性描写有り、地雷がある人は見ない方が良い



「っ、…ぁ、」
「声出すなって、バレる。」


無茶言うな、と思うけどそれを言葉にしようとしたら必然的に媚びる声が部屋に響いてしまう。二つ隣の部屋では両親が眠っていて、否、眠っているかすら分からない。両手で口元を覆い隠し、呼吸音以外が出ないように必死に迫り上がってくる嬌声を飲み込んだ。その間にも英の掌が器用に下着のホックを外して膨らみが大きな掌に包まれる。後ろから抱きかかえて居る体勢のせいで耳元に直接声が吹き込まれてぞわりと背筋が粟立つ。性欲なんてありませんって顔をしている癖にどうして今日に限って盛り上がってしまうのか。あっちの家ならばこんなにも声を押し殺して息を詰めなくても良いのに。

「すぐ、る、」

ぴん、と主張する突起を指先が捉え先端を指の腹で転がされる。そのまま二本の指で摘まれ、指先同士を擦り合わせ乳を絞るみたいにして押しつぶされると喉が引き攣り堪らず爪先でシーツを蹴った。いつもと変わらない触り方の筈なのに、絶対に声を出してはいけないという緊張感からか、それとも興奮なのか過剰な程に快感を拾う。ふうふうと荒くなった呼吸は、きっと十分な酸素を確保出来ていないだけではない。か細く呼んだ名前だって聞こえてないフリをしてあの手この手で私に刺激を送る指先。器用な指が与えるのは暴力的なまでの快感なのだと、言ったことはないけれど。

「立ってる。」
「英が、弄るから、っあ、」
「どうだか。」

ひっそりと擦り合わせて快感を逃していたのに、両脚の隙間へと片膝が捩じ込まれる。自然と開いた脚に何かを言う前に太腿で服越しにぐいぐいと刺激され、思わず腰が反る。そうすれば自然と英の胸元に頭を押し付ける形になって、でもそれが咎められることはなかった。不規則に揺れる太腿に下着が擦れてはしたない音がしたのが分かって死にたくなる。こんなグズグズにしておいて、英に何かを言う権利なんてないだろう、私。鋭い程の刺激を感じる胸とは異なりいつまでも緩やかなままの半身。

「ぅ、ぅん、…っは、ぁ、」
「声、出すなって。」
「〜っ、」

子供を叱るみたいな声で言う癖に、耳殻へと歯を立てるからチグハグだ。自分じゃどうしようも出来なくて後ろを振り返って睨むけど私が睨んだところで英からすれば子猫が威嚇してるようなものだろう。分かってはいたけど指も足も決して動きは止まらない。腹の中が溶けそう、早く英のが欲しいと疼く。いつからこんなにいやらしい体になってしまったのか。滲んだ世界を目を閉じる事で泣いているという現実から逃避する。生理的なものだったとしてもあまり見られたくない。口元を覆う手を少し緩めて人差し指を噛み声を殺す、さっきよりはマシ、かも。


私の声がくぐもった事に気が付いたのか、英の片手がいやにゆっくりと肌を伝ってショートパンツ越しに触れる。濡れていることに気が付かれてしまっただろうか、どうせ直ぐにバレるとしても少しだけでもバレなければいいと思う。衣服を脱がすことなく手を下着の中へと滑り込ませた英の指先が酷く濡れた場所に触れた。

「ふっ、」
「ン、ン〜ッ、」
「怒んなって。ほら、ここ好きだろ。」

いつの間にか大きく開かされた脚に驚く前に陰核に指が触れて大袈裟な程に腰が跳ねる。潜り込ませた指先が私の零した愛液を掬い、陰核へと塗すみたいに塗りこまれて転がされる。悪戯みたいに何度も指の腹を押し付けては離され、押し潰しては指先が擦り上げる。未だに続く胸の突起への刺激ですら声を殺すのに必死なのに陰核にまで刺激を与えられて脳みそが機能しなくなる。こういうところで手先が器用な、両手で別の動きを出来るヤツは嫌なんだ。

