3 . 朧げになりゆく睦言
その日は珍しく目覚ましの音を聞く前に目が覚めた。窓のカーテンの隙間から差し込む光の筋に、部屋の小さな埃が細かく踊っているのが見える。寝る前に確認して置いていたアラームを手にとって、少しだけ驚きつつもスイッチをオフにした。こんなに早く起きていたとは思わなかった。これがお休みの日の朝ならもう一眠りしたいところだけれど、あいにく今日は平日だ。このまま二度寝をしてしまわずに、たまにはゆっくり朝ごはんを食べるのもいいかもしれない。それに、もう一度寝てしまおうと思わない…いや、思えないのは……早くに目が覚めたものの清々しい気分になることができないからだ。
おかしな夢を、見た気がする。
褐色の肌に、肩幅の広いがっしりとした体格の男がいた。時間が経つにつれてだんだんとあやふやになっていってしまう夢の内容は、もうほとんど覚えていない。ただ、なんとなく。その男がハキハキとした口調で、だけど穏やかな印象を覚える声色で話していたことは今だにうっすらと残っている。
占いのようだったと思う。…たぶん。いろんな質問をされて、悩む暇もなくそれに答えていたら、最後に何か…こう…とんでもないものを見せられたような…。もやもやと鮮明に思い出すことのできない記憶に歯がゆさを感じつつ、ぎゅううとしかめ面をするなまえは、次に起こす己の行動を大いに褒め称えることとなる。
「やあ。目が覚めたんだね。おはよう」
仰天だ。聞こえるはずの無い、どこの誰かもわからない人の声が部屋に響いた。驚きすぎて全く声が出なかった。一瞬の間をおいて、遅れてやってきた動機が激しく音を鳴らす。