いながら、広い背中に腕を回すと駿が小さく笑って甘く柔らかく私の名前を呼ぶ。それがどうしようもなく擽ったくて、返事が出来なかった。
/ きなこ