「っ、ぁ……〜っ、」
「一回イっとくか。」
「ゃ、ッあ…やら、」
「遠慮すんなよ。」


よく濡らした指先が胸の突起にそうしたように私の陰核を摘んで擦りあげる。やだやだやだ、イきたくない、声が我慢出来ない、無理。

「こえ、出ちゃ…っ、」
「ん。」

胸を弄っていた手が顎を捉えたと思ったら無遠慮に持ち上げられ無理矢理上を向かされる。抵抗する間もなく食われるみたいに唇が覆われ、情けない私の嬌声は英の口へと吸い込まれていく。苦しいし、体は辛いのにどうしようもなく興奮してしまって、自制が出来ない体が陸に打ち上げられた魚みたいにビクビク跳ねる。気持ち良い、こんなの耐えられない。息が詰まって弾けるみたいな感覚があって、そうして脱力感に襲われる。口付けの息苦しさも相まって酸欠の頭が必死に酸素を取り込もうと胸を上下させていれば英の指がぴん、と陰核を弾く。過敏になった体にそんな刺激が与えられたものだから、喉が引き攣った音を出して堪らず英の舌を噛んだ。

「いってぇ。」
「ごめ、…っ、ン、〜ッ、」
「血出てる?」
「みえな、って、…っ」

べ、と舌を覗かせて来るが暗い部屋では見えないしそもそもそれ所ではない。ぐいっと首を伸ばして体を捻りながら英の舌へと舌を這わせる。なんとなく、鉄っぽい味がしないでもない…かも?分からないけれど、伸ばされた舌に奉仕するみたいに舌を這わせて吸い付くけど英はなすがまま。キスしてたいけど、この体勢辛い。一度唇を離して首元に擦り寄る。

「英、後ろからやだ、」
「なんで?」
「……キス、しにくい。」
「ふうん。」


足の間から膝を抜かれる。多分体勢に拘りがあったわけじゃないのかそのまま待ってるから反転させて胸元に擦り寄り、声が漏れるのを少しでも抑えようと思う。いや、こんな場所で盛るなって話なんだけどさ。距離が近くなったおかげで英の匂いに包まれる形になり、お酒の入った英の体がいつもより温かくて頭がぼんやりしてくる。足の甲を英の脹脛に擦り寄せて鎖骨の辺りへ口付けると片手が腰を撫で、その動きにすら体が細かく震えた。

ベッドじゃなくて良かった、二人で潜り込んだって軋む音がしない。跡を残さないように注意を払いながら何度も肌に唇を押し付けていると手持ち無沙汰な英の片手が内腿を撫でる。擽ったい筈の動きなのにどうにも上手く処理出来ず、兄の手に体を押し付けて強請ったらそのまま指がまた下着の中へと潜り込んで来るから触れやすいようにと足を開く。


くちゅ、と静かな部屋に水音が響くと込み上げる羞恥心を悟られたくなくて目の前の厚い胸板に顔を沈める。溢れ出た愛液を纏った指先がゆっくりとナカに埋め込まれて、漏れ出そうになる声を誤魔化すように細く息を吐き出す。根元まで押し込まれた指が馴染むのを待ち、そうして探るみたいに動く。最初は指一本ですら苦しいと感じていた筈なのに、今はもうその指が齎す快感を求めるばかり。そこまで回数を重ねた筈じゃないのに、それが気持ち良い事だとしっかりと体が覚えてしまっている。くの字に曲がってざらついた肉壁を撫でられるともうダメだ、何も考えられない。

「ン、…ッも、いいか、ら、っ、」
「そ?」

引き抜きながらも良いとこを撫でるのは何故なのか。我慢出来なくなるって伝わってないのか?震えた体に英が何かを言うこともなく、ただいつもと同じ顔で枕元を漁る。コンドームを探してるんだと思う、けど。英の意識が完全に私から外れたのがなんだか気に食わなくて飛び出た喉仏を甘く食む。苦しかったり痛かったりしないように気を付けながら片手で英のスウェットの上から性器を撫でた。勃っているか不安だったけど、一応大丈夫そう。

