懐かしむ
分厚いアルバムの写真を眺める。整頓された写真に這わせた指はとても白かった。少女は背中から零れた絹のような綺麗な黒髪を優しく耳に掛けると再び新しい写真に指を這わせた。ほんのりと僅かに淡く色付いた形の良い唇はゆるりと弧を描く。
「随分と懐かしい物を見てるね」
少女の背後に音も無く現れた少年の容姿は目が眩む程の美しさで。少年もまた大理石のような白い肌をしており、くしゃくしゃの赤銅色の髪は窓から漏れる光に当てられ、キラキラと輝いていた。
少女は背後に現れた少年に驚く事なく、その頬を無邪気に緩め、まるで太陽のように笑う。
「本当、凡人にしか見えないよ」
少女は白くしなやかな細い指を遊ばせるように1つの写真にあわせ、可笑しそうに笑う。少年はそんな少女を背後から優しく抱き締めた。
「君は今も昔も変わらず、ずっと綺麗だ」
「…本当、エドワードのその口も中々変わらないね」
今ではもう見られなくなった赤みの差す頬。だが少年、エドワードには少女が照れている事など既にお見通しだった。そんな愛らしい様子にエドワードはクスリと天使の如く微笑むと、彼女の目尻にそっと唇を落とす。
「君は僕の全てだ」
「あたしも、」
寄せ合った唇はカチリと、まるで固い物が当たったかのような軽い音を出す。少しだけ離れた距離に少女は照れるように笑った。
「ママー!」
「うわ!」
小さな愛らしい天使のような子供が少女の足元に体当たりの如くぶつかる。エドワードはその小さな体が反動で吹き飛んでしまう前に瞬時に腕を回して、そして片手で容易に抱き上げると少女の膝の上へとゆっくり下ろした。少女は嬉しそうに微笑みながら手にしていたアルバムを少しだけ遠ざけ、子供が座れる程のスペースを作った。
「ママー!」
「ごめんね、痛かった?」
「いたくなかったよ!ママは?」
「痛くなかったよ」
幸せそうに互いの額を擦りあう親子にエドワードは笑みを溢すと、今度はその家族を包み込むように抱き締めた。
「酷いな、僕だけ仲間外れなんて」
「パパもいっしょ!」
子供はニコニコと笑顔を浮かべエドワードの額に自分の額をコツリとあてると、また嬉しそうに笑う。少女は手にあるアルバムの、開いたページに貼られた1つの写真を愛しそうに撫でた。
「確かにあの時も幸せだったけど、今の方がもっと幸せだね」
はにかんだ少女に子供とエドワードは笑みを浮かべる。開いたままのアルバムを近くのテーブルに置いた少女は二人と共に太陽の光がキラキラと注ぐ外へと飛び立っていった。3人の姿は美しく、まるで幾億にも嵌められた水晶のように光を反射し、輝いている。
風が優しく吹き、アルバムのページを少しだけ揺らした。そのページに飾られた写真は、笑顔を浮かべる頬に赤みをさしたナナシと、幸福に顔を綻ばせるエドワードの幸せな場面だった。