先輩なんて
私は今、先輩の加藤シゲアキに勉強を教えて貰っているところで
『あ、さっきのできた?』
なんてノートを覗き込んでくる
横顔を見つめていたのに、妨害されてしまい、頬をプクッと膨らます。
「……うん」
ずっとずっと
ずーーーっと片思いをしているのに
ちっとも気付いてくれないこの鈍感男を睨んでいると
『なんだよ、顔になんかついてる?』
自分で頬を撫でた。
"何もついてないじゃん"
なんてつぶやいて。
「何もついてないやい」
はぁ、なんでこんなにかっこいいんだよ…
なんて言葉は飲み込んで、
「ねぇシゲ、ここも教えて」
可愛くないな、って自分でもつくづく思う。
わかっているんだ、そんなことは。
私だって一応、頑張っているつもりだ。
シゲと会う前の日にはきちんと髪の毛をトリートメントで潤して、ツヤツヤにするし。
肌のお手入れだって。パックもして数種類の化粧品を塗りたくる。
でもこんな生意気な後輩、好きになってくれる日なんて、本当にくるのかな……なんて、夜にはネガティブな考えが私の頭の中を支配する。
『ここは……そうそう、このページの公式使ってやるんだよ』
ノートを指でとんとん叩く。
こんなに優しくされたら、そんな考えなんかどうでもよくなっちゃって
この人に会えたら私はそれだけで幸せだし
付き合うなんて……そんな…釣り合わない、し
はぁ、とため息が漏れる。
『…なに?』
「シゲここは」
『これは問2で出た答えを代入して……こう』
だってこんなに頭いいんだもん、
……まあ私も、分かっておきながら分からないふりをして、彼に勉強を教えて貰っているんだけど。
「…ねぇシゲこれ答えは」
はぁ、と今度は彼がため息をついたかと思うと
『さっきから呼び捨てすんな先輩だろ』
なんて呆れ顔をされた。
だって、だって……
「私シゲのこと先輩だなんて思ったことないもん」
先輩と後輩という関係への、小さな反抗。
ちょっと早く生まれただけじゃん、私の好きな人が。
加藤シゲアキ、あなたが。
彼を見つめると、ふい と目をそらし
『…俺だって後輩だと思ったことないし』
なんて、消えそうな声。
「……え?それどういう意味?私が大人っぽいってこと?」
目を細めて唇をとがらせる。
"そんなんじゃねえよ"って表情から伝わってきた。
そして
『問題です!』
人差し指を立てた。
「てーれんっ」
『俺はどうして〇〇のことを後輩だと思ったことがないのでしょう』
…なんだこれ と思いつつも、前のめりになって
彼の問題に必死に取り組もうとする。
立てていた人差し指を私の前に持ってきて
『選択肢1
……〇〇のことが好きだから。』
「えっ?!」
びっくりして、思わず口から驚きの言葉が漏れてしまう。
彼は声を出さずに、子供みたいに笑った。
「……すみません」
そしてピースサインをして
『選択肢2
〇〇を女の子としてみているから。』
「……ふふっ」
『選択肢3
…俺の事を……』
「…ん?」
真っ直ぐ見つめられ、心臓が跳ねる
手が私の方へ伸びてきて
『好きになって、欲しいから。』
彼の手が、私の頬を、包み込む。
『……さぁ、どーれだ』
ほんのり赤く染まった頬が、
私の体温をも上げてゆく。
「そ、れって……」
『……正解は、全部でした。』
私から目をそらし、ぽつりと出たその言葉に、驚きが隠せなくて
「シゲ……」
『俺、お前のこと好きなんだよね』
照れた笑顔に見つめられ、涙が溢れそう。
「私もずっと好きだよ、バカ…」
やっとやっと口に出来たその言葉に、涙が溢れるのは不思議じゃない。
『バカじゃねえ年上だっつってんだろ』
彼の照れ隠しのような攻撃でさえも、可愛くて、愛おしい。
「仕方ないから付き合ってあげてもいいよ」
精いっぱいの、笑顔を浮かべると
ふは、なんて笑って
『可愛くねぇな〜』
って呟いた口が近付いてきて
優しく、ふたりの体温が重なる
『……うわ、真っ赤じゃん。かわい』
なんて言ってる彼の方だって、本当は真っ赤。
「う、うるさい」
『これからよろしくな、俺の彼女』
可愛く、微笑んで
ぐしゃっと頭を撫でてくれた。
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