「なに、どしたの。」
「暇だから。…舐める?」
「や、そのまま適当に触ってて。」
「……下手で悪かったな。」

確かにフェラはイマイチ上達しない自覚がある、あるけども。そんなに即答しなくても良いじゃんか。やっぱAVとか見て練習するべき?でもあれ、フィクションだからなんの参考にもならないしなぁ。自分の指とかで練習したらいいのか。というか、英がいつもさせないから上達しないのでは?やっぱ無理矢理にでもさせてもらおう。今日じゃないけど。下着の中へと潜り込ませて握り込んだ手を上下に擦りながら先端の方を指の腹でくるくると撫でる。少しばかり性器が跳ねて、なんだか嬉しい。

「お前は下手なままでいーよ。」
「なにそれ。」

不服そうな声が出たけど英はそれ以上何も言わない。そんな話をしている間にコンドームを発見したのか、やんわりと手を離させられて気怠げに下着とスウェットを引き下ろして巻き下ろすのを何となく見ていると英の手が私のショートパンツに触れる。腰を浮かせると下着と纏めて脱がされて、そのまま布団から放り投げられた。英が私の片膝に触れるが、そのまま動きが止まる。

「英?」
「この体勢入れにくい。」
「ッあ、ちょ、」
「声でけぇって、バレてぇの?」
「〜ッ、…ばかぁ、」

ぐるん、とまたひっくり返されて背中を向ける形になるが腰を掴んだ手が引き寄せて来て、寝転んだままなのに腰を突き出すみたいな体勢になって抗議しようとしたけど口元を覆われる。腰にあった手が滑って肌を撫でられ期待から入り口の辺りがひくつくのがわかり、心臓がバクバクと鳴る。そのまま押し当てられた丸い先端が肉壁を割り開くようにゆっくりと押し込まれ、まだ狭かったのか少し苦しい。頭の上で英が息を詰める声が聞こえて、それに反応した体が浅ましく彼を締め付けてナカへと誘う。せまい、と小さく漏らした声がなんだか、やらしい。臀部に触れた下生えに全部納まったのが感覚で分かる。

「ぁ、っあ、〜っ、」
「キツい、力抜け。」
「むちゃ、言うな、ぁ、」
「ん。」

奥を刺激することにしたのか最奥まで押し込まれて捏ねられると頭がバカになりそう。繋がったまま緩やかとは言えない刺激を与えられていると無駄に篭った力が抜け始めたみたいで、動きが変わる。入ろうとする動きは少し苦しくて、抜かれる時はぞわぞわする。それでも動きが早まればどっちが気持ちいいだとかもなくなっていく。少しずつ激しくなる律動、でもそれは私をイかせる為の動きで、私だって英に気持ち良いと思って欲しいのに。

「っす、ぐる、も…ぁ、ンン、ッふ、」
「ん?」
「すぐぅ、…も、きもち、い?」
「気持ち良いよ。」

大丈夫、とでも言うみたいに優しい声。感情表現が乏しい理由を私は知らないけれど、それでも私にはいつだって優しくしてくれていた兄。ごめん、妹で居られなくてごめんね。愛されたいと思ってごめん、手放せなくてごめん。いつかの約束が頭を過ぎって、唇を強く噛んで込み上げる涙を誤魔化す。あの日がなければきっとこうはなっていないから、…キスもセックスも、本当は私以外の人がするべきなのにね。

「も…っイ、きそ、」
「いーよ、イきな。」

私が一番気持ち良いように動く英の、力の緩んだ手を取って再度自らの口元へと導くと意図を悟った英の手が私の口元を覆い隠して、私の髪へと顔を埋める。激しくなった抽挿に耐えられなくなって、堪えきれない嬌声を英の掌の吸わせた。馬鹿になったみたいに体が震えて、英の性器をキツく締め付けて達する。英が息を詰めるのを首元で感じながら酸素を求めて胸で呼吸をしていると、収縮を繰り返す肉壁をものともせずにまた敏感な部分を擦り上げられた。絶頂したばかりの体には辛いけれど、でもそうして欲しかったから意識してナカを締め付ける。

「っは、…ぁ、」
「英、も…っ、」
「すぐだからもうちょい付き合って。」

痙攣するナカを擦り上げて動揺する肉壁の動きを楽しんでるみたいに、でももう終わらせるつもりみたい。唇に触れる掌に手を重ねて、強く押し付ける。呼吸がしにくい、でも、これくらいしておかないと。何かを急ぐみたいに何度か私を揺さぶって、そうして薄いラテックス越しに吐き出された。その時の刺激で軽くイってしまったのは、なんかもう、よく分からない。


「抜くから、もうちょい我慢してろ。」
「…ん、」

惜しむ訳でもなく、寧ろ時間をかける方が良くないと思ったのかアッサリと胎を埋めていた熱がなくなる。ぽっかりと穴が空いたみたいな虚無感、この感情を上手く言葉に出来ないけれど。英がなにかしてるのを見ながら、仰向けに寝転ぶ。下着を変えなくちゃとか、汗をかいたから着替えもしなきゃとか、思うけれど体が動かない。そもそも、私は自分の部屋へと帰らなくては。起こしに来た両親がこんな所を見たら卒倒してしまう。

「部屋戻るの、面倒くさい。」
「怖い夢でも見た事にすれば?」
「私は何歳児だ。」


この部屋で眠ることは別に、良いんだけど。なんとでも言い訳出来るし。でも流石に着替えやらは済ませなきゃ。気怠い体を動かして英の方を見れば、いつもの顔をして煙草に火をつけている。紫煙が漂うのをぼんやり見ながら片手を伸ばすと数秒の間を置いて手が重なった。人を殴ったり、ギターを弾いたり、機械を弾くその手。そんな手は昔から私に触れることに戸惑っていた記憶がある。あんなに優しく触れるのに、何をそんなに惑うことがあるのだろう。兄が私に酷くしたのは、後にも先にもあの日だけなのに。

「英、あのさ、」
「ん?」
「……なんでもない。」

いつか、兄以外になって欲しいだなんて、そんな事を言う勇気はない。この関係は兄に好きな人が出来るか、私が兄への恋心を殺すまでは続くだろう。それが何時になるかは分からないけれど、死がふたりを分かつまで、とはならない。


「シンイチローくんにも声掛けてみよっかな。」
「なんか用あんの?」
「英以外の人とも寝てみるべきかなって。」
「…止めとけば。」
「じゃあ英がこの人なら妹を嫁に出してもいいって人紹介してよ。」
「無理、周りにろくな男居ない。」

煙草を灰皿に押し付けて揉み消し、そのまま寝転ぶ英の胸元に俯せの形で乗り上げてじっと下から見上げる。この角度から見ても整ったツラしてんのムカつくな…女の敵め。つん、と指先で胸板を突くと視線が合う。


「このままじゃ、英が私のこと一生面倒見ることになっちゃうよ?」
「いーよ、妹の一人くらい面倒見てやる。」
「はは、面倒くさくなったでしょ。」

本当に面倒見ることくらいしそうだな…真一郎くんは良い手だと思ったけど英がダメと言うならやめとこう。ずっと二人で居よう、って言えたら良いのに。まあ、言ったところで英は私の事をそんな目で見てないから無理だけど。せめて飽きられたくないなぁ、やっぱフェラの練習はしておこう。胸板に鼻先を埋めて擦り寄ると英の手が後頭部に回って緩く撫でられる。……優しい手、こんな時ばかりは妹で良かった、なーんて思う。だって、今までの行きずりの相手の頭を撫でるだなんて、しなかったでしょ?

「おやすみ、英。」
「…おやすみ。」



この歪んだ恋の行方は何処だろう、地獄だろうか。せめて地獄行きになるのは私だけが良いな。目を閉じて、英の心音にだけ意識を向けた。

明け方まで後数時間、今だけは、私だけの英で居てね。


/ きなこ